M&A仲介仲介なしで株式譲渡・事業譲渡は可能?

M&A仲介仲介なしで株式譲渡・事業譲渡は可能?

本ページの更新日について

公開日:2025年5月11日
最終更新日:2026年8月14日

M&A仲介会社を使わずに株式譲渡・事業譲渡を進めることは可能です。ただし、手数料だけでなく社内工数や法務・税務リスクまで含めて判断する必要があります。

1. M&A仲介を使わず株式譲渡・事業譲渡は可能か

M&A仲介会社の利用は法律上必須ではありません。売り手と買い手が直接交渉し、秘密保持契約、デューデリジェンス、最終契約、決済まで進められます。

特に、既存の取引先や親族、同業者など買い手候補が決まっている会社は、仲介なしで進めやすい傾向があります。一方、初めてのM&Aでは、弁護士や税理士を工程ごとに起用する方法が現実的です。

買い手探しと資料準備は自社、契約書は弁護士、企業価値評価と税務は税理士や公認会計士という分担が基本です。仲介会社を使わないことと、専門家を一切使わないことは同じではありません。

【文脈】M&A仲介会社を使わずに株式譲渡・事業譲渡を進める場合の全体像を示す図 1-1. 買い手候補がいる会社の直接交渉フロー

まず候補者と秘密保持契約を締結し、匿名化した会社概要や事業計画を提示します。関心が確認できた段階でトップ面談を行い、譲渡範囲、価格、経営体制を話し合います。

方向性が合えば、価格や独占交渉権を基本合意書に記載します。その後、財務・税務・法務などのデューデリジェンスを実施し、最終契約、株式または事業の引渡し、譲渡対価の決済へ進みます。

1-2. 自社対応と士業対応を工程別に分ける方法

買い手候補の整理、初期資料の作成、面談の日程調整は自社で対応できます。会社の強みや譲渡理由を経営者自身が整理すると、交渉時の説明にも一貫性が出ます。

一方、契約書の表明保証や補償条項は弁護士、企業価値評価や税金は税理士・公認会計士に確認を依頼します。許認可、労務、個人情報、知的財産は、それぞれの専門領域を扱える担当者に確認します。

1-3. 仲介なしで進める判断を分ける確認項目

次の項目を確認すると、支援体制を選びやすくなります。

  • 買い手候補がすでに存在するか

  • 許認可や契約承継が複雑か

  • 簿外債務、訴訟、未払残業代がないか

  • 従業員数と本業への影響がどの程度か

  • 経営者保証の解除が必要か

候補者が明確でリスクが少なければ仲介なし、交渉支援だけ必要ならFA、法務・税務だけなら士業、候補者探しから必要なら仲介フルサポートが選択肢です。

2. 株式譲渡と事業譲渡で変わる承継範囲

株式譲渡は株主が株式を売り、会社の経営権を移す方法です。事業譲渡は会社が特定の事業、資産、契約、人員などを選んで移す方法です。

項目

株式譲渡

事業譲渡

取引主体

株主と買い手

会社と買い手

承継範囲

会社全体

契約で特定した事業

対価の受け手

株主

会社

契約・雇用

原則継続

個別承諾や再契約が必要

許認可

原則維持

再取得が必要な場合がある

債務

原則として会社ごと承継

対象を選択可能

会社全体を引き継いで事業を止めたくない場合は株式譲渡、ノンコア事業だけを切り離したい場合は事業譲渡が基本です。ただし、許認可や簿外債務によって結論は変わります。

【文脈】株式譲渡と事業譲渡の承継範囲の違いを比較する図 2-1. 株式譲渡で会社の資産と債務を引き継ぐ範囲

株式譲渡では法人格が維持されます。そのため、会社名義の借入金、賃貸借契約、取引契約、設備、従業員との雇用関係、許認可は原則としてそのまま残ります。

反面、帳簿に表れていない簿外債務や過去の契約違反、税務問題も会社に残ります。買い手は会社を取得するため、売り手はデューデリジェンスで問題を正確に開示する必要があります。

2-2. 事業譲渡で個別承継が必要になる契約と人員

事業譲渡では、対象となる設備、在庫、顧客情報、知的財産、取引契約、賃貸借契約、従業員を契約書や別紙で特定します。対象外の資産や債務は、原則として売り手会社に残ります。

取引先との契約や従業員の雇用契約は、買い手との再契約や個別同意が必要になることがあります。契約の承諾が得られなければ、売上や人員が想定より減る可能性があります。

2-3. 許認可と競業避止義務を先に確認する理由

建設業、運送業、人材サービス、介護などでは、許認可が事業価値の中心になる場合があります。事業譲渡で自動承継されない許認可は、買い手が再取得できるかを契約前に確認します。

