M&A仲介手数料の交渉方法と相場を徹底解説!よくある落とし穴を回避する方法
M&A仲介手数料は、M&Aプロセスにおいて大きな費用負担となるため、その相場や交渉方法を理解することは非常に重要です。この記事では、M&A仲介手数料の相場を、一般的な手数料体系から規模や業種による違いまで詳しく解説します。
また、手数料交渉のポイントや注意点、M&A仲介会社との良好な関係構築の重要性についても説明します。さらに、着手金に関するトラブルや成功報酬の定義の曖昧さといった、M&A仲介手数料に関するよくある落とし穴とその回避方法についてもご紹介します。
この記事を読むことで、M&A仲介手数料に関する理解を深め、不要なコストを削減し、スムーズなM&Aを実現するための知識を得ることができます。
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編集者の紹介
株式会社M&A PMI AGENT
代表取締役 日下部 興靖
上場企業のグループ会社の取締役を4社経験。M&A・PMI業務・経営再建業務などを10年経験し、多くの企業の業績改善を行ったM&A・PMIの専門家。3か月の経営支援にて期首予算比で売上1.8倍、利益5倍などの実績を持つ。
1. M&A仲介手数料の相場
M&A仲介手数料は、M&Aアドバイザーへの報酬であり、M&Aプロセス全体をサポートしてくれた対価として支払われます。その金額は、ディールサイズ(買収金額)、M&Aの複雑さ、そして仲介会社のポリシーによって大きく変動します。相場を理解し、適切な手数料交渉を行うことが、M&Aを成功させるための重要なポイントです。
1.1 一般的な手数料体系M&A仲介手数料は、一般的に以下の3つの体系を組み合わせた形で設定されます。
レーマン方式:ディールサイズに応じて段階的に手数料率が変化する方式です。小規模なM&Aほど手数料率が高く、大規模になるほど低くなる傾向があります。最も一般的な手数料体系です。
成功報酬:M&Aが成立した場合のみ支払われる報酬です。ディールサイズに一定の料率を乗じて算出されます。
着手金(リテーナー):M&A仲介会社に依頼する際に支払う初期費用です。M&Aが成立しなくても支払う必要があります。着手金は、M&A仲介会社が初期段階で費やす調査費用や人件費などに充てられます。
M&A仲介手数料の料率は、ディールサイズによって大きく変動します。一般的には、以下の表のような目安があります。
ディールサイズ | 手数料率の目安 |
---|---|
1億円未満 | 5%~10% |
1億円~10億円 | 3%~7% |
10億円~100億円 | 2%~5% |
100億円以上 | 1%~3% |
ただし、これはあくまで目安であり、M&Aの複雑さや業種、仲介会社のポリシーなどによって変動する可能性があります。例えば、事業承継を目的とした小規模M&Aや、複雑な法的課題を伴うクロスボーダーM&Aなどは、手数料率が高くなる傾向があります。
【関連】事業売却のアドバイザー費用・手数料を徹底比較!最適な専門家を見つける1.3 規模や業種による手数料の違い
M&Aの規模が大きくなるほど、手数料率は低くなる傾向があります。これは、大規模M&Aでは、ディールサイズが大きいため、低い手数料率でもM&A仲介会社にとって十分な報酬が得られるためです。
また、業種によっても手数料率は異なり、例えば、IT業界やバイオテクノロジー業界など、専門知識が必要な業種では、手数料率が高くなる傾向があります。これは、専門性の高い人材を確保するために、より高いコストがかかるためです。また、競争の激しい業界では、M&Aの成立が難しいため、手数料率が高くなることもあります。
さらに、M&Aの形態によっても手数料が異なる場合があります。例えば、株式譲渡、事業譲渡、合併など、それぞれの手続きの複雑さや必要な作業量によって手数料が変動する可能性があります。
また、M&Aアドバイザーが提供するサービスの範囲によっても手数料が異なる場合があります。例えば、財務デューデリジェンスやバリュエーション、交渉支援、契約書作成支援など、提供されるサービスの範囲が広ければ広いほど、手数料が高くなる傾向があります。
2. M&A仲介手数料の交渉方法
M&A仲介手数料は、M&Aプロセスにおける重要な要素の一つです。高額になりがちな手数料を適切な金額に抑えるためには、M&A仲介会社との交渉が不可欠です。この章では、M&A仲介手数料の交渉を成功させるためのポイント、注意点、そしてM&A仲介会社との良好な関係構築について解説します。
2.1 交渉のポイントM&A仲介手数料の交渉を有利に進めるためには、以下のポイントを押さえることが重要です。
- 相場を把握する:M&A仲介手数料には、レーマン方式や成功報酬型など様々な体系があります。事前に相場や各体系のメリット・デメリットを理解し、自社のM&A案件に最適な手数料体系を選択しましょう。例えば、日本M&Aセンターやストライクなどの大手M&A仲介会社のウェブサイトや、業界団体である日本投資銀行協会の資料などを参考にすると良いでしょう。
