M&Aで株式売却するミニマムタックス税率と手取りを徹底解説

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公開日:2024年8月31日最終更新日:2026年8月19日
M&Aで自社株式を売却する場合、税率は原則20.315%です。ただし、2027年以降はミニマムタックスにより、譲渡益が約3.5億円から追加課税の対象となる可能性があります。
1. M&Aで株式を売却する際のミニマムタックス税率株式譲渡益には通常、所得税・復興特別所得税・住民税を合わせて20.315%がかかります。ミニマムタックスは、この通常税額が一定の最低負担額を下回る場合に、差額を所得税として追加納付する制度です。
現行制度は2025年分から適用され、2026年分までは「基準所得金額から3.3億円を控除した額×22.5%」が判定の基礎です。2027年分以降は、控除額が1.65億円、基準税率が30%となる見直しが予定されています。
そのため、単純に株式譲渡益だけがあるケースでは、現行制度の発動目安が約10億円であるのに対し、2027年以降は約3.4億円から約3.5億円へ下がります。売却額ではなく、取得費や譲渡費用を差し引いた譲渡益で判断する点が重要です。
1-1. 株式譲渡益にかかる20.315%の内訳個人が非上場株式を売却した場合、株式譲渡益は申告分離課税です。税率の内訳は、所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%で、合計20.315%となります。
給与所得や事業所得とは分けて計算します。ただし、ミニマムタックスの判定では、役員報酬、配当、不動産譲渡益などを含む基準所得金額が使われます。
1-2. 富裕層課税と1億円の壁が生んだ制度給与所得などには累進税率が適用される一方、株式譲渡益は金額にかかわらず原則20.315%です。高所得者ほど金融所得の割合が高くなり、所得全体に占める税負担率が下がる現象が「1億円の壁」と呼ばれてきました。
ミニマムタックスは、この負担率の低下を是正するための仕組みです。株式譲渡益を否定する制度ではなく、極めて高い基準所得金額に対して最低限の所得税負担を求めます。
1-3. 2026年と2027年以降の制度差項目 | 2026年分まで | 2027年分以降 |
|---|---|---|
特別控除額 | 3.3億円 | 1.65億円 |
基準税率 | 22.5% | 30% |
株式譲渡益のみの発動目安 | 約10億円 | 約3.4億円〜約3.5億円 |
改正後は控除額が半分になり、税率も上がります。したがって、同じ譲渡益でも2027年以降は追加課税額が大きくなる可能性があります。
2. 株式売却益から見るミニマムタックス発動ライン
ミニマムタックスの判定軸は売却額ではなく、株式譲渡益と他の所得を合算した基準所得金額です。自社株の取得費が小さい創業者は、売却価額の大部分が譲渡益になりやすいため、影響を受けやすくなります。
2-1. 売却額と譲渡益を分けて判定する方法譲渡所得は、次の式で計算します。
譲渡所得=譲渡価額-取得費-譲渡費用
取得費には設立時の出資額や増資払込額などが含まれます。譲渡費用には、株式売却のために直接支払ったM&A仲介手数料などが該当します。
例えば売却額が3億円でも、取得費と譲渡費用が合計5,000万円なら譲渡益は2億5,000万円です。反対に取得費が小さければ、売却額3億円に近い金額が基準所得金額へ反映されます。
2-2. 追加課税額を算出する計算式と対象所得ミニマムタックスは、次の2つを比較して計算します。
通常の基準所得税額
(基準所得金額−特別控除額)×基準税率
後者が基準所得税額を上回る場合、その差額が追加課税額です。2026年分までは特別控除額3.3億円、基準税率22.5%です。
2027年分以降は特別控除額1.65億円、基準税率30%となります。基準所得金額には株式譲渡益のほか、役員報酬、配当、不動産譲渡益なども含まれます。
申告不要制度を選択した上場株式の配当や譲渡所得も、判定上は含まれる場合があります。一方、NISA口座の非課税所得など、制度上除外される所得もあります。
2-3. 3億円から20億円までの手取り比較以下は、取得費と譲渡費用を差し引いた譲渡益がそのまま表の金額で、他の所得や所得控除を考慮しない参考例です。通常税額は20.315%で計算しています。