また、事業譲渡では競業避止義務が問題になります。譲渡後も同じ地域や分野で事業を続ける予定があるなら、期間や対象地域を契約で明確にし、取引先の承諾漏れによる営業停止も防ぎます。

3. 仲介手数料だけで決めないM&A総コスト

仲介手数料を削減しても、経営者や経理担当者の工数、資料作成、交渉の長期化、専門家報酬は発生します。本業が止まれば、手数料の差額を上回る機会損失になることもあります。

比較すべき支援体制は、仲介なし、FAのみ、士業のみ、仲介フルサポートの4パターンです。候補者の有無、案件規模、許認可、リスクの複雑さを基準に選びます。

支援体制

買い手探索

交渉

法務・税務

適するケース

仲介なし

自社

自社

必要時に依頼

候補者が明確

FAのみ

支援可能

片側を支援

別途専門家

交渉力を補いたい

士業のみ

自社

自社

専門的に確認

法務・税務が複雑

仲介

支援

全体調整

連携・紹介

候補者探しから必要

3-1. 仲介なし・FA・士業・仲介の役割比較

仲介会社は買い手探索から成約まで全体を調整し、FAは売り手または買い手の一方に立って助言します。弁護士は契約と法務、税理士や公認会計士は税務、財務、企業価値評価を担当します。

すでに買い手がいるなら、仲介機能を購入せず、FAや士業に限定して依頼できます。候補者がいない場合は、自社の営業網だけでなく、支援会社の探索力も含めて比較します。

3-2. 企業価値評価と価格交渉で見落とす調整項目

譲渡価格は、純資産、収益力、将来キャッシュフローなど複数の方法で検討します。単年度の利益だけで価格を決めると、設備更新や運転資金の不足を見落とします。

役員貸付金、過剰運転資金、有利子負債、未払残業代、老朽設備の更新費用は、価格調整の対象になり得ます。価格だけでなく、支払時期や経営者保証の解除条件も比較します。

3-3. デューデリジェンスで確認する簿外債務と労務

調査範囲は、財務、税務、法務、労務、事業の5分野です。未払税金、保証債務、契約違反、訴訟、未払残業代は、株式譲渡で特に見落とせない項目です。

さらに、個人情報の管理、知的財産の帰属、主要顧客への依存度も確認します。問題を隠すより、早期に開示して価格や補償条件へ反映する方が、契約後の紛争を抑えられます。

4. 契約締結から税務処理までの実行管理

基本合意後は、デューデリジェンスの結果を踏まえて最終条件を決めます。最終契約では、譲渡対象、対価、前提条件、表明保証、補償、解除条件、クロージング日を具体化します。

クロージングでは、株式や資産の引渡し、株主名簿の更新、代金決済、契約や従業員の移管を実行します。完了後は、会計処理、税務申告、許認可の届出、社内外への説明を管理します。

【文脈】基本合意からクロージング 4-1. 株式譲渡契約書で確認する表明保証と補償

株式の所有、財務諸表、税務申告、訴訟、労務、許認可、反社会的勢力の排除を表明保証の対象にします。違反時の補償範囲、上限、請求期間、解除条件も確認します。

経営者保証の解除、役員退任、引継ぎ期間、クロージング条件は、口頭でなく契約書に記載します。保証解除には買い手や金融機関の協力が必要になる場合があります。

4-2. 事業譲渡契約書で特定する資産と承継債務

譲渡対象の資産、在庫、契約、知的財産、顧客情報、従業員、承継する債務を別紙で特定します。曖昧な「関連資産一式」という表現は、引渡し後の争いにつながります。

対価、引渡日、許認可取得、取引先同意、従業員の同意、競業避止義務も確認します。重要契約の承諾をクロージングの前提条件にする設計も有効です。

4-3. 株式譲渡と事業譲渡の税金と消費税処理

株式譲渡では、個人株主が受け取る譲渡対価について譲渡所得課税が問題になります。事業譲渡では、売り手会社の譲渡損益に法人税がかかり、対価は会社に入ります。

事業譲渡では、建物、機械、在庫、のれんなどの課税資産に消費税が生じる場合があります。土地や有価証券など扱いが異なる資産もあるため、法人・個人の別と資産内容を税理士に確認します。

5. 情報漏えいと本業停滞を防ぐ社内運用

仲介会社を使わない場合、候補者への連絡を社長が行い、資料を経理担当者が集める体制になりがちです。管理が甘いと、顧客名簿や価格表が外部に流れ、従業員が先にM&Aを知る事態が起きます。

