通販の薬機法違反、売却リスクは?価格・DD・表明保証の実務

通販の薬機法違反、売却リスクは?価格・DD・表明保証の実務

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公開日:2026年5月24日
最終更新日:2026年8月16日

通販事業の薬機法違反は、売却不能を意味するとは限りません。違反の範囲と継続性を把握し、証拠保全、是正、開示、契約交渉を順序立てて進めることが重要です。

1. 通販事業を売却する際の薬機法違反リスク

薬機法違反は、売却の可否だけでなく、評価額、交渉期間、契約後の責任に影響します。買主は広告収益の持続性と、将来発生する課徴金・返金・広告修正費を同時に確認します。

虚偽・誇大広告では、違反対象商品の売上に対して原則4.5%の課徴金が発生する可能性があります。売上1億円なら450万円相当で、利益率が低い通販事業ほど影響は大きくなります。

  • 軽微な指導:修正可能な表示不備で、価格調整は限定的になりやすい

  • 継続的な違反:広告停止や減額、補償要求につながりやすい

  • 行政処分:取引延期、業務停止リスク、交渉決裂の要因になる

  • 無許可販売:事業継続性そのものが否定される可能性がある

【文脈】通販事業の薬機法リスクを 1-1. 軽微な広告不備が通販売却価格へ及ぼす影響

商品ページの一部表現や審査記録の不足は、速やかに修正できれば売却を妨げにくい類型です。ただし買主は、監査費用、クリエイティブ再制作費、広告効率低下による減収を見積もり、価格から差し引くことがあります。

修正前後の素材、掲載期間、承認者を整理できれば、単なる不備として説明しやすくなります。反対に、同じ表現を長期間放置していた場合は、管理体制の弱さとして評価されます。

1-2. 継続違反と行政処分で変わる買主の評価

同一の誇大広告を複数媒体で継続し、指導後も掲載していた場合、買主は偶発的なミスではなく組織的なリスクと判断します。行政照会や課徴金の可能性があれば、取引停止や価格減額が検討されます。

買主は、過去売上だけでなく、違反広告を止めた後の売上と利益も確認します。表現修正でCPAが上昇し、利益が減る見込みなら、将来収益の再計算と補償条項の追加が必要です。

1-3. 無許可販売や転売が売却を止める判断材料

医薬品や一定の医療機器を許可なく販売する行為は、広告不備より重く扱われます。医薬品販売業の許可が必要な取引や、無許可の輸入・転売が含まれる場合、3年以下の懲役または300万円以下の罰金の対象となる可能性があります。

一度だけの資産処分と、反復継続する販売事業では判断が異なります。しかし、許可の要否を自己判断せず、商品区分、販売形態、在庫の流れを確認する必要があります。

1-4. 薬機法違反後に残る表明保証と損害賠償責任

売却契約では、法令違反、行政対応、苦情、回収などの有無を表明保証で確認します。既知の問題を開示せず、売却後に発覚すれば、損害賠償、補償請求、場合によっては契約解除が問題になります。

契約では、補償上限、請求可能期間、対象となる損害、エスクローの有無を具体化します。違反を隠すより、事実と是正状況を開示し、責任範囲を交渉する方が紛争を抑えやすくなります。

2. 通販広告と商品表示に及ぶ薬機法の規制範囲

薬機法は、商品の容器だけでなく、ランディングページ、検索広告、SNS、メール、口コミ、アフィリエイトにも及びます。健康食品は食品でも、疾病の治療・予防や身体機能の改善をうたうと、医薬品のような表現と評価されるリスクがあります。

化粧品は認められた効能効果の範囲、医薬部外品は承認された効能効果の範囲で表現します。医療機器は、承認・認証された目的や性能を超えて広告しないことが基本です。

  • 商品表示:名称、成分、製造番号、製造販売業者、使用上の注意

  • 自社広告:LP、バナー、検索広告、メール、同梱チラシ

  • 第三者広告:アフィリエイト記事、口コミ、動画、インフルエンサー投稿

  • 販売導線:定期購入、返品条件、最終確認画面、価格表示

【文脈】通販広告に薬機法が適用される範囲を 2-1. 虚偽や誇大な効能効果表現の広告監査項目

「治る」「改善する」「予防できる」「絶対安全」「副作用なし」などの断定は、商品区分や根拠によって高いリスクがあります。体験談やビフォーアフターも、個人の感想と書くだけでは効能効果の保証を打ち消せません。

監査では、表現単体だけでなく、画像、見出し、口コミ、注釈の位置を一体で確認します。「日本一」や「最高」といった表示は、調査主体、期間、対象、根拠資料まで確認できる状態にします。

2-2. アフィリエイターとインフルエンサーの責任分担

広告主が直接投稿していなくても、報酬、依頼、素材提供、掲載承認があれば管理責任を問われる可能性があります。「アフィリエイターが勝手に書いた」という説明だけでは、買主の懸念は解消できません。

