パーソナルジムの事業清算する前に!赤字でも事業売却するM&A仲介【東京都・神奈川県】

パーソナルジムの事業清算する前に!赤字でも事業売却するM&A仲介【東京都・神奈川県】

東京都・神奈川県でパーソナルジムを経営し、赤字による事業清算を検討されている経営者様へ。廃業を決断する前に、M&Aによる事業売却という選択肢があります。

実は、赤字や債務超過のジムであっても、その立地や会員基盤に価値を見出す買い手は存在します。この記事を読めば、事業清算を回避し、連帯保証債務の整理や現金の獲得に繋がるM&A戦略の全てがわかります。なぜ赤字でも売却が可能なのか、その理由から成功の秘訣までを具体的に解説します。

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編集者の紹介

日下部 興靖

株式会社M&A PMI AGENT
代表取締役 日下部 興靖

上場企業のグループ会社の取締役を4社経験。M&A・PMI業務・経営再建業務などを10年経験し、多くの企業の業績改善を行ったM&A・PMIの専門家。3か月の経営支援にて期首予算比で売上1.8倍、利益5倍などの実績を持つ。




1. 「パーソナルジム」の「事業清算」を回避する「M&A」戦略の必要性

東京都内や神奈川県内でパーソナルジムの経営が厳しくなり、「事業清算」や「廃業」という言葉が頭をよぎる経営者の方も少なくないでしょう。競争の激化、採用難、そして運営コストの高騰など、赤字経営が続くと精神的にも追い詰められてしまいます。

しかし、事業を清算する前に、ぜひ検討していただきたい選択肢があります。それが「M&A(事業譲渡)」です。たとえ赤字であっても、あなたのジムが持つ潜在的な価値を評価し、事業を引き継ぎたいと考える企業は存在します。

この章では、まず事業清算がもたらす厳しい現実を直視し、なぜM&Aが有効な解決策となり得るのか、その必要性について解説します。

1.1 赤字・債務超過に陥ったパーソナルジム経営者が直面する問題

赤字経営や債務超過の状態が続くと、経営者は資金繰りだけでなく、多岐にわたる深刻な問題に直面します。これらは単なる数字上の問題ではなく、経営者個人の人生や、関わってきた人々との関係性にも大きな影響を及ぼすものです。

1.1.1 倒産・事業清算に伴う連帯保証債務と経営者責任

多くの中小企業経営者が直面する最大の壁が、金融機関からの融資における「連帯保証」です。事業清算を選択した場合、会社の資産をすべて換金しても返済しきれなかった債務は、連帯保証人である経営者個人が私財を投じて返済する義務を負います。

これは銀行からの借入金だけでなく、店舗の賃貸借契約やトレーニングマシンのリース契約などにも及ぶ場合があります。結果として、自宅などの個人資産を失い、自己破産に至るケースも少なくありません。事業清算は、会社をたたむという行為に留まらず、経営者個人の生活基盤そのものを揺るがす厳しい現実を伴うのです。

1.1.2 従業員の雇用維持と顧客への影響(社会的信用)

事業を清算するということは、これまで共にジムを支えてくれた優秀なトレーナーやスタッフを解雇することを意味します。彼らの生活やキャリアを突然絶ってしまうことへの精神的負担は計り知れません。

また、会費や回数券を前払いで購入してくださった顧客への対応も大きな問題となります。返金対応が困難になれば、顧客からの信頼を失うだけでなく、トラブルに発展し、築き上げてきた社会的信用を一気に失墜させるリスクがあります。これらの問題は、経営者としての責任を痛感させ、大きな心の重荷となります。

1.2 事業清算とM&A(事業譲渡)の経済的・精神的比較

では、厳しい現実を伴う「事業清算」と、第三者に事業を引き継ぐ「M&A」では、具体的にどのような違いがあるのでしょうか。経済的な側面と精神的な側面から、両者を比較してみましょう。

比較項目 事業清算(廃業)の場合 M&A(事業譲渡)の場合
手元に残る現金 資産を処分しても清算費用(税理士・弁護士費用、原状回復費用等)で消え、マイナスになることが多い。 事業の価値(のれん代)が評価され、売却益としてまとまった現金を得られる可能性がある。
個人保証・債務 会社の資産で返済しきれない場合、経営者個人が返済義務を負う。 売却益で債務を返済したり、買い手企業に債務を引き継いでもらったりすることで、個人保証から解放される可能性がある。
従業員の雇用 原則として全員解雇となる。 買い手企業が雇用を継続することが多く、従業員の生活を守れる。
顧客への影響 サービス提供が停止。回数券などの前受金は返金問題に発展するリスクがある。 サービスは継続され、顧客は安心してジムに通い続けられる。
経営者の精神的負担 関係者への謝罪や手続きの煩雑さ、将来への不安など、精神的負担が大きい。 事業と従業員を守れたという安堵感や、新たなスタートへの希望が持てる。
1.2.1 M&Aによる現金の獲得と債務整理の可能性