例えば、製造業の社長が複数の面談に時間を使い、月次決算が遅れた結果、買い手から業績悪化を指摘されるケースがあります。M&Aは本業という車を走らせながら、別の車を組み立てる作業です。

5-1. 秘密保持契約と情報開示ルールの設計方法

情報開示の前に秘密保持契約を締結し、候補者ごとに開示範囲と閲覧権限を決めます。最初は匿名化した概要資料、次に決算書、最後に顧客名簿や技術資料という段階開示が基本です。

個人情報、顧客名簿、価格表、設計図、営業秘密は一括提供しません。誰が、いつ、どの資料を渡したかを一覧にし、交渉が中止になった場合の返却・廃棄も確認します。

5-2. 従業員と取引先への説明時期を誤る失敗例

契約前に従業員全員へ説明すると、退職や取引先の離反を招く可能性があります。情報を限定する必要がある一方、事業譲渡で雇用契約の個別同意が必要な場合は、説明を遅らせすぎても手続きが止まります。

説明時期と対象者は、基本合意、最終契約、クロージングの段階ごとに設計します。従業員の処遇、勤務地、給与、役職、買い手の経営方針を事実に基づいて伝えます。

5-3. 本業の工数を抑えるプロジェクト管理表

経営者、経理担当、現場責任者、弁護士、税理士の役割を分け、資料、期限、承認者、未解決リスクを一覧化します。交渉記録は議事録に残し、口頭合意を契約条件と混同しないようにします。

社内工数は、資料作成時間だけでなく、通常業務の遅延や会議時間も含めて見積もります。週1回など定例会議を設定し、重要案件だけを経営者が承認すると本業への影響を抑えられます。

6. M&A仲介なしの株式譲渡・事業譲渡FAQ 6-1. M&A仲介なしでも契約書を自社作成できますか

自社でたたき台を作ることは可能です。ただし、表明保証、補償上限、解除条件、競業避止、個人保証は将来の損失に直結するため、弁護士の確認が必要になりやすい領域です。

6-2. 買い手候補が一社だけでも価格交渉できますか

可能です。純資産、収益力、将来キャッシュフローを使って複数の評価を行い、譲渡範囲、支払条件、役員退任、保証・補償を分けて交渉します。一社だけだからと相場だけで決めるのは危険です。

6-3. 仲介なしなら専門家費用はどこまで抑えられますか

仲介手数料は抑えられますが、法務、税務、財務、登記、許認可の費用は別途発生します。費用をゼロにするより、重大リスクが集中する契約書、税務、デューデリジェンスに限定して依頼する方が安全です。

7. おすすめ商品: 手取りを重視するならM&A PMI AGENTの特徴と選び方

仲介なしを検討していても、最終的な手取り額と支援コストを比較したい場合は、手取りを重視するならM&A PMI AGENTが選択肢になります。

特徴は、売却価格だけでなく「仲介手数料・税金・実費・引継ぎ条件を踏まえた手取り額」を整理できる点です。初回相談、着手金、中間金が無料で、最低報酬は500万円〜とされています。

他社の手数料、最低報酬、成功報酬の計算方法、テール条項などを、仲介契約前に比較できます。買い手候補への打診から条件交渉、DD、最終契約、クロージングまで支援範囲を確認できるため、自社対応との境界を決める材料になります。

仲介なし、士業のみ、仲介利用のどれが適切か迷う場合は、料金だけでなく、税金や引継ぎ条件を差し引いた手取り額で比較します。具体的な条件は案件内容、譲渡スキーム、契約条件によって異なるため、相談時に確認してください。

8. まとめ

M&A仲介会社を使わずに株式譲渡・事業譲渡を実行することは可能です。買い手候補が明確なら自社主導で進めやすい一方、契約、税務、許認可、簿外債務は専門家の確認が必要です。

まずは株式譲渡か事業譲渡かを、承継範囲、対価の受け手、契約、許認可、債務で比較します。そのうえで、仲介なし・FA・士業・仲介の総コストを並べ、次に必要な資料と専門家を決めてください。

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編集者の紹介

日下部 興靖

株式会社M&A PMI AGENT

代表取締役 日下部 興靖

上場企業のグループ会社の取締役を4社経験。M&A・PMI業務・経営再建業務などを10年経験し、多くの企業の業績改善を行ったM&A・PMIの専門家。3か月の経営支援にて期首予算比で売上1.8倍、利益5倍などの実績を持つ。

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