事業承継・M&A補助金:買収側の申請のコツとは?

後継者不足に悩む企業にとって、事業承継・M&Aは有効な解決策です。しかし、M&Aには多額の費用がかかるため、補助金の活用が不可欠です。
本記事では、買収側の企業が「事業承継・M&A補助金」を申請する際のコツについて、全体像から戦略的なポイント、申請実務まで詳しく解説します。補助金を活用して、M&Aを成功に導きましょう。
【無料】M&Aでの譲渡のご相談はコチラ
「M&Aは何から始めればいいかわからない」という経営者からも数多くのご相談をいただいています。M&Aを成功に導くはじめの一歩は無料のオンライン相談から。お気軽にご相談ください。
365日開催オンライン個別相談会
編集者の紹介

株式会社M&A PMI AGENT
代表取締役 日下部 興靖
上場企業のグループ会社の取締役を4社経験。M&A・PMI業務・経営再建業務などを10年経験し、多くの企業の業績改善を行ったM&A・PMIの専門家。3か月の経営支援にて期首予算比で売上1.8倍、利益5倍などの実績を持つ。
1. 買収側経営者が知っておくべき「事業承継・M&A補助金」の全体像
事業承継・M&A補助金は、中小企業や小規模事業者が事業承継やM&Aを行う際に発生する費用の一部を支援する国の制度です。この補助金は、後継者不足や経営資源の分散といった課題を抱える企業にとって、事業の持続可能性を高めるための重要な支援策となります。
買収側の企業がこの補助金を活用することで、M&Aにかかる初期投資の負担を軽減し、経営資源の効率的な統合を促進することが可能になります。
買収側の企業が活用できる事業承継・M&A補助金には、主に「専門家活用枠」と「PMI推進枠」があります。
1.1.1. 専門家活用枠M&A仲介会社やFA(フィナンシャルアドバイザー)への報酬、デューデリジェンス(DD)費用など、M&Aプロセスで発生する専門家への依頼費用を補助します。これにより、買収側は専門家の知識や経験を借りながら、M&Aをより安全かつ効率的に進めることができます。
1.1.2. PMI推進枠M&A後の経営統合(PMI)を円滑に進めるための費用を補助します。具体的には、経営、業務、ITシステムなどの統合コンサルティング費用、従業員の研修費用、組織再編にかかる費用などが対象となります。PMIを適切に行うことで、M&Aの効果を最大限に引き出し、企業価値の向上につなげることが期待できます。
これらの補助金を活用することで、買収側はM&Aに伴う経済的な負担を軽減し、より戦略的な経営判断を行うことが可能になります。
1.2. 買収側申請者が陥りやすいPMI費用の対象範囲の誤解PMI(Post Merger Integration:経営統合)費用として補助対象となるのは、M&A成立後の経営統合プロセスに直接関連する費用です。 買収契約締結前に発生した費用や、M&Aとは直接関係のない通常の経営活動にかかる費用は対象外となることが一般的です。
例えば、M&Aの検討段階で行った preliminary due diligence(予備的なデューデリジェンス)費用や、M&A後の新体制下での広告宣伝費などは、補助対象として認められない場合があります。
PMI費用の対象範囲を正確に理解するためには、公募要領を熟読し、事務局に確認することが重要です。
1.3. 補助金採択に必須な「シナジー効果」の事業計画書での示し方補助金審査では、M&Aによって創出されるシナジー効果が重視されます。事業計画書では、以下の点を具体的に示す必要があります。
1.3.1. シナジー効果の種類- 売上増加: 顧客基盤の拡大、クロスセル、新商品・サービスの開発
- コスト削減: 規模の経済、重複部門の統合、サプライチェーンの最適化
- 技術・ノウハウの共有: 相互の技術やノウハウを活用した新製品・サービスの開発
売上高、利益、コスト削減額など、具体的な数値目標を設定し、その根拠を示す必要があります。市場調査データや過去のM&A事例などを参考に、客観的なデータに基づいて目標を設定しましょう。
1.3.3. シナジー効果実現のための具体的な施策目標達成のために、どのような施策を実行するのか具体的に記述する必要があります。組織統合、業務プロセス改善、ITシステム統合など、具体的な施策とスケジュールを示すことで、審査官に実現可能性をアピールすることができます。
【関連】事業承継・M&A補助金:小規模事業者向け徹底解説|申請のコツ2. 成功する「事業承継・M&A補助金」の申請:買収側が留意すべき戦略的ポイント
事業承継・M&A補助金の申請を成功させるためには、戦略的な準備が不可欠です。ここでは、審査官を納得させるためのポイント、DD(デューデリジェンス)結果と補助金申請の連携、PMI(経営統合)の具体的なロードマップと費用対効果の明確化について解説します。