- 複数の仲介会社を比較する:複数のM&A仲介会社から提案を受け、手数料やサービス内容を比較検討することで、交渉力を高めることができます。各社の得意分野や実績も考慮に入れ、自社のニーズに合った仲介会社を選びましょう。
- 早期に交渉を開始する:M&A仲介契約を締結する前に、手数料についてしっかりと交渉することが大切です。契約締結後では交渉が難しくなるため、早期に交渉を開始し、希望する手数料を明確に伝えましょう。
- 明確な根拠を示す:単に手数料の減額を要求するのではなく、なぜその金額が適切だと考えるのか、明確な根拠を示すことが重要です。例えば、類似案件の手数料や、自社の財務状況などを根拠として提示することで、交渉がスムーズに進みます。
- Win-Winの関係を目指す:M&A仲介会社との関係は、M&A成立後も継続することがあります。そのため、一方的に有利な条件を押し付けるのではなく、双方にとってメリットのあるWin-Winの関係を築くことを意識しましょう。
2.2 交渉における注意点
M&A仲介手数料の交渉においては、以下の注意点に留意する必要があります。
- 極端な値引き要求は避ける:M&A仲介会社にも適切な利益が必要です。極端な値引き要求は、M&A仲介会社のモチベーション低下につながり、結果としてM&Aの成功に悪影響を及ぼす可能性があります。
- 契約内容を詳細に確認する:手数料の算定方法や支払時期、成功報酬の定義など、契約内容を詳細に確認し、不明点があれば必ず質問しましょう。契約書に曖昧な表現がある場合は、修正を求めることも重要です。
- 顧問弁護士や会計士に相談する:M&A仲介契約は複雑な内容を含むため、専門家である顧問弁護士や会計士に相談することをお勧めします。専門家のアドバイスを受けることで、不利な契約を結ぶリスクを軽減できます。
M&A仲介会社との良好な関係は、M&Aを成功させるための重要な要素です。良好な関係を築くためには、以下の点を意識しましょう。
- オープンなコミュニケーション:M&Aに関する情報を積極的に開示し、M&A仲介会社と密にコミュニケーションを取りましょう。情報の共有がスムーズに行われることで、M&Aプロセスが円滑に進みます。
- 相互理解:M&A仲介会社の役割や業務内容を理解し、敬意を持って接しましょう。M&A仲介会社も、自社の事業内容やM&Aの目的を理解することで、より適切なサポートを提供できます。
- 信頼関係の構築:M&A仲介会社を単なる仲介業者としてではなく、M&Aを成功させるためのパートナーとして捉え、信頼関係を築くことが重要です。信頼関係が構築されることで、より効果的な交渉やM&Aプロセス全体の成功につながります。
ポイント | 内容 |
---|---|
情報収集 | M&A仲介会社の料金体系、実績、評判を調査する |
比較検討 | 複数のM&A仲介会社から提案を受け、比較検討する |
明確な目標設定 | 希望する手数料と、その根拠を明確にする |
誠実な交渉 | M&A仲介会社との信頼関係を損なわないように、誠実に交渉する |
3. M&A仲介手数料に関するよくある落とし穴
M&A仲介手数料は、M&Aプロセスにおいて重要な要素であり、その金額や支払い方法については慎重に検討する必要があります。しかし、手数料に関する認識の不足や契約内容の不理解から、予期せぬトラブルに発展するケースも少なくありません。M&A仲介手数料に関するよくある落とし穴を理解し、未然に防ぐための対策を講じることが重要です。
3.1 着手金に関するトラブル着手金は、M&A仲介会社に支払う初期費用であり、契約締結時に支払うケースが一般的です。着手金に関するトラブルとしては、以下の点が挙げられます。
- 高額な着手金:着手金がM&A全体の費用に占める割合が大きすぎる場合、M&Aが成立しなかった場合のリスクが高まります。
- 着手金の返還条件の曖昧さ:M&Aが不成立となった場合の着手金の返還条件が明確に定められていない場合、返還交渉が難航する可能性があります。
- 着手金に含まれるサービスの不明確さ:着手金でどのようなサービスが提供されるのかが明確にされていない場合、後々追加費用が発生する可能性があります。
3.2 成功報酬の定義の曖昧さ
成功報酬は、M&Aが成立した場合に支払う報酬です。成功報酬に関するトラブルとしては、以下の点が挙げられます。
- 成功報酬の算定基準の曖昧さ:「成功」の定義が曖昧な場合、M&Aが成立したにも関わらず、成功報酬の支払いを巡って紛争が生じる可能性があります。
- 成功報酬の料率の高さ:成功報酬の料率が高すぎる場合、M&A成立後の資金繰りに影響を与える可能性があります。
- 成功報酬の支払時期の曖昧さ:成功報酬の支払時期が明確に定められていない場合、支払いが遅延する可能性があります。
M&A仲介手数料以外にも、M&Aプロセスには様々な費用が発生します。追加費用に関するトラブルとしては、以下の点が挙げられます。