M&Aの最大のメリットは、事業を「価値あるもの」として売却できる点にあります。事業清算が資産をバラバラにして処分する「引き算」の精算であるのに対し、M&Aは事業の将来性やブランド価値を含めて評価する「足し算」の取引です。これにより、たとえ赤字であっても売却対価(創業者利潤)を得られる可能性があります。

その現金で借入金を返済し、連帯保証を解消できれば、経営者は債務のプレッシャーから解放され、新たな人生の再スタートを切るための資金を確保することも夢ではありません。

1.2.2 赤字でも売却が可能な「事業価値」の源泉

「赤字のジムに価値などない」と考えるのは早計です。買い手企業は、現在の損益計算書(PL)だけでなく、貴社のジムが持つ様々な無形資産に価値を見出します。例えば、以下のような要素は、買い手にとって大きな魅力となり得ます。

  • 顧客基盤:長年通い続けている優良な会員リストは、安定した収益源として高く評価されます。
  • 好立地:駅近や人口密集地など、東京都内・神奈川県内の好立地にある店舗の賃借権は、それ自体が価値となります。
  • 人材:指導力や顧客からの信頼が厚い優秀なトレーナー陣は、事業の核となる重要な資産です。
  • ブランド・評判:地域で築き上げた良好なブランドイメージや口コミは、新規集客コストを抑える上で有利に働きます。

これらの価値を正しく評価し、最適な買い手を見つけることができれば、事業清算という最悪の事態を回避し、すべての関係者にとってより良い未来を切り開くことが可能になるのです。

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2. 赤字「パーソナルジム」をM&Aで売却する:「事業価値」の再評価
赤字事業でも価値がある理由:シナジー効果 赤字パーソナルジム 既存会員 ストック収益源 好立地 賃借権・駅近 設備 マシン・内装 会計上:赤字 単体では価値低 M&A シナジー効果 ✓ コスト削減 ✓ 広告効率化 ✓ LTV向上 ✓ 本部機能共有 ✓ 初期投資圧縮 ✓ 迅速な展開 1+1 > 2 買い手企業の評価 会員資産 安定収益確保 立地取得 時間コスト削減 即戦力化 設備投資不要 統合後:黒字化 事業価値あり 赤字でも潜在価値あり → M&Aによる事業継続・売却益の可能性

「赤字だから事業価値はない」「事業清算しか道はない」とお考えではないでしょうか。しかし、その判断は早計かもしれません。会計上の赤字や債務超過であっても、パーソナルジム事業には買い手(譲受企業)にとって魅力的な「潜在的な価値」が眠っているケースが数多く存在します。

事業清算は資産をゼロにする手続きですが、M&A(事業譲渡)は事業を未来へ繋ぎ、経営者様の手元に現金を残す可能性を秘めた選択肢です。この章では、赤字のパーソナルジムが持つ「事業価値」を再評価し、M&Aによる売却の可能性を探ります。

2.1 赤字店舗でも買い手がつく理由:シナジー効果の評価

買い手企業が赤字事業を買収する最大の理由は、自社の既存事業と組み合わせることで生まれる「シナジー効果」にあります。これは「1+1」が2以上になる相乗効果を指し、買い手は単体の事業価値だけでなく、統合後に生まれる付加価値に投資するのです。

例えば、複数の店舗を運営する大手フィットネス企業が貴社のジムを買収した場合、広告宣伝費の効率化、本部機能(経理・人事)の共有によるコスト削減、人材の最適配置など、様々なシナジーが期待できます。

2.1.1 既存会員基盤(ストック収益)と会員LTVの潜在価値

パーソナルジムの最も重要な資産の一つが「既存会員」です。たとえ現状が赤字でも、毎月安定した会費収入が見込める会員基盤は、事業の安定性を示す「ストック収益」として高く評価されます。

買い手は、この会員基盤に対して自社のマーケティング手法や新たなサービス(例:オンライン食事指導、サプリメント販売)を投入することで、顧客一人当たりの生涯価値(LTV:Life Time Value)を向上させ、収益性を改善できると考えています。

現在の会員数と月額会費だけでなく、平均継続期間や退会率(チャーンレート)といったデータも、事業の潜在価値を示す重要な指標となります。

2.1.2 東京都・神奈川県内における好立地店舗の賃借権

特に人口が密集し、競争が激しい東京都・神奈川県において、「立地」は極めて重要な経営資源です。駅からのアクセスが良い、あるいは富裕層が多く住むエリアにある店舗は、それ自体が大きな価値を持ちます。

