事業承継・M&A補助金の対象業種と、申請前に確認すべき除外規定

「事業承継・M&A補助金」は、中小企業や個人事業主が事業承継やM&Aを行う際に発生する費用の一部を支援する国の制度です。しかし、補助金には対象となる業種や満たすべき要件があり、申請前に確認が必要です。
この記事では、補助金の対象となる業種、申請前に確認すべき不交付要件や除外規定について詳しく解説します。補助金を活用して事業承継・M&Aを成功させるために、ぜひ最後までお読みください。
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編集者の紹介

株式会社M&A PMI AGENT
代表取締役 日下部 興靖
上場企業のグループ会社の取締役を4社経験。M&A・PMI業務・経営再建業務などを10年経験し、多くの企業の業績改善を行ったM&A・PMIの専門家。3か月の経営支援にて期首予算比で売上1.8倍、利益5倍などの実績を持つ。
1. 事業承継・M&A補助金の対象業種と中小企業基本法上の定義
事業承継・M&A補助金は、中小企業の事業承継やM&Aを支援する制度ですが、対象となるのは中小企業基本法で定められた中小企業者等です。ここでは、中小企業基本法上の定義と、具体的な業種分類について解説します。
1.1. 資本金・従業員数から見る「中小企業者」と「特定非営利活動法人」の該非判定中小企業基本法では、中小企業者を資本金の額または出資の総額と、常時使用する従業員数によって定義しています。業種によって基準が異なるため、自社の業種を確認し、それぞれの基準を満たしているかを確認しましょう。
1.1.1. 中小企業基本法における中小企業者の定義- 製造業その他:資本金3億円以下または従業員300人以下
- 卸売業:資本金1億円以下または従業員100人以下
- 小売業:資本金5000万円以下または従業員50人以下
- サービス業:資本金5000万円以下または従業員100人以下
また、特定非営利活動法人(NPO法人)も、一定の要件を満たす場合に補助対象となることがあります。NPO法人が対象となるかどうかは、各公募回の要領で確認が必要です。
1.2. 製造業・建設業・サービス業における対象業種の細分類と確認方法中小企業基本法では、業種を大きく分けていますが、実際にはさらに細かく分類されています。例えば、製造業の中でも、食料品製造業、繊維工業、化学工業など、様々な業種が存在します。これらの細分類は、日本標準産業分類に基づいており、総務省のホームページで確認できます。
1.2.1. 日本標準産業分類で自社の業種を確認する- 総務省のホームページで日本標準産業分類を検索する
- 自社の事業内容に最も近い分類項目を探す
- 該当する分類項目の詳細を確認し、自社の業種を特定する
複数の事業を営んでいる場合、どの事業を「主たる事業」とするかが問題となることがあります。主たる事業は、売上高や従業員数などを総合的に考慮して判断されます。補助金申請においては、主たる事業が対象業種である必要があります。
1.3.1. 主たる事業の判定基準- 売上高:最も売上高の大きい事業
- 従業員数:最も従業員数の多い事業
- 事業規模:事業に使用する設備や資産の規模
複数の事業を営む場合は、これらの要素を総合的に判断し、主たる事業を明確にする必要があります。
【関連】事業承継M&A補助金申請に必須の経営改善計画の書き方と採択率を高めるためのポイント2. 申請前に必ず確認すべき事業承継・M&A補助金の不交付要件と除外規定
事業承継・M&A補助金には、申請前に確認すべき不交付要件と除外規定が存在します。これらの要件に該当する場合、補助金を受けることができません。ここでは、主な不交付要件と除外規定について解説します。
2.1. 性風俗関連特殊営業・社会福祉法人・医療法人が除外される背景以下の事業を営む事業者は、補助対象から除外されます。
2.1.1. 主な除外対象- 性風俗関連特殊営業
- 社会福祉法人
