事業承継・M&A補助金は事業譲渡でも使える?経費対象となる範囲と注意点

事業承継・M&A補助金は事業譲渡でも使える?経費対象となる範囲と注意点

後継者不足や将来への不安から、事業承継やM&Aを検討する中小企業経営者が増えています。その中で「事業承継・M&A補助金」は有力な支援制度ですが、事業譲渡でも使えるのか、どこまでが対象になるのか分かりにくいと感じている方も多いのではないでしょうか。

本コラムでは、事業譲渡スキームに焦点を当て、補助金の適用条件、対象経費、申請時の注意点、採択率を高める事業計画の考え方までを実務目線で解説します。補助金を活用し、負担を抑えた円滑な事業承継を進めるための参考にしてください。 【関連】上限800万円まで補助される事業承継・M&A補助金を利用して譲渡・買収しませんか?

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編集者の紹介

日下部 興靖

株式会社M&A PMI AGENT
代表取締役 日下部 興靖

上場企業のグループ会社の取締役を4社経験。M&A・PMI業務・経営再建業務などを10年経験し、多くの企業の業績改善を行ったM&A・PMIの専門家。3か月の経営支援にて期首予算比で売上1.8倍、利益5倍などの実績を持つ。




1. 事業承継・M&A補助金における事業譲渡スキームの適用条件と定義

事業承継を考えている経営者の皆様、M&A補助金は事業譲渡でも利用できるのか、どのような経費が対象になるのか、気になりませんか?この記事では、事業承継・M&A補助金における事業譲渡の適用条件から、対象となる経費範囲、申請時の注意点までをわかりやすく解説します。補助金を活用して、スムーズな事業承継を実現しましょう。

事業承継・M&A補助金は、後継者不足や事業の再編を考えている中小企業にとって、経営資源の引継ぎを支援する重要な制度です。この補助金を活用するにあたり、事業譲渡というスキームがどのように適用されるのか、その条件と定義を正しく理解することが大切です。ここでは、補助金における事業譲渡の要件について詳しく解説します。

1.1 事業承継とは?定義と基本を理解する株式譲渡との比較:事業譲渡が「経営資源引継ぎ型」として認められる要件

事業承継とは、会社の経営を後継者に引き継ぐことです。親族や従業員に引き継ぐケースもあれば、M&A(企業の合併や買収)によって第三者に引き継ぐケースもあります。事業承継の方法として、株式譲渡と事業譲渡がありますが、補助金の対象となるには、事業譲渡が「経営資源引継ぎ型」として認められる必要があります。

  • 株式譲渡:会社の株式を譲渡することで、経営権を移転する方法です。この場合、会社の資産や負債もまとめて引き継がれます。
  • 事業譲渡:会社が持つ事業の一部または全部を、他の会社に譲渡する方法です。この場合、譲渡する資産や負債を個別に選ぶことができます。

補助金では、単なる資産の移動ではなく、事業そのものが継続されることを重視しています。そのため、事業譲渡が「経営資源引継ぎ型」として認められるには、以下の要件を満たす必要があります。

  • 事業に必要な有形・無形の経営資源(設備、技術、ノウハウ、顧客、従業員など)が、一体として譲渡されること。
  • 譲渡後も、その事業が継続して運営されること。

これらの要件を満たすことで、事業譲渡は補助金の対象となり、M&Aによる事業承継を促進し、地域経済の活性化に繋がることが期待されます。

1.2 譲渡対象資産の選定と「事業の同一性」に関する補助金審査のポイント

事業譲渡で事業承継・M&A補助金の申請を検討する際、どの資産を譲渡対象とするか、そして譲渡後も「事業の同一性」が保たれるかが、補助金審査の重要なポイントとなります。

  • 譲渡対象資産の選定:事業を継続するために不可欠な資産(設備、技術、顧客リスト、従業員など)を適切に含める必要があります。
  • 事業の同一性:譲渡後も、事業の内容や顧客層が大きく変わらないことが求められます。

補助金審査では、これらの点が詳細にチェックされます。例えば、特定の技術やノウハウが事業の核である場合、それらが確実に引き継がれるようにする必要があります。また、顧客との関係性も重要であり、譲渡後も顧客が継続してサービスを利用してくれるような措置を講じることが望ましいです。

1.3 経営者保証の解除や二重ローン解消に向けた特定調停スキームとの連携

事業承継をスムーズに進めるためには、経営者保証の解除や、事業承継に伴う二重ローンの解消も重要な課題です。これらの課題解決に役立つのが、特定調停スキームです。

特定調停スキームとは、裁判所が関与する手続きで、債権者(金融機関など)と債務者(事業承継者)との間で、返済条件の変更や債務の減免などについて合意を目指すものです。このスキームを活用することで、経営者保証の解除や二重ローンの解消が実現しやすくなります。