委託契約、禁止表現リスト、事前承認ログ、修正依頼、投稿削除履歴を保存します。媒体別に担当者と対応期限を決め、違反投稿を発見した後の連絡記録も残しておきます。

2-3. 景品表示法と特定商取引法が重なる通販リスク

薬機法の問題は、景品表示法や特定商取引法と同時に発生することがあります。効果の根拠が弱ければ優良誤認、価格や定期条件が分かりにくければ有利誤認や申込画面の表示問題につながります。

定期購入では、総額、契約期間、解約方法、返品条件を最終確認画面で明確に示します。買主は法令違反だけでなく、返金率、解約率、苦情件数を事業の継続性として評価します。

2-4. 医療機器の分類と販売許可を確認する手順

医療機器は、一般医療機器、管理医療機器、高度管理医療機器に分かれ、クラスⅠからⅣまでリスクに応じて扱いが変わります。管理医療機器は届出、高度管理医療機器は許可が基本ですが、特定保守管理医療機器は分類にかかわらず許可が必要な場合があります。

商品ごとに、分類、承認・認証、製造販売業者、販売業の許可・届出、営業所管理者を台帳化します。中古品では、製造販売業者への事前通知や保守点検記録も確認します。

3. 売却前デューデリジェンスで集める薬事資料

買主は、広告の適法性だけでなく、問題を発見して修正できる管理能力を見ます。資料が欠けていると、実際の違反範囲が不明になり、買主は不確実性を価格減額や広い表明保証で補おうとします。

  • 商品台帳:区分、成分、製造販売業者、許認可、販売開始日

  • 広告資料:現行・過去のLP、バナー、SNS、メール、同梱物

  • 管理資料:審査台帳、承認者、根拠資料、修正履歴、教育記録

  • 事故・対応資料:苦情、返金、回収、行政照会、社内調査

  • 委託資料:代理店契約、アフィリエイト規約、監視・削除履歴

【文脈】売却前デューデリジェンスで揃える薬事資料を 3-1. 商品表示と広告素材を媒体別に棚卸しする方法

自社サイト、LP、検索広告、SNS、メール、同梱物、紙媒体を分け、現行素材と過去素材を一覧化します。各素材にURL、画像、公開期間、商品名、表現、担当者、修正日を付けると検証しやすくなります。

過去3年分など、社内で保存している期間を基準に履歴を確認します。保存期間が不明な場合は、広告管理画面、制作会社、サーバー、SNSのアーカイブを横断して復元します。

3-2. 許認可と製造販売体制の証憑をそろえる確認

商品区分ごとに、製造販売業者、輸入者、販売業者、承認・認証・届出の状況を確認します。海外商品では、輸入者の位置付けと国内販売の責任主体を曖昧にしないことが重要です。

事業譲渡では、許認可や契約が買主へ自動承継されない場合があります。株式譲渡では法人が変わらない一方、役員、営業所、管理者の変更届が必要になることがあるため、所管窓口で確認します。

3-3. 広告審査記録と削除履歴を証跡化する実務

審査台帳には、素材名、媒体、審査日、承認者、根拠資料、掲載期間、修正内容を記録します。修正前後のファイル名とハッシュ値、メールやチャットの承認履歴も、改変されにくい形式で保管します。

アフィリエイトでは、監視日、違反URL、連絡日時、削除確認日を記録します。買主が第三者でも追跡できるよう、媒体、商品、広告主、対応結果を一意の管理番号で結びます。

3-4. 返金苦情と行政照会を開示資料へ整理する

苦情、返金、健康被害の申告、回収、行政照会、社内調査を時系列で整理します。件数だけでなく、対象商品、売上期間、対応者、未解決事項、再発防止策まで記載します。

未解決事項をゼロに見せる必要はありません。事実、判断保留の理由、対応期限、責任分担を明示した方が、買主はリスクを価格や補償条件に反映しやすくなります。

4. 違反発覚から売却までの是正ロードマップ

違反の疑いを把握したら、販売停止と証拠保全を同時に行います。削除だけを先行すると、掲載期間や関係者の関与が分からなくなり、後の調査と買主への説明が難しくなります。

  1. 当日から数日:広告停止、受注・在庫確認、証拠保全

  2. 1〜30日:専門家監査、違反範囲の特定、広告修正

  3. 31〜90日:審査体制、委託先管理、社員教育を整備

  4. 91〜180日:運用実績を記録し、開示と契約条件を交渉

【文脈】薬機法違反の疑いを把握してから通販事業を売却するまでの対応順序を示すタイムライン 4-1. 違反の疑いを把握した直後に止める業務

該当する広告、アフィリエイト素材、インフルエンサー投稿を一時停止します。同時に、スクリーンショット、掲載URL、管理画面、契約書、売上データを保存し、担当者に上書きや廃棄をしないよう指示します。

販売停止の範囲は、商品、媒体、地域、期間ごとに判断します。受注済み商品の出荷、返品、問い合わせ、在庫隔離も確認し、健康被害が疑われる場合は直ちに専門家へ連絡します。