- 医療法人
これらの事業が除外される背景には、補助金の目的との整合性や、事業の公共性、倫理的な問題などが考慮されています。
2.2. 暴力団排除条項とコンプライアンス・チェックの重要性暴力団排除条項は、補助金制度において重要なコンプライアンス要件です。申請者またはその法人の役員が、暴力団等の反社会的勢力でないこと、反社会的勢力との関係を有しないことが求められます。申請時には、暴力団排除に関する誓約書を提出する必要があります。
2.2.1. コンプライアンス・チェックの重要性- 申請者自身によるチェック:役員や従業員に反社会的勢力との関係がないか確認する
- 専門家によるチェック:弁護士や調査会社に依頼し、より詳細な調査を行う
過去に事業承継・M&A補助金(または類似の補助金)の交付を受けた事業者は、同一事業での重複申請が禁止されています。これは、補助金の公平性を保ち、より多くの事業者に支援の機会を提供するためです。ただし、過去の採択事業と異なる新たな事業計画であれば、申請が可能な場合があります。
2.3.1. 同一事業と判断されるケース- 過去の採択事業と事業内容が同一である場合
- 過去の採択事業と補助対象経費が重複する場合
事業承継・M&A補助金は、様々な業種の実務課題を解決するために活用できます。ここでは、具体的な業種を例に、補助金の活用モデルを紹介します。
3.1. 運送業・物流業界の「2024年問題」に対応する経営資源引継ぎ型支援運送業・物流業界では、2024年4月からの時間外労働の上限規制により、ドライバーの労働時間短縮と収入減少が懸念される「2024年問題」が深刻化しています。この問題に対応するため、M&Aによる経営資源の集約や、IT導入による業務効率化が有効な手段となります。事業承継・M&A補助金は、これらの取り組みを支援します。
3.1.1. 補助金の活用モデル- M&Aによる事業規模拡大:同業他社とのM&Aにより、車両やドライバーを共有化し、効率的な運行体制を構築する
- IT導入による業務効率化:運行管理システムや配車システムの導入により、運行ルートの最適化やドライバーの負担軽減を図る
飲食・宿泊業では、後継者不足や経営不振により、事業承継が困難なケースが増加しています。このような場合、事業譲渡(M&A)により、第三者に事業を引き継ぐことが有効な手段となります。事業承継・M&A補助金は、事業譲渡にかかる仲介手数料や、店舗の改装費用などを支援します。
3.2.1. 補助金の活用モデル- 事業譲渡による経営再建:不採算店舗を譲渡し、経営資源を集中することで、経営再建を図る
- 店舗の改装費用:譲渡後、店舗のコンセプトを変更し、新たな顧客層を獲得するために改装を行う
IT・ソフトウェア開発業では、技術者の高齢化や後継者不足により、M&Aによる事業承継が増加しています。M&Aにおいては、知的財産の承継が重要な課題となります。事業承継・M&A補助金は、知的財産評価費用や、知的財産管理システムの導入費用などを支援します。
3.3.1. 補助金の活用モデル- 知的財産評価費用:M&Aに際し、特許や著作権などの知的財産を評価し、適切な譲渡価格を決定する
- 知的財産管理システムの導入費用:譲渡後、知的財産を適切に管理し、技術の流出を防ぐためのシステムを導入する
4. 審査落ちを防ぐための事業承継・M&A補助金申請の最終チェックリスト
事業承継・M&A補助金の申請には、多くの書類や手続きが必要です。ここでは、審査落ちを防ぐための最終チェックリストを紹介します。
4.1. 実質的な支配権を有する「みなし大企業」に該当しないための資本構成確認みなし大企業とは、大企業が実質的な支配権を有する中小企業のことです。みなし大企業は、補助対象から除外されるため、申請前に資本構成を確認し、該当しないことを確認する必要があります。
4.1.1. みなし大企業の判定基準- 発行済株式総数の2分の1以上を同一の大企業が所有している
- 発行済株式総数の3分の2以上を複数の大企業が所有している