- デューデリジェンス費用:デューデリジェンス費用が当初の見積もりよりも高額になるケースがあります。財務デューデリジェンス、法務デューデリジェンス、事業デューデリジェンスなど、それぞれの範囲と費用を明確にする必要があります。
- 弁護士費用:M&A契約書の作成や交渉には弁護士費用が発生します。弁護士費用の見積もりを事前に確認し、予算に組み込んでおく必要があります。
- その他費用:M&Aプロセスには、交通費、宿泊費、資料作成費など、その他様々な費用が発生する可能性があります。これらの費用についても事前に確認し、予算に含めておくことが重要です。
費用項目 | 内容 | 注意点 |
---|---|---|
着手金 | M&A仲介契約締結時に支払う初期費用 | 金額、返還条件、サービス内容を確認 |
成功報酬 | M&A成立時に支払う報酬 | 成功の定義、料率、支払時期を確認 |
デューデリジェンス費用 | 対象企業の調査費用 | 範囲と費用を明確にする |
弁護士費用 | 契約書作成、交渉費用 | 事前に見積もりを確認 |
その他費用 | 交通費、宿泊費など | 事前に確認し予算に含める |
これらの落とし穴を避けるためには、M&A仲介会社との契約前に、手数料体系や成功報酬の定義、追加費用の有無などを詳細に確認することが重要です。また、複数のM&A仲介会社から見積もりを取り、比較検討することも有効な手段となります。不明な点があれば、専門家に相談し、適切なアドバイスを受けるようにしましょう。
【関連】事業売却プロセス|準備から成約までの流れと費用を徹底解説!4. M&A仲介手数料の落とし穴を回避する方法
M&A仲介手数料に関するトラブルは、事前の準備と適切な対応によって回避できるケースがほとんどです。M&Aのプロセスをスムーズに進め、不要なコストやリスクを避けるために、以下の方法を参考に、M&A仲介会社との良好な関係を築きながら、納得のいく取引を実現しましょう。
4.1 契約書を綿密に確認するM&A仲介契約書は、手数料に関するトラブルを未然に防ぐための重要なツールです。契約締結前に、契約内容を詳細に確認し、不明点があれば必ずM&A仲介会社に確認しましょう。
特に、手数料の算定方法、支払時期、成功報酬の定義、追加費用の有無などを明確に理解しておくことが重要です。また、契約書は専門用語が多く難解な場合もあるため、必要に応じて弁護士などの専門家に相談することも有効です。
- 手数料の算定方法(レーマン方式、IH方式など)
- 着手金の有無と金額、返還条件
- 中間金の有無と金額、支払条件
- 成功報酬の金額、支払時期、成功の定義(クロージングの完了、契約締結など)
- 追加費用の有無(デューデリジェンス費用、弁護士費用、税理士費用など)
- 契約解除に関する規定(違約金など)
- 秘密保持に関する規定
- 専任契約か非専任契約か
M&A仲介会社によって、手数料体系やサービス内容が異なります。複数のM&A仲介会社から提案を受け、比較検討することで、自社に最適なM&A仲介会社を選択することができます。比較する際には、手数料だけでなく、実績、専門性、対応力なども考慮しましょう。相見積もりを取ることで、手数料の交渉材料にもなります。
項目 | M&A仲介会社A | M&A仲介会社B | M&A仲介会社C |
---|---|---|---|
手数料体系 | レーマン方式 | IH方式 | 固定報酬 |
手数料率 | 〇% | 〇% | 〇〇万円 |
実績 | 〇〇件 | 〇〇件 | 〇〇件 |
専門分野 | IT業界 | 製造業 | 医療業界 |
M&Aは専門知識が必要な複雑な取引です。M&A仲介手数料に関する疑問や不安がある場合は、弁護士、公認会計士、税理士などの専門家に相談することで、適切なアドバイスを受けることができます。
専門家のサポートを受けることで、手数料の交渉を有利に進めたり、トラブルを未然に防いだりすることができます。特に、M&Aの経験が少ない場合は、専門家の活用を検討しましょう。
これらの方法を実践することで、M&A仲介手数料に関する落とし穴を回避し、スムーズかつ成功裡にM&Aを進めることができるでしょう。M&Aは企業の成長戦略において重要な役割を果たすため、慎重かつ計画的に進めることが重要です。
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M&A仲介手数料は、M&Aプロセスにおいて重要な要素です。手数料の相場は、一般的にレーマン方式や成功報酬型が採用され、ディールサイズや業種によって変動します。手数料交渉では、仲介会社との良好な関係構築を意識しつつ、契約内容を明確にすることが大切です。
着手金や成功報酬の定義、追加費用など、トラブルを避けるためにも契約書は綿密に確認しましょう。複数のM&A仲介会社を比較検討し、必要に応じて弁護士等の専門家に相談することで、よりスムーズで安全なM&Aを実現できるでしょう。