事業承継・M&A補助金と特定調停スキームを連携させることで、事業承継者は資金面と精神面の両方で負担を軽減し、事業の立て直しや成長に専念することができます。

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2. 事業譲渡で事業承継・M&A補助金の対象となる経費範囲と上限額

事業譲渡で事業承継・M&A補助金を申請する場合、どのような経費が補助対象となるのか、またその上限額はいくらなのかを把握しておくことが重要です。ここでは、補助対象となる経費の範囲と上限額について詳しく解説します。

2.1 仲介手数料・デューデリジェンス費用:委託費の計上ルールと相場

M&A仲介業者やFA(フィナンシャルアドバイザー)への仲介手数料は、補助対象となる委託費の中でも大きな割合を占めます。これらの費用は、M&Aを成功させるために不可欠な専門家のサポートに対する対価であり、補助金によって負担を軽減することができます。

また、デューデリジェンス(DD)費用も、M&Aの重要なプロセスであるため、補助対象となります。DDとは、M&Aの対象となる企業の価値やリスクを詳細に調査することで、M&Aの成否を左右する重要な要素です。

  • 仲介手数料:M&A仲介業者に支払う手数料。成功報酬として、M&A成約時に支払われることが多いです。
  • デューデリジェンス費用:弁護士や会計士などの専門家に依頼して、企業の財務状況や法務リスクなどを調査する費用。

これらの委託費を計上する際には、以下の点に注意が必要です。

  • 委託契約書や請求書などの証拠書類をきちんと保管しておくこと。
  • 相場からかけ離れた高額な委託費は、補助対象とならない可能性があること。
2.2 譲渡に伴う店舗・工場の改修費やITシステム統合に関わる「補助対象経費」

事業譲渡に伴い、店舗や工場の改修が必要となる場合や、ITシステムを統合する必要がある場合、これらの費用も補助対象となる可能性があります。

  • 店舗・工場の改修費:事業譲渡後、店舗や工場のレイアウト変更や設備更新などを行うための費用。
  • ITシステム統合費:譲渡元と譲渡先のITシステムを統合するための費用。

これらの費用を補助対象経費として計上するには、以下の要件を満たす必要があります。

  • 改修や統合が、事業の継続や改善に不可欠であること。
  • 費用が、相場から大きく乖離していないこと。
  • 見積書や請求書などの証拠書類をきちんと保管しておくこと。
2.3 廃業支援費の活用:不採算部門の事業譲渡に伴う解体・在庫処分コスト

事業譲渡を行う際、不採算部門を切り離すケースがあります。この場合、不採算部門の解体や、在庫処分にかかるコストも、廃業支援費として補助対象となる可能性があります。

  • 解体費:不採算部門の設備や建物を解体するための費用。
  • 在庫処分費:不採算部門の在庫を処分するための費用。

これらの費用を補助対象経費として計上するには、以下の要件を満たす必要があります。

  • 解体や在庫処分が、事業譲渡に伴い不可避的に発生するものであること。
  • 費用が、相場から大きく乖離していないこと。
  • 見積書や請求書などの証拠書類をきちんと保管しておくこと。
【関連】事業承継M&A補助金の対象業種と、申請前に確認すべき除外規定

3. 事業譲渡による事業承継・M&A補助金申請時の実務的注意点

事業譲渡による事業承継・M&A補助金の申請には、特有の注意点があります。ここでは、申請をスムーズに進めるために、実務的な注意点について解説します。

3.1 債権者保護手続きと個別同意:スケジュール遅延が交付決定に与える影響

事業譲渡を行う場合、債権者保護手続きが必要となることがあります。これは、会社の債権者に対して、事業譲渡を行う旨を通知し、異議申し立ての機会を与える手続きです。また、事業によっては、取引先や顧客からの個別同意が必要となる場合もあります。

これらの手続きには時間がかかるため、スケジュールに余裕を持って進める必要があります。手続きの遅延は、補助金の交付決定にも影響を与える可能性があるため、注意が必要です。

3.2 営業権(のれん)の資産計上と税務上の取り扱い:補助金申請書への記載法

事業譲渡では、営業権(のれん)が発生することがあります。営業権とは、企業のブランド力や顧客との関係性など、目に見えない資産のことです。営業権は、税務上の取り扱いが複雑であるため、専門家(税理士など)に相談することをおすすめします。

補助金申請書には、営業権の評価額や、その算定根拠を明確に記載する必要があります。また、税務上の取り扱いについても、正確に記載するようにしましょう。

3.3 許認可の再取得リスクとPMI期間中の事業空白を回避する対策

事業譲渡では、事業に必要な許認可を再取得する必要がある場合があります。許認可の再取得には時間がかかるため、PMI(Post Merger Integration:経営統合)期間中に事業空白が生じるリスクがあります。