- 大企業の役員または従業員が、中小企業の役員の過半数を占めている
事務局は、申請者が「不適当と認められる者」に該当すると判断した場合、補助金を交付しません。不適当と認められる者の判断基準は、公募要領に記載されています。また、過去の不正受給や法令違反など、ネガティブな情報がある場合も、不交付となる可能性が高まります。
4.2.1. 不適当と認められる者の判断基準- 過去に補助金等の不正受給を行った
- 法令違反や社会的な信用を損なう行為を行った
- 反社会的勢力との関係を有している
事業承継・M&A補助金には、交付決定前の着手禁止ルールがあります。交付決定前に契約・発注・支払いを行った経費は、補助対象となりません。M&A仲介契約や、DD費用などの先行費用についても、交付決定後に契約・支払いを行う必要があります。
4.3.1. 交付決定前の着手禁止ルールの例外- 事前着手承認制度:一定の要件を満たす場合、交付決定前に着手した経費も補助対象となる
5. 事業承継・M&A補助金:申請の際の注意点
事業承継・M&A補助金は、中小企業が事業を円滑に引き継ぎ、さらに発展させるための強力な支援策です。しかし、補助金を活用するためには、申請の準備から事業計画の実行まで、各段階で注意すべき点があります。ここでは、補助金申請における必要書類の準備、審査で重視されるポイント、そして採択後の手続きと事業計画の実行について解説します。
5.1. 補助金申請における必要書類の準備補助金申請には、多くの書類が必要です。これらの書類は、申請者の事業規模や業種、申請する補助金の類型によって異なります。主な必要書類は以下の通りです。
5.1.1. 主な必要書類- 事業計画書:事業承継またはM&Aの目的、計画、期待される効果などを具体的に記述
- 財務諸表:過去数年分の財務諸表(貸借対照表、損益計算書など)
- 会社概要:会社の基本情報、事業内容、組織図など
- M&Aに関する契約書:M&Aの基本合意書、最終契約書など
- 専門家による意見書:M&Aの専門家(M&A仲介会社、FAなど)による意見書
これらの書類を事前に準備し、不備がないように確認することが、スムーズな申請プロセスのために重要です。
5.2. 審査で重視されるポイントとは?補助金の審査では、以下のポイントが重視されます。
5.2.1. 審査で重視されるポイント- 事業計画の妥当性:事業承継またはM&Aの目的が明確であり、計画が現実的であるか
- 財務の健全性:申請者の財務状況が健全であり、事業を継続できる見込みがあるか
- 地域経済への貢献:事業承継またはM&Aが地域経済に貢献する可能性が高いか
- 成長性:事業承継またはM&Aによって、事業が成長する見込みがあるか
これらのポイントを踏まえ、審査員に納得してもらえるような事業計画を作成することが、採択への鍵となります。
5.3. 採択後の手続きと事業計画の実行補助金の採択後には、交付申請、補助事業の実施、実績報告などの手続きが必要です。これらの手続きを適切に行わないと、補助金が交付されない場合があります。また、事業計画は、単なる書類ではなく、実行されるべき計画です。計画倒れにならないよう、着実に実行していくことが重要です。
5.3.1. 採択後の主な手続き- 交付申請:補助金の交付を受けるための申請
- 補助事業の実施:事業計画に基づき、事業を実施
- 実績報告:事業の実施状況を報告
まとめ
事業承継・M&A補助金は、中小企業が事業を円滑に承継し、成長を遂げるための重要な支援制度です。補助金の対象となる業種や要件、申請手続き、注意点などを理解し、適切に活用することで、事業承継・M&Aを成功に導くことができます。この記事が、補助金活用の一助となれば幸いです。
- 補助金の対象業種は、中小企業基本法で定められた中小企業者等
- 申請前に、不交付要件や除外規定を確認
- 事業計画の妥当性や財務の健全性が審査で重視される
- 採択後の手続きを適切に行い、事業計画を着実に実行


