事業売却の税金を減らす!役員退職金や繰越欠損金の活用術

事業売却の税金を減らす!役員退職金や繰越欠損金の活用術

本ページの更新日について

公開日:2025年2月19日
最終更新日:2026年7月10日

事業売却を考えたとき、最初に気になるのは「手元にいくら残るのか

」という点ではないでしょうか。売却価格が高くても、税金で大きく目減りしてしまっては意味がありません。ここでは、事業売却の基本スキームから税金の種類、具体的な節税対策まで、実践的な知識を整理していきます。

1. 事業売却の税金、まずは基本スキームを理解する

事業売却には大きく分けて「事業譲渡」と「株式譲渡」という二つの方法があります。この選択によって課税される税金の種類や負担額が大きく変わるため、まずはこの違いを明確に理解することが、節税の第一歩です。売り手が法人か個人かによっても税制が異なる点も、あわせて押さえておきましょう。

1-1. 事業譲渡と株式譲渡、税金の違いを比較

事業譲渡では、会社が事業を売却した対価に対して法人税(法人の場合)または所得税(個人の場合)が課され、消費税も発生し得ます。一方、株式譲渡では株主個人の譲渡所得に対して一律約20%の申告分離課税が適用され、消費税は非課税です。この違いは、最終的な手取り額に直結する極めて重要なポイントです。

項目

事業譲渡

株式譲渡

課税対象

法人(売却益に法人税)

株主個人(譲渡所得に所得税・住民税)

税率の目安

実効税率約30%

一律約20%

消費税

課税資産に課税

非課税

【文脈】事業譲渡と株式譲渡の税金の違いを一覧表で比較する図 1-2. 売却額1億円の場合、税額はどう変わる?

具体的な数字で見てみましょう。例えば、売却額1億円、簿価2,000万円の事業を法人が事業譲渡するケースと、個人株主が株式譲渡するケースを比較します。事業譲渡の場合、譲渡益8,000万円に実効税率約30%がかかり、税額は約2,400万円です。株式譲渡の場合、同じ譲渡益8,000万円に約20%がかかり、税額は約1,600万円となります。この差は実に800万円にも上ります。

1-3. 売り手が法人の場合と個人の場合の税金

売り手が法人(会社)の場合、課税されるのは法人税、法人住民税、法人事業税です。これらを合計した実効税率は約30%が目安です。一方、個人事業主の場合は、所得税、住民税、個人事業税が課されます。所得税は累進課税のため、所得が高くなるほど税率が上がり、最大で約55%に達する可能性がある点に注意が必要です。

2. 事業売却の税金計算、シミュレーションで理解する

売却益の計算方法を具体的に理解することは、正確な税額を把握するために欠かせません。ここでは、実際の数値を当てはめたシミュレーションを通じて、法人税・所得税・住民税それぞれの計算プロセスを解説します。

2-1. 譲渡益の計算方法を具体例で解説

譲渡益の基本計算式は「譲渡益=譲渡価額-(譲渡原価+譲渡費用)」です。譲渡原価は譲渡資産の簿価、譲渡費用には仲介手数料や弁護士費用などが含まれます。例えば、譲渡価額1億円、簿価2,000万円、仲介手数料500万円の場合、譲渡益は1億円-(2,000万円+500万円)=7,500万円となります。

2-2. 法人税の計算シミュレーション(実効税率)

法人が事業譲渡を行った場合、譲渡益に法人税等の実効税率(約30%)を乗じて税額を計算します。先ほどの例で譲渡益が7,500万円の場合、法人税等は7,500万円×30%=2,250万円です。ただし、この金額はあくまで目安であり、実際には課税所得の計算において各種損金や税額控除の適用があるため、個別にシミュレーションする必要があります。

2-3. 所得税・住民税の計算シミュレーション

個人事業主が事業譲渡を行った場合、譲渡所得は他の所得と合算して総合課税の対象となります。譲渡所得7,500万円、他の所得が500万円の場合、課税所得合計は8,000万円です。この場合、所得税の最高税率45%が適用され、所得税額は約3,000万円、住民税は10%で800万円、合計約3,800万円となります。法人と比較して税負担が重くなる傾向があることが分かります。

【文脈】法人税と所得税の計算シミュレーションを比較する図 3. 事業売却の税金を減らす!具体的な節税対策

事業売却時に活用できる節税スキームは複数存在します。事前に適切な対策を講じることで、税負担を大幅に軽減できる可能性があります。ここでは、代表的な3つの方法を解説します。

3-1. 役員退職金の活用で法人税を大幅に圧縮

売却前に役員退職金を支給することで、法人の課税所得を減らし、かつ個人の退職所得控除を活用する方法です。例えば、譲渡益が7,500万円の場合、役員退職金5,000万円を支給すれば、課税所得は2,500万円に圧縮され、法人税等は750万円まで減少します。退職金を受け取った個人も、退職所得控除と2分の1課税の恩恵を受けられます。ただし、金額が不相当に高額な場合は税務調査で否認されるリスクがあるため、適正額の算定が重要です。

