みなし配当とは?非上場株式譲渡の税務リスクを回避する

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公開日:2024年12月19日最終更新日:2026年8月9日
非上場株式は、誰に売るかで税務処理が変わります。発行会社への売却では、譲渡所得だけでなく、みなし配当として総合課税される部分が生じるため注意が必要です。
1. みなし配当とは何か、非上場株式譲渡の税務整理みなし配当とは、形式上は配当でなくても、会社に蓄積された利益が株主へ移転したと判断される部分を、税務上の配当所得として扱う制度です。自己株式取得、残余財産の分配、減資、一定の合併や会社分割などで問題になります。
一方、第三者へ非上場株式を売る通常の株式譲渡では、原則として譲渡所得です。会社が買うのか、社長個人や第三者が買うのかによって、所得区分と税率が変わります。
売却先・取引 | 主な所得区分 | 主な注意点 |
|---|---|---|
発行会社 | 配当所得と譲渡所得 | 自己株式取得によるみなし配当 |
社長個人・第三者 | 譲渡所得 | 価格が低すぎる場合は贈与認定など |
親族 | 譲渡所得が基本 | 低額譲渡による贈与認定 |
相続株式を発行会社へ売却 | 特例により譲渡所得 | 相続税の納付と期限の確認 |
発行会社が株主から自社株式を買い取る自己株式取得では、受取対価のうち、保有株式に対応する資本金等の額を超える部分がみなし配当です。会社の利益剰余金が株主へ還元されたと考えるためです。
したがって、売却代金全額が譲渡所得になるとは限りません。資本金等の額に対応する部分は株式の譲渡収入として扱い、超過部分を配当所得に区分します。
1-2. 第三者譲渡と親族間売買で異なる課税関係第三者への通常の株式譲渡では、売却価格から取得費などを差し引いた利益が譲渡所得になります。個人の非上場株式は、原則として申告分離課税の対象です。
親族間売買では、売却価格が適正な時価から著しく低いと、買主への贈与と認定される可能性があります。会社が関与する場合は、株主への利益供与や役員給与と判断されるリスクもあります。
1-3. 自己株式取得以外に発生する代表的な取引会社の解散後に残余財産を分配するとき、出資に対応する金額を超える部分はみなし配当になります。有償減資や資本剰余金の払戻しでも、利益の分配に当たる部分を区分します。
非適格合併や非適格分割型分割で株主に金銭などが交付される場合も、みなし配当が生じることがあります。適格組織再編に該当するかは、実行前に判定が必要です。
1-4. 取引相手別に見る手取り額の比較方法手取り額は、売却価格から所得税、住民税、復興特別所得税、仲介手数料、実費を差し引いて比較します。会社買取では配当所得部分を分け、社長個人や第三者への売却では譲渡所得を計算します。
例えば同じ1,000万円でも、会社買取なら総合課税の配当所得が発生し、個人間売買なら申告分離課税の譲渡所得が中心です。税額だけでなく、資金負担、株式の譲渡承認、将来の経営権も比較します。
2. みなし配当の判定フローと税額計算を確認する
最初に、取引相手が発行会社かを確認します。発行会社であれば自己株式取得などの資本取引に該当するかを判定し、受取対価を資本金等の額に対応する部分と超過部分に分けます。
買主は発行会社か
自己株式取得、減資、残余財産分配、組織再編に該当するか
受取対価は資本金等の対応額を超えるか
相続株式の特例要件を満たすか
個人株主か法人株主かを確認する
発行会社ではない場合、通常は株式譲渡として取得費や譲渡費用を計算します。ただし、親族や役員など関係者間の取引では、時価との差額について贈与や給与の認定を検討します。
2-1. 資本金等の額を使うみなし配当の計算式基本式は、みなし配当額=交付された金銭等の額−資本の払戻しに相当する金額です。自己株式取得では、1株当たりの資本金等の額に売却株式数を掛け、対応額を求めます。
資本金等の対応額が受取対価を上回る場合、計算上みなし配当は生じません。実際の計算では、資本剰余金、発行済株式数、自己株式などを含めて税法上の金額を確認します。
2-2. 売却価格一千万円を想定した手取り試算前提を、売却価格1,000万円、資本金等の対応額300万円、取得費200万円とします。発行会社が買い取る場合、みなし配当は1,000万円−300万円で700万円です。
