SES事業の事業売却を成功へ導く価格試算と90日準備からPMIまで

SES事業の事業売却を成功へ導く価格試算と90日準備からPMIまで

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公開日:2025年2月6日
最終更新日:2026年8月10日

SES事業の売却は、後継者不在や採用難を解決し、エンジニアと顧客基盤を次の経営者へ引き継ぐ選択肢です。価格、譲渡方法、準備手順を整理します。

1. SES事業を売却する前に知る市場構造と判断基準

結論として、SES事業はエンジニア、顧客契約、営業管理を一体で評価される事業です。IT人材不足を背景に買収需要はありますが、人数だけで売却価格が決まるわけではありません。

経済産業省の資料では、2030年のIT人材不足は40万〜80万人規模になる可能性が示されています。採用競争が続くため、既存の組織を取得できるM&Aは、採用活動の時間を短縮する手段になります。

次のいずれかに該当する場合、売却準備を始める合理性があります。

  • 後継者が決まらず、3年以内の事業承継が必要

  • 採用費の増加で利益率が下がっている

  • 経営者自身が営業、採用、顧客対応を抱えている

  • 大手案件に必要な資本力や営業網が不足している

赤字化してから急いで売ると、交渉相手と条件が限られます。売却は撤退ではなく、資本力や採用力を取り込んで事業を存続させる経営判断として検討できます。

【文脈】SES事業の売却を検討すべき判断基準を 1-1. SES契約の準委任と派遣を分ける事業構造

準委任契約は、業務遂行に対して報酬を受け、指揮命令権は原則としてSES会社側にあります。派遣契約では派遣先が指揮命令を行い、許可や管理方法も異なります。

売却時は、契約形態、月額の契約単価、エンジニア報酬、外注費を案件別に説明します。実態が契約書と異なる場合、価格調整や補償の対象になり得ます。

1-2. IT人材不足がSES企業の買収需要を生む理由

買い手が取得したいのは、単なる人数ではありません。特定技術を持つエンジニア組織、継続的な顧客基盤、案件を獲得する営業機能を同時に得られる点に価値があります。

採用と育成には時間がかかります。既に稼働率の高い人材を抱えるSES会社を買収すれば、買い手は市場参入や内製化を早められます。

1-3. 赤字や地方企業でも買い手を探せる条件

赤字でも、専門性の高い技術者、長期契約、地域の採用網、元請との関係があれば買い手は見つかります。重要なのは、赤字の原因が買い手の営業力や管理機能で改善できるかです。

例えばエンジニア18名の地方企業で、稼働率が低く赤字でも、金融系や組込み系の実績があり、主要顧客との取引が5年以上続いていれば、再生余地を説明できます。赤字額ではなく、改善後の収益を示すことが必要です。

1-4. 会社売却かSES事業譲渡かを決める診断軸

複数事業を持たず、会社の資産と契約をまとめて引き継ぎたいなら株式譲渡が基本です。SES部門だけを売りたい、または簿外債務を切り離したい場合は事業譲渡を検討します。

判断項目

会社売却

SES事業譲渡

対象

会社全体

選定した事業・資産

契約移転

原則として不要

個別同意が必要な場合がある

負債

原則引き継ぐ

対象を限定できる

2. SES事業の売却価格を試算する方法と譲渡手法

売却価格は、営業利益やEBITDAを基礎に、成長性、顧客の継続性、負債、経営者依存度を加味して決まります。単純な売上倍率だけでは、SES事業の実力を正しく表せません。

中小企業M&Aでは、時価純資産に営業利益の数年分を加える考え方が使われます。ただし、実際の価格は買い手の戦略、競争状況、契約承継リスクによって大きく変わります。

2-1. エンジニア数と稼働率から売上を組み立てる

まず、エンジニア数×平均契約単価×稼働率×稼働月数で年間売上を試算します。例えば20名、月額単価60万円、稼働率95%、12か月なら、売上は約1億3,680万円です。

ここから給与、社会保険、交通費、外注費を差し引き、案件別の粗利を確認します。単価が高くても外注比率が高ければ、買い手が受け取る収益力は小さくなります。

2-2. 営業利益と倍率で企業価値を概算する手順

営業利益1,500万円の会社を例に、仮に利益の3〜5年分を営業権の目安とすると、4,500万〜7,500万円が一つの試算範囲になります。これは相場を保証する金額ではありません。

顧客1社への依存、経営者が持つ営業関係、離職率、元請比率が高評価なら倍率は上がりやすくなります。企業価値から純有利子負債を差し引いた金額が、株式価値の検討材料です。