2.1. 審査官を納得させる「成長性」と「専門性」の表現審査官は、申請者の事業に成長性があるか、M&Aを成功させるための専門性を持っているかを厳しく評価します。事業計画書では、以下の点を明確に示す必要があります。
2.1.1. 成長性の根拠市場の成長性、自社の競争優位性、M&Aによるシナジー効果などを分析し、客観的なデータに基づいて成長戦略を説明する必要があります。
2.1.2. 専門性の証明M&Aに関する知識や経験、業界に関する知識、経営能力などを具体的に示す必要があります。M&Aに関する研修の受講履歴、過去のM&A成功事例、経営コンサルタントの活用などをアピールすることも有効です。
2.2. 買収側のDD(デューデリジェンス)結果と補助金申請の連携の重要性デューデリジェンス(DD)は、M&Aの成否を左右する重要なプロセスです。DDの結果を補助金申請に連携させることで、事業計画の信頼性を高めることができます。
2.2.1. DD結果の概要財務、法務、税務、ビジネスなど、DDで判明した重要な事実を簡潔にまとめます。特に、M&A後の事業運営に影響を与える可能性のあるリスクや課題については、詳細に記述する必要があります。
2.2.2. DD結果を踏まえた事業計画の修正DDの結果を踏まえ、事業計画をどのように修正したのか具体的に説明します。リスクへの対応策、課題解決のための施策などを明確に示すことで、審査官に事業計画の実現可能性をアピールすることができます。
2.3. 補助事業期間におけるPMIの具体的なロードマップと費用対効果の明確化PMI(Post Merger Integration:経営統合)は、M&A後の企業価値を最大化するための重要なプロセスです。補助事業期間内に、PMIをどのように進めていくのか、具体的なロードマップを示す必要があります。
2.3.1. PMIのロードマップPMIの目標、スケジュール、担当部署、具体的な施策などを明確にします。組織統合、業務プロセス改善、ITシステム統合など、各段階における具体的な計画を示すことで、審査官にPMIの実行可能性をアピールすることができます。
2.3.2. 費用対効果の明確化PMIにかかる費用とその効果を定量的に示す必要があります。コスト削減額、売上増加額、生産性向上率など、具体的な数値目標を設定し、その根拠を示すことで、審査官にPMIの費用対効果をアピールすることができます。
【関連】事業承継・M&A補助金:最大額を獲得する方法を徹底解説!申請のコツと注意点3. 買収側特有の難所をクリアする「事業承継・M&A補助金」の申請実務
事業承継・M&A補助金の申請実務は煩雑で、多くの企業が苦労しています。ここでは、買収側特有の難所をクリアするためのノウハウを解説します。資金調達計画と補助金活用のバランス、事業化状況・成果報告の注意点、グループ再編と補助金ルールの整合性について理解を深めましょう。
3.1. 買収側の資金調達計画と補助金活用のバランスシート上の位置づけM&Aには多額の資金が必要となるため、適切な資金調達計画が不可欠です。補助金を活用する場合、以下の点を考慮してバランスシートを作成する必要があります。
3.1.1. 資金調達方法の選定自己資金、借入金、社債、投資ファンドなど、様々な資金調達方法を検討し、自社にとって最適な方法を選択する必要があります。各方法のメリット・デメリット、金利、返済期間などを比較検討し、バランスシートに与える影響を評価しましょう。
3.1.2. 補助金の自己資金とみなされるか補助金は、会計上、企業の収益として扱われるため、自己資金とみなされる場合があります。補助金を自己資金とみなす場合、借入金の割合を減らすことができ、財務体質の改善につながります。ただし、補助金の交付時期によっては、資金繰りに影響を与える可能性があるため、注意が必要です。
3.2. 補助事業完了後の提出が必須となる「事業化状況・成果報告」の罠補助事業完了後には、事業化状況・成果報告書の提出が義務付けられています。報告書では、以下の点を明確に示す必要があります。
3.2.1. 事業計画の達成状況売上高、利益、コスト削減額など、事業計画で設定した目標の達成状況を具体的に記述する必要があります。目標未達の場合は、その理由と今後の対策を示す必要があります。
3.2.2. 補助金の使用状況補助金をどのように使用したのか、詳細な内訳を記述する必要があります。領収書、契約書、請求書など、証拠書類を添付する必要があります。
3.2.3. 事業の継続状況補助金交付後も、事業を継続していることを示す必要があります。事業活動の状況、従業員の雇用状況などを具体的に記述する必要があります。
3.3. 買収後のグループ再編(組織再編税制)と補助金ルールの整合性M&A後、グループ再編(組織再編税制)を行う場合、補助金ルールとの整合性に注意する必要があります。組織再編の種類によっては、補助金の返還を求められる場合があります。事前に事務局に相談し、組織再編計画が補助金ルールに抵触しないか確認することが重要です。
