デューデリジェンスとは?種類・費用・進め方を徹底解説

デューデリジェンスとは?種類・費用・進め方を徹底解説

M&Aや不動産投資を検討している方にとって、デューデリジェンスは必要不可欠なプロセスです。しかし、「どんな種類があるの?」「費用はどれくらいかかるの?」といった疑問を持つ方もいるのではないでしょうか。

本記事では、デューデリジェンスの目的、種類、費用、進め方をわかりやすく解説します。この記事を読めば、デューデリジェンスの全体像を把握し、スムーズなM&Aや投資の実現に役立てることができるでしょう。

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編集者の紹介

日下部 興靖

株式会社M&A PMI AGENT
代表取締役 日下部 興靖

上場企業のグループ会社の取締役を4社経験。M&A・PMI業務・経営再建業務などを10年経験し、多くの企業の業績改善を行ったM&A・PMIの専門家。3か月の経営支援にて期首予算比で売上1.8倍、利益5倍などの実績を持つ。




デューデリジェンスとは?目的と重要性をわかりやすく解説

デューデリジェンス(Due Diligence)とは、企業買収や投資を行う際に、対象となる企業や投資先の価値やリスクを詳細に調査・評価する一連の手続きのことです。直訳すると「当然行われるべき注意・努力」という意味で、「DD」と略されることもあります。このプロセスを通じて、買い手はM&Aや投資の意思決定をより確実に行い、成功する取引を実現するための基盤を築きます。

デューデリジェンスの基本的な意味とは?

デューデリジェンスは、M&A(企業の合併・買収)や不動産投資などの取引において、買い手側が売り手側の企業や資産の価値、リスクを評価するために行う詳細な調査です。 弁護士、会計士、税理士などの専門家がチームを組み、財務、法務、税務、ビジネスなど多岐にわたる分野を調査します。 目的は、売り手側から提供された情報だけでは見えない潜在的なリスクや問題点を洗い出し、買収価格や契約条件の妥当性を判断することです。

企業買収におけるデューデリジェンスの重要性

企業買収(M&A)におけるデューデリジェンスは、買収後のリスクを最小限に抑え、買収の成功率を高めるために非常に重要です。 買収対象企業の財務状況、法務上の問題、事業の継続性などを事前に把握することで、買収後に発生する可能性のある問題に対処できます。 例えば、簿外債務(帳簿に記載されていない負債)や訴訟リスク、税務上の問題などが発見された場合、買収価格の見直しや契約条件の修正を行うことができます。

投資判断を左右するデューデリジェンスの役割

デューデリジェンスは、投資判断を大きく左右する役割を担っています。 投資家は、デューデリジェンスの結果に基づいて、投資対象の将来性やリスクを評価し、投資の可否や投資額を決定します。 例えば、不動産投資においては、物件の老朽化状況や耐震性、土壌汚染の有無などを調査し、将来的な修繕費用や環境対策費用を考慮して投資判断を行います。

デューデリジェンスの種類:ビジネス、財務、法務、税務、IT

デューデリジェンスには、調査対象や目的によって様々な種類があります。ここでは、主要な5つの種類、ビジネス、財務、法務、税務、ITデューデリジェンスについて、それぞれの目的と調査内容を解説します。それぞれの特徴を理解することで、M&Aや投資の際に適切なデューデリジェンスを選択し、より精度の高い判断が可能になります。

ビジネスデューデリジェンス:事業の成長性とリスク評価

ビジネスデューデリジェンスは、M&A対象企業の事業に関するビジネスモデルや取引状況、市場の環境、技術の発展、競合他社の脅威や新規参入に関する障壁やコスト等の分析を通じて、今後の事業継続の安定性や成長性について予測するものです。 具体的には、対象企業の業界における立ち位置、競争優位性、経営戦略、顧客との関係性、将来の成長見通しなどを評価します。 また、オーナー経営者や対象事業のキーパーソンとなる人物へのインタビューを通じて、事業の強みや弱み、リスクなどを把握します。