4-2. 専門家監査から広告修正までの実行手順

弁護士には行政対応、責任主体、開示、契約を確認し、薬事担当者には商品区分と効能効果を確認します。広告審査担当者には、媒体別の修正案と代替表現、再掲載条件を整理してもらいます。

優先順位は、健康被害や無許可販売、継続掲載中の高リスク広告から始めます。その後、売上への影響が大きいLP、検索広告、アフィリエイトの順に修正すると、是正と事業継続を両立しやすくなります。

4-3. 九十日と百八十日で分ける再発防止計画

90日以内は、危険表現の停止、全主要素材の修正、承認者の設定、委託先への禁止事項通知を完了させます。修正後の広告で、CVR、CPA、返金率、苦情件数を比較できるようにします。

180日以内は、定期監査、研修、委託先の再審査、証跡保存を運用に組み込みます。売却時には、計画、実施日、責任者、結果を示し、体制が書面だけでないことを説明します。

4-4. 買主への開示と表明保証を交渉する準備

判明事実、対象期間、売上、対応済み事項、未解決リスク、再発防止策を一枚の一覧にします。課徴金の可能性がある場合は、対象売上の4.5%を一つの試算材料として、金額の前提を明示します。

表明保証では、補償上限、存続期間、既知リスクの除外、解除条件を交渉します。隠れた問題を包括的に保証するのではなく、開示資料に記載した事項を契約上どう扱うかを明確にします。

5. 薬機法違反の通販売却リスクを解消するFAQ 5-1. 薬機法違反の疑いだけで通販は売却不能ですか

売却不能とは限りません。商品区分、違反の継続性、行政対応、許認可、是正状況、売上への依存度によって評価が変わります。無許可販売や健康被害が絡む場合は、事業の切り出しや取引延期も検討されます。

5-2. 広告を削除すれば買主への開示は不要ですか

削除だけでは不十分です。過去の掲載事実、売上、苦情、行政照会、修正履歴が残るため、証拠を保全したうえで開示要否を判断します。削除日時と理由、再発防止策も記録します。

5-3. アフィリエイト投稿の違反は事業者も責任を負いますか

委託先の投稿でも、広告主の関与や管理体制が確認されます。契約、事前承認、禁止表現の通知、監視、削除依頼の記録がなければ、広告主側の管理不備として評価される可能性があります。

5-4. どの段階で弁護士や薬事担当者へ相談しますか

行政照会、無許可販売、健康被害、継続的な誇大広告、回収、買主への開示判断がある時点で相談します。売却交渉の開始後ではなく、証拠保全と販売停止を検討する初期段階が適切です。

6. おすすめ商品: 通販事業の専門M&A仲介サービスの特徴と選び方

薬機法リスクを整理しながら売却先を探すなら、通販事業の専門M&A仲介サービスが選択肢になります。自社EC、楽天市場、Amazon、Yahoo!ショッピング、Shopify、BASE、STORES、D2C、単品リピート通販まで対象にしています。

通販事業の専門M&A仲介サービスは、株式譲渡と事業譲渡の両方に対応します。広告依存度、モール評価、定期購入、在庫、顧客基盤、ブランド力などを踏まえ、案件概要書の作成から買主探し、条件交渉、DD、契約、譲渡完了まで支援します。

EC・D2C事業に特化した買い手候補企業50社以上のネットワークがあり、複数企業との同時交渉にも対応します。上場企業での通販事業運営経験や、100億円売上のEC事業責任者経験を持つ担当者が対応する点も特徴です。

着手金、相談料、中間金は無料で、完全成功報酬制です。成功報酬の最低額は500万円、消費税別で、売買金額1億円以下の場合に適用されます。薬事資料の不足や是正中の課題も、早い段階で相談材料にできます。

売却価格の目安を知りたい段階から相談できる点は、薬機法リスクを抱える事業者に適しています。開示範囲と是正計画を整理し、買主が確認しやすい形へ整えることが、交渉の出発点になります。

7. まとめ

通販事業の薬機法違反は、広告の一部修正で済む場合から、許認可や事業継続性を揺るがす場合まで幅があります。売却価格には、課徴金4.5%、広告修正費、減収、返金、買主の再構築費用が反映されます。

まず広告と商品表示を媒体別に棚卸しし、許認可、委託先、苦情、行政対応の資料を保全します。そのうえで専門家監査を受け、90日と180日の是正計画、開示資料、表明保証の交渉条件を準備してください。

違反を消して売却するのではなく、事実を把握して是正し、説明できる状態にすることが重要です。クリーンアップの進捗そのものが、買主に示せる事業価値になります。

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編集者の紹介

日下部 興靖

株式会社M&A PMI AGENT

代表取締役 日下部 興靖

上場企業のグループ会社の取締役を4社経験。M&A・PMI業務・経営再建業務などを10年経験し、多くの企業の業績改善を行ったM&A・PMIの専門家。3か月の経営支援にて期首予算比で売上1.8倍、利益5倍などの実績を持つ。

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