【関連】事業承継・M&A補助金:専門家活用で成功を掴む!4. 採択を確実にする「事業承継・M&A補助金」の申請:買収側が今日から始めるべき準備
事業承継・M&A補助金の申請は、入念な準備が成功の鍵を握ります。ここでは、採択を確実にするために、買収側が今日から始めるべき準備について解説します。専門家との連携体制構築、財務・非財務情報の整備、PMI戦略の最終チェックを行いましょう。
4.1. 専門家(M&A仲介・税理士)との効果的な連携体制の構築M&Aを成功させるためには、M&A仲介会社、税理士、弁護士など、様々な専門家のサポートが不可欠です。補助金申請においても、専門家との連携体制を構築することで、申請書類の作成、審査対応などを円滑に進めることができます。
4.1.1. 専門家の選定M&Aに関する知識や経験、実績などを確認し、自社にとって最適な専門家を選定する必要があります。複数の専門家から見積もりを取り、費用やサービス内容を比較検討しましょう。
4.1.2. 役割分担の明確化各専門家の役割分担を明確にし、責任範囲を定める必要があります。M&A仲介会社はM&Aの仲介、税理士は税務、弁護士は法務など、各専門家の得意分野を活かした役割分担を行うことで、M&Aを効率的に進めることができます。
4.2. 審査項目に直結する買収側企業の財務・非財務情報の整備補助金審査では、買収側企業の財務状況、経営状況、事業計画などが厳しく審査されます。審査に備えて、以下の情報を整備する必要があります。
4.2.1. 財務情報の整備過去3年分の決算書、試算表、キャッシュフロー計算書などを整備します。財務分析を行い、自社の強み・弱みを把握する必要があります。
4.2.2. 非財務情報の整備経営理念、経営戦略、組織体制、従業員のスキル、顧客情報、技術情報などを整備します。これらの情報を整理することで、自社の企業価値を客観的に評価することができます。
4.3. 補助金申請を事業承継・M&A成功へ導くPMI戦略の最終チェックPMI(Post Merger Integration:経営統合)は、M&A後の企業価値を最大化するための重要なプロセスです。補助金申請前に、PMI戦略を最終チェックすることで、M&Aの成功確率を高めることができます。
4.3.1. PMIの目標とKPIの設定PMIの目標(シナジー効果の創出、コスト削減、売上増加など)を明確にし、KPI(重要業績評価指標)を設定する必要があります。KPIを設定することで、PMIの進捗状況を客観的に評価することができます。
4.3.2. PMIの実行体制の構築PMIを推進するための組織体制を構築する必要があります。PMI担当部署の設置、PMI責任者の任命などを行い、PMIを円滑に進めるための体制を整えましょう。
【関連】事業承継・M&A補助金でデューデリジェンスの徹底活用ガイド5. 事業承継・M&A補助金 成功事例から学ぶ活用術
事業承継・M&A補助金を活用してM&Aを成功させた企業の事例から、具体的な活用術を学びましょう。ここでは、中小企業A社の異業種への進出事例、地方企業B社の後継者不足解消事例、老舗企業C社の事業再生事例を紹介します。
5.1. 中小企業A社のM&A成功事例:異業種への進出A社は、長年培ってきた技術力を活かして異業種への進出を計画していましたが、ノウハウや人材が不足していました。そこで、事業承継・M&A補助金を活用して、異業種の企業を買収しました。M&A後、A社は買収した企業のノウハウや人材を活用し、新たな製品・サービスを開発。売上を大幅に増加させることに成功しました。
5.2. 地方企業B社の事業承継成功事例:後継者不足の解消B社は、後継者不足に悩んでいましたが、事業承継・M&A補助金を活用して、M&Aを実施しました。M&A後、B社は大手企業の傘下に入り、経営資源やノウハウを活用することで、事業を拡大することができました。また、従業員の雇用も維持することができ、地域経済への貢献にもつながりました。
5.3. 老舗企業C社の事業再生成功事例:経営改善と再建C社は、経営不振に陥っていましたが、事業承継・M&A補助金を活用して、事業再生に成功しました。M&A後、C社は経営コンサルタントの指導を受け、経営改善計画を策定。不採算部門の整理、コスト削減、新規事業の立ち上げなどを行い、経営を再建することができました。
【関連】事業承継・M&A補助金:公募期間を逃さず資金調達を!まとめ
事業承継・M&A補助金は、買収側の企業にとってM&Aを成功させるための強力な支援ツールとなります。 補助金の活用を検討する際は、以下の点を意識しましょう。
- 自社の状況に合った補助金を選択する
- 専門家との連携体制を構築する
- 事業計画を具体的に記述する
- 証拠書類を適切に管理する
これらのポイントを踏まえ、入念な準備を行うことで、補助金採択の可能性を高めることができます。補助金を活用して、M&Aを成功に導き、企業の成長を実現しましょう。