2-3. 株式譲渡と事業譲渡の税務と同意範囲

株式譲渡は株主が株式を売却し、会社の契約や雇用を維持しやすい手法です。手続きが比較的簡潔な一方、買い手は会社に残る負債や過去のリスクも引き継ぎます。

事業譲渡は、対象資産や契約を選んで移せます。従業員の雇用契約、顧客契約、再委託契約などで個別同意が必要となることがあり、税務上の扱いも株式譲渡と異なります。

譲渡後の税金、専門家費用、引継ぎ期間まで含めて比較します。手法は価格だけでなく、同意を得られる範囲とリスクの所在で決めるべきです。

2-4. 会社分割後に株式を譲渡する活用場面

複数事業を持つ会社では、会社分割によってSES部門を新会社へ移し、その新会社の株式を譲渡する方法があります。資産、契約、人員を整理してから売却できる点が特徴です。

不動産や自社サービスを残したい場合に有効ですが、法務、税務、会計の検討が必要です。実行前に専門家へ相談し、移転対象と残す資産を明確にします。

【文脈】SES事業の売却価格を試算する手順と 3. 高値売却を左右するSES人材と契約の整備

高値売却の核心は、売上の大きさではなく、買い手が将来も再現できる収益を説明できることです。エンジニアの定着率、元請比率、顧客分散、契約管理、労務体制を数値化します。

3-1. 元請比率と顧客分散が評価額を左右する構造

商流が深いほど中間マージンが発生し、契約終了時の情報も遅れます。元請・プライム比率、顧客別売上、契約更新率、平均契約期間を一覧にして、収益の安定性を示します。

最大顧客の売上比率が高い場合は、依存度を隠さず、複数年の継続実績や担当者との関係を補足します。弱点を先に説明する資料は、交渉の手戻りを減らします。

3-2. エンジニア離職を抑える売却前後の実務策

売却情報は、秘密保持契約の前後で開示範囲を段階化します。キーパーソンを特定し、売却後の役割、給与、評価、勤務地、勤務継続期間を買い手と事前に協議します。

最終契約後は、社長だけでなく現場責任者が説明します。待遇が維持されるのか、研修や案件選択がどう変わるのかを具体化し、エンジニア面談を実施します。

3-3. SES契約の変更条項を確認する契約台帳

契約台帳には、顧客名、契約形態、単価、期間、更新日、再委託の可否、損害賠償、個人情報管理を記載します。株主変更時の通知・承諾条項は特に重要です。

条項が見つかった場合は、承諾取得の担当者と期限を管理します。契約書がない案件や口頭更新が続く案件は、売却前に書面化できるか確認します。

3-4. 社会保険と偽装請負リスクを事前に点検する

雇用契約、勤怠、36協定、残業代、社会保険の加入状況を確認します。準委任契約なのに顧客がエンジニアへ直接指示している場合、偽装請負の疑いが生じます。

未払残業代や保険料の問題は、売却価格の調整や補償条項につながります。問題を発見したら、労務専門家と是正計画を作り、交渉前に事実関係を整理します。

4. SES事業売却を進める90日準備とM&A実務

90日で売却準備の土台を作るなら、最初の30日で資料、次の30日で買い手候補、最後の30日で交渉資料とDD対応を整えます。成約自体は90日を超える場合もあります。

4-1. 最初の30日で作る決算資料と人員台帳

過去の決算書、月次試算表、借入一覧、税務申告書を集めます。エンジニア別に、雇用形態、経験年数、技術、単価、給与、稼働率、案件名、契約終了日を台帳化します。

顧客別売上、粗利、契約期間、更新実績も整理します。資料の数字が決算書と一致しない場合は、理由を注記しておくとDDでの説明が容易です。

4-2. 匿名査定から買い手候補を絞り込む手順

最初は会社名を伏せたノンネーム資料を使い、地域、売上規模、エンジニア数、得意技術、売却理由を示します。関心を示した買い手とは秘密保持契約を締結してから詳細を開示します。

M&A仲介会社は候補探索や交渉を任せやすく、マッチングプラットフォームは案件を広く確認できます。手数料、匿名性、SESへの理解、買い手の質を比較します。

4-3. DDで求められる顧客契約と労務資料の一覧
  • 財務:決算書、試算表、借入、売掛金、税務申告書

  • 事業:顧客別売上、案件別粗利、稼働率、契約更新実績

  • 法務:定款、株主名簿、顧客契約、再委託契約、訴訟の有無

  • 労務:雇用契約、給与台帳、勤怠、社会保険、残業代、退職者一覧

  • IT管理:個人情報、アクセス権限、端末管理、情報セキュリティ規程

SESでは、契約移転の承諾、稼働実績と請求の一致、未払残業、個人情報の取り扱いが重点項目です。資料を提出するだけでなく、リスクと対応方針を一覧で示します。

4-4. クロージング後の引継ぎとPMIを設計する

経営者の引継ぎ期間、顧客への説明日、請求・給与・評価制度の移行日を決めます。営業管理、採用、エンジニア面談の責任者も、クロージング前に明確にします。

PMIは買収後に始めるのではなく、基本合意後から設計します。初月は雇用と顧客を安定させ、3か月以内に管理指標と営業方針を統合する流れが実務的です。

5. SES会社の売却事例から学ぶ買い手の評価軸

公開事例を見ると、買い手の目的は人材確保、顧客基盤の獲得、DX支援の強化、地域展開などに分かれます。売り手の規模より、買い手の戦略と資産が合うかが重要です。

5-1. 人材獲得型M&Aで評価された組織の特徴

特定技術のエンジニア、未経験者を育成する教育カリキュラム、採用チャネル、現場を管理するリーダー層が評価されます。個人の能力だけでなく、組織として再現できる仕組みがポイントです。