財務デューデリジェンス:企業の財務状況を詳細に分析

財務デューデリジェンスは、対象会社の財務状況を詳細に分析し、資産の健全性や負債の状況を評価します。 企業の財務諸表(貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書など)を分析し、売上高や利益の推移、資産や負債の構成、キャッシュフローの状況などを把握します。 また、予算や事業計画書を分析し、売上予測や資本計画の妥当性を評価します。 財務デューデリジェンスを通じて、企業の収益性、安定性、財務リスクなどを総合的に評価し、買収価格の妥当性を判断します。

法務デューデリジェンス:契約や訴訟のリスクを洗い出す

法務デューデリジェンスは、取引実行の障害となる法律上の問題点、対象企業の価値の評価等に影響を与える法律上の問題点、買収後の事業計画等に影響を与える、またはM&A後に改善すべき問題点などを発見するために調査を実施することです。 具体的には、会社組織の構造、役員・従業員に関する契約、許認可関連の資料、紛争・訴訟履歴などを調査します。 法務デューデリジェンスを通じて、契約上のリスク、訴訟リスク、法令違反リスクなどを洗い出し、M&A後の事業運営に支障をきたす可能性のある問題を特定します。

税務デューデリジェンス:税務リスクと将来の税負担を評価

税務デューデリジェンスは、企業の税務リスクを事前に調査し、潜在的な問題を特定するプロセスのことです。 過去の税務申告内容をチェックし、将来的な税務トラブルのリスクを評価します。 具体的には、法人税や消費税、地方税の申告状況、未払税金の有無などについて確認します。 税務リスクが判明した場合、買収価格の調整や補償条項の設定など、適切な対策を検討しなければなりません。

ITデューデリジェンス:ITシステムの健全性とリスクを評価

ITデューデリジェンスは、営業、管理、会計等事業に使用するシステム関連の資産査定や、M&A成立後の買い手側へのシステム統合に関する障害、投資費用について予測し、事業計画に適切に反映するための調査を実施することです。 具体的には、ITシステムの構成と管理体制、アプリケーションの種類、インフラの状況、セキュリティ管理、ITコストと運用効率などを評価します。 ITデューデリジェンスを通じて、ITシステムの老朽化、セキュリティリスク、システム統合の課題などを洗い出し、M&A後のIT戦略策定に役立てます。

デューデリジェンスの費用相場とコスト削減のポイント

デューデリジェンスには専門家の関与が必要となるため、ある程度の費用がかかります。しかし、費用を抑えつつ、効果的なデューデリジェンスを行うことも可能です。ここでは、デューデリジェンス費用の内訳と相場を把握し、費用対効果を高める進め方や中小企業が費用を抑えるための工夫について解説します。

デューデリジェンス費用の内訳と相場を把握する

デューデリジェンスの費用は、依頼する専門家によって異なり、調査範囲や企業の規模によっても変動します。 一般的な費用相場は以下のとおりです。

弁護士(法務デューデリジェンス)
  • 時間制:1時間あたり2万~5万円
  • 日当制:1日あたり14万~40万円
  • 固定+成功報酬:案件の規模や複雑さによって変動

総額としては50万~100万円が相場ですが、案件の規模や複雑さによっては500万円を超えるケースもあります。

公認会計士(財務デューデリジェンス)
  • 時間制:1時間あたり2万~5万円

作業期間が2~3週間であれば、総額100万円前後になることが多いです。

税理士(税務デューデリジェンス)
  • 50万〜100万円程度

依頼する税理士事務所や対象企業の規模によって変動します。

費用対効果を高めるデューデリジェンスの進め方

デューデリジェンスの費用対効果を高めるためには、以下の点に注意して進めることが重要です。

  1. 調査範囲を明確にする:対象企業の規模や事業内容に応じて、調査範囲を適切に設定する
  2. 優先順位をつける:影響の大きい部分から着手し、効率的に調査を進める
  3. 専門家を活用する:各分野の専門家を活用し、精度の高い調査を行う

調査範囲を絞り込み、専門家を効果的に活用することで、費用を抑えつつ、必要な情報を収集できます。

中小企業が費用を抑えるための工夫とは?