新規で同等の立地に店舗を構える場合、高額な保証金や内装工事費、設備投資が必要となりますが、M&Aによって事業を譲り受ける場合、これらの初期投資(イニシャルコスト)を大幅に圧縮できます。店舗の賃借権を引き継げることは、買い手にとって迅速な事業展開を可能にする大きなメリットなのです。

新規出店とM&Aにおける初期投資比較(モデルケース)
項目 新規出店の場合 M&A(事業譲渡)の場合
物件取得費(保証金・礼金等) 約200万円~500万円 譲渡対価に含まれる(追加費用なし)
内装工事費 約300万円~800万円 不要(既存設備を活用)
トレーニングマシン購入費 約200万円~600万円 譲渡対価に含まれる(追加費用なし)
合計初期投資 約700万円~1,900万円 譲渡対価のみ
2.2 M&A交渉における「事業清算」リスクのコントロール

赤字事業のM&Aを成功させるためには、買い手が懸念するリスクを事前に把握し、適切にコントロールすることが不可欠です。財務状況や事業運営の透明性を高め、買い手に安心感を与えることが、スムーズな交渉と適正な価格での売却に繋がります。「事業清算」という最悪のシナリオを回避するためにも、丁寧な準備が求められます。

2.2.1 BS(貸借対照表)整理:簿外債務と固定資産の取り扱い

M&Aの交渉前には、貸借対照表(BS)を精査し、クリーンな状態にしておくことが重要です。特に、帳簿には記載されていない「簿外債務」(例:未払いの残業代、社会保険料の滞納、リース契約の残債務など)の存在は、交渉の大きな障害となります。これらの債務は正直に開示し、整理・清算の方針を明確にする必要があります。

また、トレーニングマシンなどの固定資産については、減価償却後の簿価ではなく、現在の市場価値(時価)を把握し、リスト化しておくことで、事業価値の算出がスムーズに進みます。

2.2.2 属人性(キーマンリスク)を排除した業務プロセスの提示

パーソナルジム経営において、特定の人気トレーナーに売上の大部分を依存しているケースは少なくありません。これは「属人性」が高い状態であり、そのトレーナーが退職した場合に事業が立ち行かなくなる「キーマンリスク」として、買い手から懸念されます。

このリスクを低減させるためには、トレーニングメソッドや顧客管理方法をマニュアル化・システム化し、「誰が担当しても一定のサービス品質を担保できる仕組み」が構築されていることをアピールすることが有効です。標準化された業務プロセスは、事業の再現性と継続性を示す証拠となり、事業価値を高める要因となります。

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3. 「パーソナルジム」の赤字M&A成功術:最適な買い手選定と「事業清算」の回避

パーソナルジムの事業清算を検討する前に、M&Aによる事業売却という選択肢を真剣に考えるべきです。赤字であっても、あなたのジムには買い手にとって魅力的な価値が眠っている可能性があります。

事業清算では資産を現金化するしかありませんが、M&Aであれば事業そのものを未来へ繋ぎ、創業者利益を得ることも夢ではありません。成功の鍵は、自社の価値を正しく理解し、最適な買い手を見つけ出す戦略にあります。

ここでは、東京都・神奈川県で赤字のパーソナルジムがM&Aを成功させるための、買い手選定の視点と具体的な交渉術について詳しく解説します。

3.1 赤字事業のM&Aを望む買い手(譲受企業)の狙い

「赤字のジムをわざわざ買う企業などあるのだろうか」と疑問に思うかもしれません。しかし、買い手は現在の収支状況だけでなく、自社のリソースと組み合わせることで生まれる「シナジー効果」に大きな価値を見出します。買い手の狙いを理解することは、効果的なアプローチと交渉の第一歩となります。

主な買い手候補とその狙いは、以下の通りです。

買い手(譲受企業)のタイプ M&Aの主な狙い 売り手(貴社)にとってのメリット
同業大手・中堅企業 エリア展開の加速(ドミナント戦略)、競合の排除、優秀なトレーナー人材の獲得、スケールメリットによるコスト削減 業界への理解が深く交渉がスムーズ。従業員の雇用が維持されやすい。既存の運営ノウハウを活かせる可能性がある。
異業種(IT・Webマーケティング企業) 自社の集客ノウハウや顧客管理システムを投入し、事業を再生させる(DX化)。ヘルスケア市場への新規参入。 デジタル化による業務効率化と集客力向上が期待できる。自社にない視点での事業成長が見込める。
異業種(不動産会社) 自社保有物件の有効活用(空室対策)。安定したテナント収益の確保。 物件オーナーが買い手となる場合、賃料交渉などで有利になる可能性がある。
異業種(美容・健康関連企業) 既存顧客へのクロスセル(例:エステ顧客へジムを案内)。サービスの多角化による顧客単価向上。 新たな顧客層の獲得や、サービス連携による付加価値向上が期待できる。
3.1.1 同業大手による競合排除とスケールメリットの追求

