M&A仲介会社のバイサイドアドバイザー|実力を見極める5つのポイント
M&Aを成功させるためには、適切なバイサイドアドバイザー選びが不可欠です。しかし、多くの企業にとってM&Aは初めての経験であり、どのアドバイザーを選べば良いのか判断に迷うことも多いでしょう。
この記事では、M&A仲介会社のバイサイドアドバイザーの役割を解説し、実績や専門性、コミュニケーション能力など、実力を見極めるための5つのポイントを具体的に紹介します。さらに、よくある選定ミスや、優良なアドバイザーを見つけるためのステップも解説。
この記事を読むことで、M&Aを成功に導く最適なバイサイドアドバイザー選びのノウハウが理解でき、企業価値向上に繋がるM&Aを実現できるでしょう。
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編集者の紹介
株式会社M&A PMI AGENT
代表取締役 日下部 興靖
上場企業のグループ会社の取締役を4社経験。M&A・PMI業務・経営再建業務などを10年経験し、多くの企業の業績改善を行ったM&A・PMIの専門家。3か月の経営支援にて期首予算比で売上1.8倍、利益5倍などの実績を持つ。
1. M&A仲介におけるバイサイドアドバイザーの役割
M&A仲介において、バイサイドアドバイザーは買収希望企業(バイサイド)側に立ち、M&Aプロセス全体をサポートする専門家です。その役割は多岐に渡り、単なる仲介にとどまらず、戦略策定からクロージングまで、M&Aを成功に導くための重要な役割を担います。具体的には、以下の業務を遂行します。
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バイサイドアドバイザーは、まずクライアントの経営戦略や事業計画を理解し、M&Aの目的や目標を明確化します。その上で、最適なM&A戦略を策定し、ターゲット企業の選定や買収価格の検討などを支援します。市場分析や競合分析、業界動向調査なども行い、クライアントのM&A戦略を多角的にサポートします。
1.2 ターゲット企業の探索・選定クライアントのM&A戦略に基づき、適切なターゲット企業の探索・選定を行います。独自のネットワークやデータベースを活用し、非公開企業の情報も入手しながら、クライアントのニーズに合致する候補企業を絞り込みます。財務状況や事業内容、将来性などを分析し、最適なターゲット企業を選定します。
1.3 M&A交渉・条件調整ターゲット企業との交渉において、バイサイドアドバイザーはクライアントの代理人として、最適な条件での取引成立を目指します。買収価格や契約内容など、複雑な交渉を有利に進めるための専門知識や経験が不可欠です。また、売主側アドバイザーとの交渉も担当し、円滑なM&Aプロセスを実現します。
1.4 デューデリジェンスの実施ターゲット企業の財務状況、法務状況、事業状況などを詳細に調査するデューデリジェンスも、バイサイドアドバイザーの重要な役割です。財務デューデリジェンスでは、会計帳簿や財務諸表などを精査し、企業価値を評価します。
法務デューデリジェンスでは、契約書や許認可などを確認し、法的なリスクを洗い出します。事業デューデリジェンスでは、事業計画や市場環境などを分析し、将来性を評価します。これらのデューデリジェンス結果に基づき、最終的な買収価格や契約条件を決定します。
M&A契約の締結、資金決済、事業統合など、クロージングに至るまで、バイサイドアドバイザーはクライアントをサポートします。関係各所との調整や手続きをスムーズに進め、M&Aを成功裏に完了させます。
1.6 PMI(Post Merger Integration)支援M&A成立後、買収企業とターゲット企業の統合プロセスであるPMIにおいても、バイサイドアドバイザーは支援を提供することがあります。組織統合、人事制度統合、システム統合など、PMIをスムーズに進めるためのアドバイスやサポートを行います。文化の違いや従業員の不安など、PMIにおける課題解決を支援することで、M&Aのシナジー効果最大化に貢献します。
役割 | 詳細 |
---|---|
M&A戦略策定支援 | クライアントの事業戦略に基づき、M&Aの目的・目標を明確化し、最適な戦略を策定 |
ターゲット企業の探索・選定 | データベースやネットワークを活用し、クライアントのニーズに合致する企業を選定 |
M&A交渉・条件調整 | クライアントの代理人として、売主側と交渉を行い、最適な条件での取引成立を目指す |
デューデリジェンスの実施 | ターゲット企業の財務、法務、事業状況を調査し、リスクを洗い出す |
クロージング | M&A契約の締結、資金決済、事業統合など、クロージングに至るまでをサポート |