残る300万円は譲渡収入に対応し、取得費200万円を差し引いた100万円が譲渡所得の計算対象です。譲渡所得にかかる税額は、単純化すれば100万円×20.315%で約20万3,150円です。
一方、700万円のみなし配当は、給与など他の所得と合算して総合課税されます。高い所得階層では所得税45%、住民税10%を基礎に、復興特別所得税も加わるため、実際の手取りは他の所得状況で大きく変わります。
第三者へ1,000万円で売却する場合は、1,000万円から取得費200万円を差し引いた800万円が譲渡所得です。単純計算の税額は約162万5,200円ですが、実際には譲渡費用や取得費の確認が必要です。
2-3. 配当所得と譲渡所得の税率差を比較する非上場株式の譲渡所得は、原則として申告分離課税です。所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%を合わせた税率は20.315%です。
非上場株式に係るみなし配当は、原則として総合課税の配当所得です。所得税は累進税率で、課税所得4,000万円超の所得税率は45%、住民税10%が加わります。
配当控除を受けられる場合がありますが、所得状況や申告方法によって有利不利が変わります。源泉徴収額だけで納税が完了するとは限らず、確定申告で精算します。
2-4. 法人株主と個人株主で異なる税務処理個人株主は、みなし配当を配当所得、資本金等の対応部分を株式譲渡の収入として処理します。法人株主は受取配当金として計上し、持株比率などに応じて受取配当等の益金不算入を検討します。
法人株主の株式譲渡部分は、売却収入から帳簿価額などを差し引き、法人税の所得計算に反映します。法人税法上の区分は複雑なため、決算処理前に税理士へ確認します。
3. 源泉徴収と確定申告を漏らさない実務手順
みなし配当が生じると、発行会社側には源泉徴収と納付の実務が発生します。株主側は源泉徴収後の金額だけで判断せず、配当所得と譲渡所得を分けて確定申告します。
3-1. 発行会社が行う源泉徴収と支払調書の処理発行会社は、個人株主へのみなし配当について原則として源泉徴収を行います。非上場株式の配当等では、所得税および復興特別所得税の源泉徴収税率20.42%を基礎に確認します。
源泉徴収税額は原則として支払日の翌月10日までに納付します。支払通知書や支払調書の作成・提出が必要になるため、株主別の金額、支払日、納付日を一覧で管理します。
3-2. 株主側の確定申告と配当控除の選択肢株主は、みなし配当を配当所得として申告し、株式譲渡部分は譲渡所得として申告します。源泉徴収された金額は、確定申告で納付税額から控除します。
配当控除は、要件を満たす国内法人の配当所得について検討できる制度です。総合課税を選ぶかどうかで所得税と住民税が変わるため、社会保険や扶養への影響も含めて試算します。
3-3. 取引日から申告期限までの実務カレンダー契約前:株価、所得区分、税額、特例を確認
取引日:契約書、株式譲渡、代金決済、株主名簿を更新
翌月10日まで:源泉徴収税額を納付
翌年:支払調書などを整理し、2月16日から3月15日までに確定申告
売買契約書、株主名簿、定款、株式譲渡承認通知、取締役会や株主総会の議事録を保存します。株価評価書、決算書、税務申告書、資産負債の明細も価格の合理性を示す資料です。
源泉徴収簿、納付書、支払調書、送金記録も取引と一緒に保管します。価格交渉のメールや議事メモを残すと、恣意的な利益移転ではないことを説明しやすくなります。
4. 非上場株式譲渡の税務リスクを抑える株価算定と対策税務リスクを抑える出発点は、取引目的に合った株価算定です。非上場株式には市場価格がないため、決算内容、支配権、配当実績、将来収益、取引当事者を組み合わせて価格を説明します。
4-1. 決算書と株主名簿から評価資料をそろえる直近の決算書、法人税申告書、株主名簿、定款、議事録を準備します。土地や有価証券などの含み益がある資産は、簿価だけでなく時価の確認が必要です。
株式数、議決権割合、取得経緯、取得費、過去の配当、借入金、役員構成も整理します。資料が欠けると評価の前提が曖昧になり、税務調査で説明が止まります。
4-2. 非上場株式の評価方式を取引目的で選ぶ類似業種比準方式は、類似する上場会社の配当、利益、純資産などを比較する方法です。純資産価額方式は、資産と負債を時価評価して株主価値を求めます。