中小企業がデューデリジェンスの費用を抑えるためには、以下の工夫が考えられます。

  1. 簡易的な調査に留める:詳細な調査が必要な項目を絞り込み、簡易的な調査に留める
  2. 公的機関の支援を活用する:中小企業基盤整備機構などの公的機関が提供するM&A支援サービスを活用する
  3. 複数の専門家から見積もりを取る:複数の専門家から見積もりを取り、費用を比較検討する

これらの工夫により、費用を抑えながらも、必要な情報を収集し、リスクを評価することができます。

デューデリジェンスの進め方:準備から報告までの流れ

デューデリジェンスは、準備、情報収集と分析、結果の評価と報告という3つのステップで進められます。ここでは、それぞれのステップにおける具体的な作業内容と注意点について解説します。各ステップを理解することで、デューデリジェンスをスムーズに進め、より正確な結果を得ることができます。

ステップ1:デューデリジェンスの目的と範囲を明確化

まず、デューデリジェンスの目的と範囲を明確化します。 M&Aの目的(事業拡大、新規事業参入など)や、買収後の経営戦略などを考慮し、調査すべき項目を具体的に決定します。 例えば、財務状況、法務リスク、事業の成長性、技術力、人事制度など、M&Aの成否を左右する重要な要素を洗い出します。 また、調査期間や予算などの制約条件も考慮し、効率的な調査計画を立てることが重要です。

ステップ2:情報収集と分析の実施

次に、対象企業から必要な情報を収集し、分析を行います。 財務諸表、契約書、人事関連資料、ITシステム関連資料など、多岐にわたる資料を収集し、専門家が分析を行います。 また、対象企業の経営陣や従業員へのヒアリングを実施し、資料だけでは分からない情報を収集します。 収集した情報に基づいて、対象企業の強みや弱み、リスクなどを評価し、M&A後の事業計画策定に役立てます。

ステップ3:結果の評価と報告書の作成

最後に、収集した情報と分析結果を評価し、報告書を作成します。 報告書には、対象企業の概要、財務状況、法務リスク、事業の成長性、ITシステムの状況など、M&Aの意思決定に必要な情報が網羅的に記載されます。 報告書に基づいて、M&Aの実行可否、買収価格、契約条件などを最終的に判断します。 また、M&A後の統合プロセス(PMI)に向けた具体的な計画を策定します。

不動産デューデリジェンス:特有の注意点と評価項目

不動産デューデリジェンスは、通常の企業に対するデューデリジェンスとは異なり、不動産特有の注意点や評価項目があります。ここでは、不動産デューデリジェンスの目的と範囲、重要評価項目、報告書の読み解き方について解説します。不動産投資やM&Aで不動産が関わる場合は、これらの知識を身につけて、リスクを適切に評価しましょう。

不動産デューデリジェンスとは?目的と範囲を理解する

不動産デューデリジェンスは、不動産投資やM&Aにおいて、対象となる不動産の価値やリスクを詳細に調査・評価するプロセスです。 目的は、不動産の物理的な状況、法的権利関係、経済的な価値などを把握し、投資判断の基礎となる情報を収集することです。 不動産デューデリジェンスの範囲は、物件の調査、権利関係の調査、法令規制の調査、経済調査など多岐にわたります。

不動産デューデリジェンスにおける重要評価項目

不動産デューデリジェンスにおける重要評価項目は、以下のとおりです。

物理的状況
  • 建物の構造、耐震性、老朽化状況
  • 土壌汚染、アスベストなどの環境リスク
  • 設備の状況、修繕履歴
法的権利関係
  • 所有権、抵当権などの権利関係
  • 賃貸借契約の内容、賃料収入
  • 法令規制、用途制限
経済的価値
  • 周辺の賃料相場、空室率
  • 将来の賃料収入予測
  • 固定資産税、都市計画税などの税金