PMI支援 | M&A成立後の統合プロセスを支援し、シナジー効果の最大化を図る |
2. バイサイドアドバイザーの実力を見極める5つのポイント
M&Aバイサイドアドバイザーを選ぶことは、M&Aの成否を大きく左右する重要な決定です。適切なアドバイザーを選ぶことで、スムーズな取引の実現、有利な条件の獲得、潜在的なリスクの回避が可能になります。
逆に、不適切なアドバイザーを選んでしまうと、時間とコストの浪費、取引の失敗につながる可能性があります。そのため、バイサイドアドバイザーの実力を見極めるためのポイントを理解しておくことが重要です。
2.1 実績と経験
M&Aアドバイザーの実績と経験は、その能力を測る重要な指標となります。過去のM&A成約実績や、担当してきた業界・規模などを確認することで、アドバイザーの得意分野や専門性を把握することができます。
2.1.1 M&A成約件数単純な成約件数だけでなく、成約規模や業界、取引の種類(株式譲渡、事業譲渡、合併など)も確認しましょう。数多くのM&A成約実績を持つアドバイザーは、様々な状況に対応できる経験とノウハウを蓄積している可能性が高いです。
2.1.2 M&Aの専門性M&Aには、IT、医療、製造業など、様々な業界の専門知識が必要です。貴社の事業内容に精通した経験を持つアドバイザーを選ぶことで、より的確なアドバイスを受けることができます。例えば、IT企業のM&Aを検討している場合は、IT業界に特化したM&A実績を持つアドバイザーを選ぶことが重要です。
2.2 専門知識とスキルM&Aプロセスには、財務、法務、税務など、幅広い専門知識とスキルが求められます。アドバイザーがこれらの分野に精通しているかを確認することで、M&Aを成功に導くためのサポートが期待できるか判断できます。
2.2.1 財務デューデリジェンス財務デューデリジェンスは、買収対象企業の財務状況を詳細に調査するプロセスです。アドバイザーは、財務諸表の分析、収益性やキャッシュフローの評価、潜在的なリスクの特定などを行う必要があります。経験豊富なアドバイザーは、隠れたリスクを発見し、適切なバリュエーションを行うことができます。
2.2.2 法務デューデリジェンス法務デューデリジェンスは、買収対象企業の法的リスクを調査するプロセスです。アドバイザーは、契約書の確認、許認可の確認、訴訟リスクの評価などを行う必要があります。法務デューデリジェンスを適切に行うことで、将来的なトラブルを未然に防ぐことができます。
【関連】事業売却のデューデリジェンス完全攻略ガイド!成功の秘訣と失敗事例2.3 ネットワークと情報力
M&A市場における豊富なネットワークと情報力は、優良な買収対象企業の発掘や、有利な条件での交渉に役立ちます。アドバイザーが持つネットワークや情報収集能力について確認しましょう。
例えば、非公開企業の情報や、業界の動向に関する情報など、一般には公開されていない情報をどれだけ持っているかは重要なポイントです。また、金融機関、弁護士、会計士など、他の専門家とのネットワークも、M&Aプロセスをスムーズに進める上で重要となります。
2.4 コミュニケーション能力M&Aプロセスでは、売主、買主、アドバイザーなど、様々な関係者との円滑なコミュニケーションが不可欠です。アドバイザーのコミュニケーション能力は、交渉の成否を左右する重要な要素となります。交渉力、説明能力、傾聴力などを確認しましょう。
例えば、複雑なM&Aのスキームを分かりやすく説明できるか、売主との交渉を有利に進めることができるか、クライアントのニーズを的確に理解し、適切なアドバイスを提供できるか、などが重要なポイントとなります。
2.5 料金体系の透明性M&Aアドバイザーの料金体系は、成功報酬型、時間報酬型、レティナー型など、様々です。料金体系の透明性が高く、事前に明確な説明があるアドバイザーを選ぶことが重要です。また、料金体系だけでなく、どのようなサービスが含まれているのかを確認することも重要です。
料金体系 | 説明 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
成功報酬型 | M&Aが成立した場合にのみ報酬が発生する | 成功へのインセンティブが高い | 成立しない場合は報酬が発生しないため、アドバイザーが消極的になる可能性がある |
時間報酬型 | 作業時間に応じて報酬が発生する | 費用の予測が容易 | 時間稼ぎされる可能性がある |
レティナー型 | 毎月一定額の報酬を支払う | 継続的なサポートを受けられる | M&Aが成立しなくても費用が発生する |
上記の表を参考に、それぞれのメリット・デメリットを理解し、自社に最適な料金体系を選択しましょう。