3-2. のれん償却で買い手の税負担を軽減する

事業譲渡において、営業権(のれん)を計上すると、買い手はそののれんを税務上5年間で償却できます。この償却費は損金算入されるため、買い手の法人税を節税する効果があります。その結果、買い手はより高い価格で事業を評価しやすくなり、結果的に売り手にとって有利な条件を引き出せる可能性が高まります。

3-3. 繰越欠損金を活用した法人税の節税

過去の赤字(繰越欠損金)がある場合、売却益と相殺することで法人税を節税できます。繰越欠損金の控除期間は最長10年です。例えば、5,000万円の繰越欠損金がある場合、譲渡益7,500万円と相殺すれば、課税所得は2,500万円となり、法人税等は750万円に軽減されます。

3-4. 個人事業主が法人成りしてから売却する税金比較

個人事業主が事業を売却する場合、事前に法人成り(法人化)してから株式譲渡で売却した方が、税負担が軽減されるケースがあります。個人の所得税は累進課税で最大約55%ですが、法人の実効税率は約30%です。ただし、法人化には登記費用や税理士報酬などのコストがかかるため、売却規模やタイミングを考慮した総合的な判断が必要です。

【文脈】個人事業主が法人成りしてから売却する場合と 4. 事業売却の消費税、課税・非課税を正しく理解する

事業譲渡における消費税の取り扱いは複雑で、課税資産と非課税資産の区分を誤ると、後日税務調査で指摘されるリスクがあります。正しい知識を身につけ、適切な処理を行うことが重要です。

4-1. 課税資産と非課税資産の具体的なリスト

消費税が課税される資産と非課税となる資産を、具体的にリストアップします。課税資産には、商品在庫(棚卸資産)、機械設備、車両、建物、ソフトウェア、のれん(営業権)などが該当します。一方、非課税資産には、土地、株式などの有価証券、売掛金や貸付金などの債権が含まれます。契約書では、資産ごとの対価を明確に区分しておくことが重要です。

4-2. 消費税の計算シミュレーションと実務の注意点

課税資産の譲渡対価に消費税(10%)が上乗せされる場合の計算例を示します。例えば、課税資産の合計が7,000万円の場合、消費税額は700万円となり、買い手は総額1億700万円を支払います。売り手はこの700万円を消費税として納税します。売り手が免税事業者である場合、消費税の納税義務はありませんが、インボイス制度の影響で買い手が仕入税額控除を受けられなくなる可能性があるため、注意が必要です。

4-3. 売却後の住民税の具体的な計算方法

事業売却によって多額の所得が発生した場合、翌年度の住民税(均等割・所得割)が大きく変動します。住民税は前年の所得に基づいて課税されるため、売却後の資金計画に影響を与えます。例えば、売却で5,000万円の所得が発生した場合、翌年度の住民税(所得割)は約500万円(税率10%)となります。売却後のキャッシュフローを試算する際には、この点を必ず考慮しましょう。

5. 事業売却の税金に関するよくある質問(FAQ)

実際に事業売却を検討する際に、多くの経営者が抱える疑問をQ&A形式で解消します。実務的なポイントを押さえておきましょう。

5-1. 事業売却の税金、いつまでに申告すればいい?

法人の場合は、事業年度終了後2ヶ月以内に法人税等の申告・納税が必要です。個人の場合は、確定申告期間(2月16日〜3月15日)に所得税等の申告を行います。売却が年度の途中で行われた場合、決算までの期間が短くなることがあるため、事前にスケジュールを確認しておきましょう。

5-2. 税務調査が入るリスクは?対策はある?

事業売却は高額な取引であるため、税務調査の対象となるリスクが高まります。特に、役員退職金の妥当性、消費税の区分、のれんの評価額などが調査で指摘されやすいポイントです。対策としては、事前に税理士と連携して適正な価格設定と書類の整備を行い、税務上のリスクを最小化することが重要です。

5-3. 税理士に相談するタイミングはいつがベスト?

事業売却の検討段階、具体的には売却価格の算定前から税理士に相談することが最も効果的です。売却スキームの選択、役員退職金の設計、繰越欠損金の活用など、事前対策が節税効果を大きく左右します。売却が決まってからでは、有効な対策を講じる時間が不足する可能性があります。

6. まとめ

事業売却における税金対策は、売却スキームの選択から始まります。株式譲渡と事業譲渡の違いを理解し、自社の状況に最適な方法を選ぶことが、手取り額を最大化するための第一歩です。役員退職金や繰越欠損金などの節税スキームを活用し、消費税の取り扱いにも注意を払いましょう。これらの知識を踏まえた上で、早い段階から税理士やM&Aの専門家に相談し、計画的に準備を進めることをお勧めします。

アフィリエイトサイトM&A・売却なら M&A PMI AGENT

\ 仲介手数料は大手の1/5で手取りを最大化 /

詳細はコチラ

編集者の紹介

日下部 興靖

株式会社M&A PMI AGENT

代表取締役 日下部 興靖

上場企業のグループ会社の取締役を4社経験。M&A・PMI業務・経営再建業務などを10年経験し、多くの企業の業績改善を行ったM&A・PMIの専門家。3か月の経営支援にて期首予算比で売上1.8倍、利益5倍などの実績を持つ。

メニュー