これらの項目を総合的に評価し、不動産の投資価値を判断します。

不動産デューデリジェンス報告書の読み解き方

不動産デューデリジェンス報告書は、専門家が調査結果をまとめたものであり、不動産の価値やリスクを判断するための重要な資料です。 報告書には、物件概要、調査内容、評価結果、リスク評価などが記載されています。 報告書を読む際には、以下の点に注意しましょう。

  • 調査範囲や調査方法を確認する
  • 評価結果の根拠となるデータを確認する
  • リスク評価の内容を理解する
  • 専門家の意見や提言を参考にする

報告書を正しく理解することで、不動産投資のリスクを適切に評価し、意思決定に役立てることができます。

M&Aにおけるデューデリジェンス:成功のためのポイント

M&Aにおけるデューデリジェンスは、買収後の統合を成功させるために不可欠なプロセスです。ここでは、M&Aにおけるデューデリジェンスの目的と重要性、確認すべき重要事項、M&A後の統合を見据えたデューデリジェンス戦略について解説します。M&Aを成功させるためには、これらのポイントを理解し、適切なデューデリジェンスを実施することが重要です。

M&Aにおけるデューデリジェンスの目的と重要性

M&Aにおけるデューデリジェンスの目的は、買収対象企業の実態を詳細に把握し、買収の可否や買収価格を適切に判断することです。 財務、法務、税務、ビジネスなど多岐にわたる分野を調査し、潜在的なリスクや問題点を洗い出します。 デューデリジェンスを通じて、買収後の事業運営に支障をきたす可能性のある問題を事前に特定し、適切な対策を講じることができます。 また、買収対象企業の強みや弱みを把握し、M&A後の統合戦略策定に役立てることも可能です。

M&Aデューデリジェンスで確認すべき重要事項

M&Aデューデリジェンスで確認すべき重要事項は、以下のとおりです。

財務状況
  • 資産、負債、資本の状況
  • 収益性、成長性、キャッシュフロー
  • 簿外債務、偶発債務
法務リスク
  • 契約関係、知的財産権
  • 訴訟、紛争
  • 法令違反、行政処分
事業の継続性
  • 主要顧客、仕入先との関係
  • 市場動向、競争環境
  • 技術力、ノウハウ
組織・人事
  • 従業員構成、労働条件
  • 人事制度、労使関係
  • キーパーソンの存在

これらの事項を詳細に確認することで、M&A後のリスクを最小限に抑え、事業の成長につなげることができます。

M&A後の統合を見据えたデューデリジェンス戦略

M&A後の統合(PMI)を成功させるためには、デューデリジェンスの段階から統合を見据えた戦略を立てることが重要です。 具体的には、以下の点に注意しましょう。

  • 統合後の組織体制、経営体制を検討する
  • ITシステム、人事制度などの統合計画を策定する
  • 企業文化、従業員の意識を理解する

デューデリジェンスで得られた情報を基に、M&A後の統合に向けた具体的な計画を立て、スムーズな統合を実現しましょう。

まとめ

デューデリジェンスは、M&Aや投資などの重要な意思決定を行う際に、リスクを把握し、適切な判断を下すための不可欠なプロセスです。 種類、費用、進め方を理解し、専門家を活用しながら、効果的なデューデリジェンスを実施することで、M&Aや投資の成功率を高めることができます。 今回の記事を参考に、M&Aや投資を検討する際には、必ずデューデリジェンスを実施し、リスクを最小限に抑え、より良い結果につなげてください。

  • デューデリジェンスは、M&Aや投資におけるリスクを評価し、適切な判断を下すための重要なプロセス
  • ビジネス、財務、法務、税務、ITなど、様々な種類のデューデリジェンスが存在する
  • 費用は調査範囲や専門家によって異なり、数十万円から数百万円以上かかる場合もある
  • 準備、情報収集と分析、結果の評価と報告という3つのステップで進められる
  • M&A後の統合を見据えた戦略を立てることが重要
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