3. M&A仲介会社バイサイドアドバイザー選びでよくある間違いM&A仲介会社を選ぶ際、バイサイドアドバイザー選びでいくつかのよくある間違いがあります。これらの間違いを避けることで、M&Aプロセスをスムーズに進め、成功に導く可能性を高めることができます。
3.1 実績だけで判断するM&Aの成約実績が多いことは確かに重要な要素ですが、実績だけで判断するのは危険です。成約件数だけでなく、M&Aの規模や業種、成約に至った背景なども考慮する必要があります。例えば、大規模なM&Aの経験が豊富でも、中小企業のM&Aには対応できない場合もあります。自社のニーズに合った実績を持つアドバイザーを選ぶことが重要です。
3.1.1 規模だけで判断する大手M&A仲介会社だからといって、必ずしも自社にとって最適とは限りません。大手はリソースが豊富で幅広い案件に対応できますが、中小企業のM&Aには費用対効果の面で合わない場合もあります。逆に、中小のM&A仲介会社は特定の業種に特化していたり、小規模M&Aに強みを持っている場合もあります。自社の規模やニーズに合った規模のアドバイザーを選ぶことが大切です。
3.1.2 手数料の安さだけで判断する手数料の安さだけでM&A仲介会社を選ぶのは避けるべきです。手数料が安い場合は、提供されるサービスの質が低い、もしくは隠れた費用が発生する可能性があります。M&Aは企業の将来を左右する重要な取引です。
手数料だけでなく、提供されるサービスの内容や質、アドバイザーの経験や専門性などを総合的に判断する必要があります。安かろう悪かろうにならないよう注意が必要です。
M&Aプロセスは、企業にとって非常に重要なプロセスです。そのため、バイサイドアドバイザーとの密なコミュニケーションが不可欠です。M&Aの進捗状況や課題、今後の見通しなどを共有し、迅速かつ適切な意思決定を行う必要があります。コミュニケーション不足は、M&Aプロセスの遅延や失敗につながる可能性があります。
3.2.1 報告頻度が少ないM&Aの進捗状況を定期的に報告してもらうことは非常に重要です。報告頻度が少ないと、問題が発生した場合に迅速な対応が難しくなります。また、M&Aプロセス全体の見通しが立ちにくくなり、不安につながる可能性があります。契約前に、報告頻度や報告内容について明確に確認しておきましょう。
3.2.2 質問しづらい雰囲気M&Aに関する疑問や不安は、遠慮なくバイサイドアドバイザーに質問することが重要です。質問しづらい雰囲気だと、必要な情報が得られず、誤解や認識のずれが生じる可能性があります。信頼関係を築き、オープンにコミュニケーションできるアドバイザーを選ぶことが大切です。
3.3 契約内容の確認不足M&A仲介契約を締結する前に、契約内容をしっかりと確認することが重要です。契約内容に不明点や疑問点がある場合は、バイサイドアドバイザーに確認し、納得した上で契約を締結しましょう。契約内容を理解しないまま契約を締結すると、後々トラブルになる可能性があります。
【関連】M&Aアドバイザーの選び方|中小企業経営者が知っておくべきポイント3.3.1 成功報酬の条件
M&A仲介会社に支払う成功報酬の条件は、契約前に明確に確認しておく必要があります。成功報酬の算定方法や支払時期、M&Aが不成立になった場合の取り扱いなどを事前に確認し、契約書に明記しておくことが重要です。後々のトラブルを避けるためにも、曖昧な表現は避け、具体的な内容を記載するようにしましょう。
3.3.2 中途解約の条件M&Aプロセスが長期化する、またはM&Aを中止せざるを得ない状況になった場合に備え、中途解約の条件についても確認しておく必要があります。中途解約する場合の手数料や手続き、違約金などについて、契約前に確認し、契約書に明記しておくことが重要です。
3.4 デューデリジェンスの軽視デューデリジェンスは、M&Aにおける重要なプロセスです。対象企業の財務状況、法務状況、事業状況などを詳細に調査することで、M&Aのリスクを把握し、適切な価格での取引を実現することができます。デューデリジェンスを軽視すると、M&A後に予期せぬ問題が発生し、損失を被る可能性があります。
デューデリジェンスの種類 | 内容 |
---|---|
財務デューデリジェンス | 対象企業の財務状況、収益性、資産価値などを調査 |
法務デューデリジェンス | 対象企業の法令遵守状況、契約関係、訴訟リスクなどを調査 |
事業デューデリジェンス | 対象企業の事業内容、競争環境、将来性などを調査 |
これらのよくある間違いを避けるためには、複数のM&A仲介会社を比較検討し、自社のニーズに合ったバイサイドアドバイザーを選ぶことが重要です。実績や手数料だけでなく、コミュニケーション能力や専門性、そして信頼できるパートナーであるかどうかも考慮に入れて、慎重に選定しましょう。