このリスクを回避するためには、以下の対策を講じることが重要です。

  • 事前に、必要な許認可を確認し、再取得の手続きを早めに開始する。
  • PMI期間中に、事業をスムーズに移行するための計画を立てる。
  • 従業員の引継ぎを円滑に行い、事業のノウハウを確実に継承する。
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4. 採択率を向上させる事業譲渡を軸とした事業承継・M&A補助金の事業計画書

事業譲渡を軸とした事業承継・M&A補助金の事業計画書は、審査担当者に「この事業は成功する」と思わせる必要があります。そのためには、以下のポイントを押さえることが重要です。

4.1 譲受後のシナジー分析:生産性向上(付加価値額)の具体的算定根拠

事業計画書には、事業譲渡によってどのようなシナジーが生まれるのかを具体的に示す必要があります。特に、生産性向上(付加価値額)について、明確な算定根拠を示すことが重要です。

  • 数値目標:売上高、利益、コスト削減額などの具体的な数値目標を設定する。
  • 算定根拠:数値目標を達成するための根拠(市場分析、競合分析、自社の強みなど)を明確に示す。
  • 実現可能性:数値目標が、現実的に達成可能であることを示す。
4.2 従業員の雇用維持と再契約プロセス:PMIにおける労務リスクの管理

事業譲渡では、従業員の雇用維持が重要な課題となります。事業計画書には、従業員の雇用を維持するための具体的な対策を示す必要があります。

  • 雇用条件の維持:給与、労働時間、福利厚生などの雇用条件を、譲渡後も維持することを明示する。
  • 再契約プロセス:従業員との再契約プロセスを円滑に進めるための計画を示す。
  • 労務リスクの管理:従業員のモチベーション低下や離職を防ぐための対策を示す。
4.3 補助金交付後の実績報告義務と「事業化状況報告」に向けた管理体制

補助金交付後には、実績報告義務が課せられます。また、一定期間後には「事業化状況報告」を提出する必要があります。これらの報告義務を果たすためには、日頃から適切な管理体制を構築しておくことが重要です。

  • 経費管理:補助対象経費について、領収書や契約書などの証拠書類をきちんと保管する。
  • 進捗管理:事業計画の進捗状況を定期的に確認し、遅延や問題が発生した場合は、速やかに対応する。
  • 報告体制:実績報告や事業化状況報告に必要な情報を、スムーズに収集・整理できる体制を構築する。
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5. 事業承継・M&A補助金:事業譲渡成功のための注意点

事業承継・M&A補助金は、事業譲渡を成功させるための強力な支援ツールとなりますが、活用にあたってはいくつかの注意点があります。ここでは、特に重要な注意点について解説します。

5.1 補助金申請における注意点と対策

補助金申請では、以下の点に注意が必要です。

  • 申請要件:自社が、補助金の対象となる事業者であるか、事業内容が補助対象となるかなどを、事前にしっかりと確認する。
  • 申請書類:申請書類に不備や誤りがないか、必要な書類がすべて揃っているかなどを、提出前に必ず確認する。
  • スケジュール:申請期間や提出期限を厳守する。

これらの注意点を守り、万全の準備で申請に臨むことが、採択率向上につながります。

5.2 M&A後のPMI(Post Merger Integration)の重要性

M&Aは、単に企業を買い取るだけでなく、その後のPMI(Post Merger Integration:経営統合)が非常に重要です。PMIとは、M&A後、両社の経営資源を統合し、シナジー効果を最大限に引き出すための活動のことです。

PMIがうまくいかないと、M&Aの効果が十分に発揮されず、事業の成長が停滞してしまう可能性があります。そのため、M&Aを行う際には、PMIについても綿密な計画を立て、実行することが重要です。

5.3 事業承継後の企業成長戦略と補助金活用

事業承継は、企業にとって新たなスタート地点です。事業承継後には、新たな経営体制のもとで、企業をさらに成長させるための戦略を立て、実行していく必要があります。

事業承継・M&A補助金は、事業承継後の企業成長を支援するための制度でもあります。補助金を活用して、新たな事業展開や、生産性向上に取り組み、企業の成長を目指しましょう。

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まとめ

事業承継・M&A補助金は、事業譲渡による事業承継を検討している中小企業にとって、非常に有効な制度です。補助金を活用することで、事業承継にかかる費用負担を軽減し、事業の再編や新たな取り組みを支援することができます。

しかし、補助金の申請には、要件の確認や書類の準備など、一定の手間がかかります。また、補助金交付後には、実績報告義務も課せられます。そのため、補助金の活用にあたっては、事前にしっかりと制度内容を理解し、計画的に準備を進めることが重要です。

事業承継・M&A補助金を活用して、事業譲渡を成功させ、企業の新たな未来を切り拓きましょう。

  • 事業譲渡は、補助金対象となる経営資源の引継ぎが重要
  • 譲渡対象資産の選定と事業の同一性が審査のポイント
  • 債権者保護手続きと許認可再取得に注意
  • 事業計画書ではシナジー分析と雇用維持策を明確に
  • 実績報告義務を果たすための管理体制を構築
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