買い手が内製化を目的とする場合、クラウド、セキュリティ、AI、金融などの専門領域が評価対象になります。資格や実績は、案件名、役割、期間とともに示します。

5-2. 小規模SESの成約を支えた継続契約と管理体制

従業員20名以下でも、契約更新率、顧客との取引年数、月次試算表、エンジニア台帳が整っていれば不安を下げられます。経営者が退任しても回る営業・管理体制が重要です。

公開案件には、売上1億円台、営業利益1,000万〜2,500万円、従業員50人以下で売却希望価格9,000万円といった例があります。個別案件の価格であり、自社の相場を保証するものではありません。

5-3. 赤字事業でも買収対象になる収益改善余地

赤字要因を、低稼働、低単価、商流の深さ、採用費、管理費に分解します。買い手の営業網で単価を上げられ、管理機能で稼働率を改善できるなら、買収後の計画が評価されます。

地方企業でも、東京案件への接続や採用力を持つ買い手と組めば成長余地があります。赤字を隠すのではなく、12か月単位の改善シナリオを提示します。

5-4. 売却後の離職を防いだPMIの進め方

従業員への説明は、条件と方針が固まった段階で行います。キーパーソンには個別面談を設定し、給与、評価、勤務地、案件継続、キャリアパスを文書で示します。

顧客には担当者を同席させ、契約や現場体制が維持されることを説明します。離職と契約失注は連鎖しやすいため、人材と顧客を別々ではなく一つの移行計画で管理します。

【文脈】SES事業売却後のPMIで 6. よくある質問(FAQ) 6-1. エンジニア数が少なくてもSES事業は売却できますか

売却できます。人数だけでなく、技術領域、稼働率、契約単価、顧客契約、利益、経営者依存度を総合的に評価します。5〜20名規模でも、継続契約と管理資料が強みになります。

6-2. SES事業の売却価格はどの資料で確認できますか

決算書だけでは不十分です。エンジニア別の単価・稼働率・粗利、顧客別売上、契約期間、借入と未払債務を揃えて査定を受けます。

6-3. 事業譲渡で従業員の同意は必要になりますか

雇用契約の承継方法によっては、従業員ごとの同意が必要です。対象者、条件、説明日、回答を管理表に記録し、給与や勤務地の変更を明確にします。

6-4. M&A仲介会社とマッチングサイトはどう選びますか

手数料体系、匿名性、SESへの理解、買い手候補の質、契約・労務専門家との連携を比較します。最低報酬や成功報酬の計算方法まで確認してから契約します。

7. おすすめ商品: 手取りを重視するならM&A PMI AGENTの特徴と選び方

SES事業の売却では、譲渡価格ではなく、仲介手数料、税金、実費、引継ぎ条件を差し引いた手取り額で比較する必要があります。SES事業の売却専門ならM&A PMI AGENTは、この手取り額の整理を重視する売り手向けのサービスです。

初回相談、着手金、中間金が無料で、最低報酬は500万円〜です。オンライン面談中心で、他社の手数料、最低報酬、成功報酬の計算方法、テール条項などを契約前に比較できます。

譲渡価格5,000万円の比較例では、他社の最低報酬2,000万円に対し、最低報酬500万円〜の場合、手数料差額は最大1,500万円となります。実際の条件は案件内容や譲渡スキームで変わるため、見積書で確認してください。

買い手候補への打診から条件交渉、基本合意、デューデリジェンス、最終契約、クロージングまで支援します。ビジネスDD、PMI、企業再生、経営改善まで含めて相談できる点も、赤字や複数事業を抱える会社との相性がよい特徴です。

8. まとめ

SES事業の売却価格は、エンジニア数だけでなく、稼働率、契約単価、元請比率、顧客分散、定着率、利益、労務リスクで決まります。会社全体を売るか、SES部門だけを事業譲渡するかも早期に比較します。

まず30日で決算書、人員台帳、顧客契約、案件別粗利を整理し、匿名査定を受けます。そのうえで複数の買い手候補と手取り額、従業員の雇用条件、クロージング後のPMIを比較することが、事業価値を守る第一歩です。

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編集者の紹介

日下部 興靖

株式会社M&A PMI AGENT

代表取締役 日下部 興靖

上場企業のグループ会社の取締役を4社経験。M&A・PMI業務・経営再建業務などを10年経験し、多くの企業の業績改善を行ったM&A・PMIの専門家。3か月の経営支援にて期首予算比で売上1.8倍、利益5倍などの実績を持つ。

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