4. 優良なM&A仲介 バイサイドアドバイザーを見つけるための3つのステップM&A仲介会社のバイサイドアドバイザー選びは、M&Aの成否を大きく左右する重要なプロセスです。適切なアドバイザーを選ぶことで、M&Aをスムーズに進め、企業価値の最大化を実現できる可能性が高まります。以下の3つのステップを踏むことで、優良なバイサイドアドバイザーを見つけることができます。
4.1 ステップ1:ニーズの明確化と候補の選定まずは、自社のM&Aにおけるニーズを明確にしましょう。買収対象の規模や業種、M&Aの目的(事業拡大、事業承継など)、予算などを具体的に定めることが重要です。ニーズが明確になったら、複数のM&A仲介会社を候補としてリストアップします。インターネット検索や業界団体、金融機関からの紹介などを活用して情報収集を行いましょう。
4.1.1 M&Aの目的の明確化M&Aの目的を明確にすることで、アドバイザーに求める役割や専門性も明確になります。例えば、事業拡大のためのM&Aであれば、市場分析や成長戦略に精通したアドバイザーが適任です。事業承継の場合は、後継者育成や株主との交渉に長けたアドバイザーが必要となるでしょう。目的を明確にすることで、アドバイザーとのミスマッチを防ぐことができます。
4.1.2 候補選定のポイント- M&A成約実績:実績数だけでなく、成約したM&Aの規模や業種にも注目しましょう。
- 専門性:自社のニーズに合致する専門性を持つアドバイザーを選びましょう。例えば、IT企業のM&Aであれば、IT業界に精通したアドバイザーが望ましいです。
- 企業規模:大手M&A仲介会社は豊富なリソースを持つ一方、中小企業に特化したM&A仲介会社は、きめ細やかな対応が期待できます。
- インターネット検索:キーワード検索でM&A仲介会社を検索できます。
- 業界団体:各業界の団体に問い合わせることで、M&A仲介会社を紹介してもらえる場合があります。
- 金融機関:取引のある銀行や証券会社に相談してみるのも良いでしょう。
- M&Aアドバイザリー専門のポータルサイト:実績や専門分野などで絞り込んで検索できます。
候補を絞り込んだら、各社と面談を行い、具体的な提案内容や料金体系、担当者の対応などを比較評価します。面談では、自社のニーズや課題を明確に伝え、アドバイザーからの提案内容をじっくりと聞きましょう。実績や専門知識だけでなく、コミュニケーション能力や相性も重要な選定基準となります。
4.2.1 面談での確認ポイント項目 | 内容 |
---|---|
実績と経験 | 具体的なM&A成約事例、類似案件の経験、実績データの提示 |
専門知識とスキル | 財務・法務・税務デューデリジェンスの expertise、業界知識、PMI支援のノウハウ |
ネットワークと情報力 | 潜在的な買収候補の情報網、業界ネットワーク、金融機関との連携 |
コミュニケーション能力 | 質問への的確な回答、説明の分かりやすさ、誠実な対応 |
料金体系の透明性 | 料金体系の内訳、成功報酬の基準、追加費用の有無 |
企業文化との適合性 | アドバイザーの企業理念、仕事の進め方、社風 |
最終的にバイサイドアドバイザーを選定したら、契約を締結します。契約内容をしっかりと確認し、不明点があれば解消しておきましょう。契約締結後も、アドバイザーと密にコミュニケーションを取り、M&Aのプロセスを円滑に進めることが重要です。
信頼関係を構築することで、より良い結果が期待できます。契約内容には、料金体系、業務範囲、守秘義務、契約期間などが含まれます。これらの項目を事前に確認し、納得した上で契約を締結しましょう。
これらのステップを踏むことで、自社に最適なM&A仲介会社のバイサイドアドバイザーを見つけ、M&Aを成功に導くことができるでしょう。時間をかけて慎重に進めることが重要です。
【関連】M&A仲介のセルサイドアドバイザー選びの完全ガイド5. まとめ
M&A仲介会社のバイサイドアドバイザー選びは、企業の未来を左右する重要な決断です。この記事では、アドバイザーの実力を見極めるための5つのポイント、すなわち「実績と経験」「専門知識とスキル」「ネットワークと情報力」「コミュニケーション能力」「料金体系の透明性」を解説しました。
成約件数や専門性だけでなく、デューデリジェンス能力、情報収集力、そして円滑なコミュニケーションも不可欠です。これらのポイントを踏まえ、信頼できるアドバイザーを見つけることで、M&Aを成功に導く可能性を高められます。優良なアドバイザー選びのために、この記事で紹介した3つのステップを参考に、自社に最適なパートナーを見つけてください。