譲渡益 | 通常税額 | 2026年までの追加課税 | 2027年以降の追加課税 | 2027年以降の概算手取り |
|---|---|---|---|---|
3億円 | 約6,095万円 | なし | なし | 約2億3,905万円 |
3.5億円 | 約7,110万円 | なし | 概算約165万円 | 約2億7,335万円 |
5億円 | 約1億158万円 | なし | 概算約2,894万円 | 約3億8,370万円 |
10億円 | 約2億315万円 | なし | 概算約9,735万円 | 約6億9,950万円 |
20億円 | 約4億630万円 | 概算約1,000万円前後 | 概算約2億4,735万円 | 約13億4,635万円 |
表は単純化した試算であり、実際は基準所得税額、所得控除、配当、他の譲渡益などで変動します。特に3.5億円前後は、役員報酬や仲介手数料の有無で結果が変わりやすい水準です。
なお、追加課税は譲渡益全体に30%を掛け直す仕組みではありません。通常税額との差額を追加するため、通常税額と基準税額を別々に計算する必要があります。
3. クロージング日で変わるM&A株式売却の税率
2026年分と2027年分のどちらに譲渡所得が帰属するかで、ミニマムタックスの計算条件が変わります。年末をまたぐM&Aでは、契約日だけでなく、株式の引渡し、決済、効力発生日を確認しなければなりません。
3-1. 契約日と株式引渡し日の年分判定株式譲渡契約を2026年中に締結しても、株式の引渡しや決済が2027年になる場合があります。この場合、契約書の条件や取引の実態を確認し、どの年分に譲渡所得が帰属するかを判定します。
一般には株式の引渡し日を基準とする考え方が重要ですが、契約の効力発生日を基準に申告する扱いが認められる場合もあります。日付だけを先に決めるのではなく、税理士が契約書とクロージング資料を確認する必要があります。
3-2. 2026年中の完了と翌年以降の差額完了時期 | 適用される計算条件 | 単純ケースの目安 |
|---|---|---|
2026年中 | 3.3億円控除・22.5% | 追加課税は約10億円超から生じ得る |
2027年以降 | 1.65億円控除・30% | 約3.4億円〜約3.5億円から生じ得る |
同じ譲渡益でも、適用年度によって追加課税額が数千万円から億単位で変わる可能性があります。ただし、売却時期を税率だけで決めると、企業価値、買い手の事情、引継ぎ条件を損なうことがあります。
3-3. 共同創業者や複数株主の個人別判定ミニマムタックスは会社全体の売却額ではなく、個人ごとに判定します。共同創業者Aが株式の50%、Bが20%、投資家が30%を保有する場合、それぞれの譲渡価額、取得費、譲渡費用を分けて計算します。
各株主の役員報酬や配当も異なるため、同じM&Aに参加しても追加課税の有無は一致しません。スタートアップでは、株式の種類、ストックオプション、親族保有分も含めた株主別の一覧表を作成します。
4. 手取りを左右する株式売却スキームと税務リスク手取りを増やす方法として、役員退職金、株式分散、資産管理会社、組織再編などが検討されます。ただし、実行時期が遅いほど選択肢は狭まり、税務上の否認や買い手の反対を招く可能性があります。
4-1. 役員退職金と株式譲渡対価の組み合わせ会社から役員退職金を受け取り、残りを株式譲渡対価とする設計では、所得区分を分けられる可能性があります。退職所得には退職所得控除があり、原則として控除後の金額の2分の1が課税対象です。
一方、在任期間、最終報酬月額、功績倍率、退任後の関与を確認しなければなりません。過大退職金と判断されれば、会社側で損金算入が否認されるため、役員報酬を売却直前だけ引き上げる設計は危険です。
4-2. 株式分散と資産管理会社の実行条件親族や共同創業者へ株式を移転すると、個人ごとの譲渡益を分けられる場合があります。しかし、贈与税、非上場株式の時価評価、相続税、議決権の変化を同時に検討しなければなりません。
資産管理会社へ株式を集約する場合は、法人税や配当課税、株式を移す時点の時価、会社に残る資金の扱いを確認します。買い手が個人株主の整理や議決権構成をクロージング条件にすることもあります。
4-3. 組織再編とみなし配当の課税リスク自己株式取得や組織再編を使うと、支払額の一部がみなし配当として扱われることがあります。株式譲渡益の20.315%を前提にしていた場合、配当所得として総合課税になれば、想定手取りが大きく変わります。