配当還元方式は、少数株主などの配当受領を基礎に評価する方法です。相続税評価とM&Aの取引価格は目的が異なるため、税務評価をそのまま売買価格としない点が重要です。
支配株主の株式では経営権の価値を考慮し、少数株主では議決権や換金性の制約を検討します。評価方法を一つに固定せず、複数方式の結果と差異を説明できる状態にします。
4-3. 相続株式の期限付き特例を適用する条件相続または遺贈で取得した非上場株式を、発行会社へ譲渡する場合、一定要件を満たせばみなし配当課税の特例を検討できます。適用されると、みなし配当部分を含めて譲渡所得として扱える可能性があります。
主な条件は、相続税の課税対象となった株式であること、相続税を納付していること、発行会社へ譲渡することです。譲渡期限は相続開始から3年10ヶ月以内です。
株主から発行会社への届出書提出や、会社から税務署への提出も必要です。相続税申告書、納税記録、株式の相続関係資料をそろえ、期限から逆算して会社と手続きを進めます。
4-4. 贈与認定と役員給与認定を避ける価格根拠親族や役員が関係する取引では、著しく低い価格なら買主への贈与、高い価格なら役員への給与や会社からの利益移転と判断される可能性があります。価格だけでなく、誰がどのように決めたかが問われます。
第三者評価、複数方式の比較、取締役会での承認、株主への説明、交渉記録を残します。役員が買主の場合は、会社資金の流用や利益相反がないことも確認します。
安い価格にして税金を減らす発想は、贈与税や追徴課税を招くことがあります。税負担だけでなく、契約の有効性と将来の株主関係まで含めて価格を決定します。
5. みなし配当と非上場株式譲渡のよくある質問
5-1. 赤字会社の自己株式取得でも配当は生じるか
生じる可能性があります。会計上の赤字や利益の有無だけで決めず、受取対価と株式に対応する資本金等の額を比較します。
5-2. みなし配当と譲渡所得は同時に発生するか発生します。発行会社への譲渡では、対価をみなし配当部分と資本金等に対応する譲渡部分に分けるため、一つの取引で両方の所得が生じます。
5-3. 相続株式の特例は誰にでも使えるか使える人は限定されます。相続税の申告・納付、発行会社への譲渡、届出書の提出、相続開始から3年10ヶ月以内という要件を満たす必要があります。
5-4. 税理士へ相談する前に準備する資料は何か株式数、保有割合、取得経緯、取得費、想定売却価格、株主構成、決算書、税務申告書を準備します。相続株式なら相続税申告書と納税記録も必要です。
契約書に署名する前に相談することが重要です。価格や買主が決まった後では、自己株式取得から個人間売買への変更や特例の準備が間に合わない場合があります。
6. おすすめ商品: 手取りを重視するならM&A PMI AGENTの特徴と選び方会社売却や事業譲渡では、売却価格だけでなく、税金、仲介手数料、実費、引継ぎ条件を差し引いた手取り額で比較する必要があります。手取りを重視するならM&A PMI AGENTは、この手取り額の整理を重視するM&A仲介サービスです。
初回相談、着手金、中間金が無料で、最低報酬は500万円〜です。他社から提案書や見積りを受け取っている場合も、仲介契約前であれば、最低報酬、成功報酬の計算方法、テール条項などを比較できます。
オンライン面談を中心に、買い手候補への打診、条件交渉、基本合意、DD、最終契約、クロージングまで支援します。ビジネスDD、PMI、企業再生、経営改善まで含めて検討したい売り手経営者に適しています。
例えば譲渡価格5,000万円の比較では、最低報酬の差が最大1,500万円になる例も示されています。実際の費用は案件や契約条件で異なるため、税金と手数料を同じ表に並べて確認することが選択の基準になります。
7. まとめみなし配当は、発行会社による自己株式取得などで、受取対価の一部が配当所得になる仕組みです。非上場株式を第三者へ売る場合の譲渡所得とは、課税方法と税率が大きく異なります。
まず、誰が買主になるのか、資本金等の対応額はいくらか、相続特例を使えるかを確認します。そのうえで株価評価、源泉徴収、確定申告、証憑保存を取引前に設計します。
売却価格だけで判断すると、税金や手数料を差し引いた手取り額を誤る可能性があります。契約前に税理士やM&A専門家へ相談し、複数の取引案を横並びで比較してください。