適格組織再編に該当するかは、支配関係、事業継続、対価の要件などで判定します。形式的に税率の低い所得へ付け替えるのではなく、取引全体の経済実態に沿って設計することが必要です。
4-4. 買い手の価格交渉と表明保証への影響売り手がミニマムタックスによる手取り減少を理由に価格引上げを求める場合、買い手は追加負担を企業価値へ反映するか判断します。税金は通常、売り手個人の事情ですが、価格交渉の材料になる場面はあります。
また、直前の株式移転、退職金、組織再編に税務否認リスクがあると、買い手は表明保証、補償条項、税務リスクの上限、クロージング条件を厳しく設定します。節税策は売却前に買い手の受入可能性まで確認します。
5. M&A株式売却とミニマムタックスのFAQ 5-1. 売却額3億円なら追加課税は発生しますか売却額3億円だけでは判定できません。取得費と譲渡費用を差し引いた譲渡益に、役員報酬、配当、不動産譲渡益などを加えた基準所得金額で判断します。
株式譲渡益が3億円だけの単純ケースでは、2027年以降も追加課税が生じない可能性があります。ただし、所得控除や他の所得により結果は変わります。
5-2. 2026年に契約すれば旧制度になりますか契約締結日だけで旧制度になるとは限りません。株式の引渡し日、決済日、契約の効力発生日、前提条件の成就日を確認して年分を判定します。
株式譲渡契約書、クロージング・チェックリスト、株主名簿、送金記録を税理士へ共有してください。実態と異なる日付を作ることは認められません。
5-3. 親族への株式贈与で税負担は下がりますか個人単位の判定であるため、株式分散が結果に影響する可能性はあります。しかし、贈与時の株価評価に基づく贈与税が発生し、売却直前の移転が実質的な売却と見られるリスクもあります。
議決権、配当の受取人、買い手の同意、相続時の財産分与まで検討が必要です。名義だけを親族へ移す方法は、単純な節税策として利用できません。
5-4. 医療法人やMS法人の売却も対象ですか持分あり医療法人では、出資持分の移転により個人の譲渡所得が生じるかを確認します。持分なし医療法人は、株式譲渡とは異なるため、同じ計算を直ちに当てはめられません。
MS法人や介護法人では、個人が株式を保有しているか、法人間で株式や事業を移すかで課税関係が変わります。医療法上の認可、役員退職金、みなし配当も含め、医療M&Aに詳しい税務専門家へ確認します。
6. おすすめ商品: 手取りを増やす会社売却・M&A仲介サービスの特徴と選び方売却価格だけでなく、仲介手数料、税金、引継ぎ条件を差し引いた手取り額まで比較するなら、手取りを増やす会社売却・M&A仲介サービスが選択肢になります。
特徴は、着手金無料、中間金無料、最低報酬500万円からという料金体系です。広告費を抑え、オンライン面談中心で固定費を削減することで、売却後の資金を残す設計を重視しています。
譲渡価格5,000万円の案件では、他社の最低報酬2,000万円に対し、最低報酬500万円からなら手数料差額が最大1,500万円になるケースがあります。実際の成功報酬は、譲渡価格基準か移動総資産基準かを契約前に確認してください。
M&A仲介だけでなく、ビジネスDD、PMI、企業再生の経験を持つ担当者が対応する点も判断材料です。無料オンライン相談では、売却可能性、想定譲渡価格、株式譲渡と事業譲渡の違い、税金と手数料を含めた手取りを整理できます。
他社の提案書を提示して、手数料のセカンドオピニオンとして比較することも可能です。税務判断そのものは税理士に確認し、仲介会社には価格、条件、買い手探索、引継ぎの実務を相談すると役割を分けやすくなります。
7. まとめM&Aの株式売却は、原則20.315%の申告分離課税です。ただし、ミニマムタックスにより、2026年分までは約10億円、2027年分以降は約3.4億円から約3.5億円が追加課税の目安になります。
判定は売却額ではなく、取得費と譲渡費用を控除した株式譲渡益に、役員報酬や配当などを加えた基準所得金額で行います。売却前に2026年完了案、2027年以降案、退職金や株式分散案を並べて比較してください。
最初に、株主別の持株数、取得費、仲介手数料、報酬・配当、契約日、クロージング予定日を一覧化します。その資料を税理士とM&Aアドバイザーに共有し、税額だけでなく企業価値と買い手の条件を含めて決定することが重要です。