東京都や神奈川県といった競争の激しいエリアでは、同業の大手・中堅企業がM&Aを積極的に活用しています。彼らの目的は、単に店舗数を増やすことだけではありません。特定エリアでのシェアを急速に高める「ドミナント戦略」や、将来の価格競争相手を減らす「競合排除」という明確な戦略があります。

また、広告宣伝費や本部管理費、トレーニング機器の仕入れコストなどを一元化することで、1店舗あたりの運営コストを大幅に削減できる「スケールメリット」も大きな魅力です。貴社のジムが持つ立地や顧客基盤、そして何より優秀なトレーナーは、彼らにとって即戦力となる貴重な経営資源なのです。

3.1.2 異業種(不動産・IT)による新規事業参入の足掛かり

近年増加しているのが、異業種からのM&Aです。例えば、IT企業は自社が持つWebマーケティング技術や予約・顧客管理システムを導入することで、既存のパーソナルジムが抱える集客や運営の課題を解決し、短期間で黒字化できると見込んでいます。彼らにとって、赤字のジムは安価に事業の「箱」を手に入れ、自社の強みを試す絶好の機会となります。

また、不動産会社が自社保有物件の空室対策としてパーソナルジムを買収するケースもあります。これは、事業の収益性だけでなく、不動産価値の維持・向上という別の視点が加わるため、売り手にとって有利な条件を引き出せる可能性があります。

3.2 厳しい状況下でのM&A交渉術:価額決定のポイント

赤字事業の売却交渉は、買い手優位の状況で進むことが少なくありません。しかし、いくつかの重要なポイントを押さえることで、一方的に不利な条件をのむことを避け、事業清算を上回る経済的メリットを確保することが可能です。特に従業員の処遇と最終契約書の詳細については、細心の注意を払う必要があります。

3.2.1 トレーナー・従業員の継続雇用を条件とした交渉

パーソナルジムの価値の源泉は、設備や立地以上に「人」、すなわち優秀なトレーナーやスタッフにあります。顧客はトレーナーを信頼して通い続けます。この「属人性」はリスクであると同時に、交渉における強力なカードにもなり得ます。

交渉の初期段階で、従業員の継続雇用(特にキーパーソンとなるトレーナー)をM&Aの重要な条件として明確に提示しましょう。これは単なる経営者の情けではなく、「従業員の離職は事業価値の毀損に直結するため、雇用維持は買い手にとってもメリットがある」という論理的なアプローチが重要です。

従業員のスキルや顧客からの信頼度を客観的なデータで示すことで、人材の価値を譲渡価格に反映させる交渉も可能になります。

3.2.2 最終契約書(SPA)における価格調整条項の注意点

M&Aの最終契約書(事業譲渡契約書や株式譲渡契約書、通称SPA)には、譲渡価格を最終的に確定させるための「価格調整条項」が盛り込まれることが一般的です。特に赤字事業の場合、買い手は将来のリスクを懸念し、売り手にとって不利な条項を求めてくる傾向があります。

注意すべきは、運転資本(売掛金など)や負債の定義です。例えば、未利用の回数券や月会費の前受金が負債として計上され、譲渡価格から大きく差し引かれることがあります。契約締結前に、会計や法務の専門家を交え、以下の点を確認することが不可欠です。

  • 価格調整の基準日と計算方法:いつの時点の貸借対照表(BS)を基準にするのか、運転資本の定義は明確か。

  • 表明保証:開示した情報が真実であると保証する条項です。簿外債務(未払いの残業代など)がないか、リース契約の内容は正確かなど、徹底した自己レビューが必要です。違反した場合、損害賠償を請求されるリスクがあります。

  • アーンアウト条項:譲渡後の業績が一定の目標を達成した場合に、追加の対価が支払われる仕組みです。一見魅力的に見えますが、達成条件が非現実的でないか、業績の測定方法が公平かなどを慎重に吟味する必要があります。

これらの条項を安易に受け入れると、最終的に手元に残る現金が想定より大幅に少なくなり、事業清算をした場合と大差ない結果に終わる危険性すらあります。専門家の助言を得ながら、粘り強く交渉に臨む姿勢が求められます。

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4. M&Aによる「パーソナルジム」の「事業清算」阻止:クロージングと実務

M&Aの交渉が基本合意に至ると、最終契約の締結(クロージング)に向けて具体的な実務プロセスが進行します。この段階は、事業清算を完全に回避し、パーソナルジムの未来を確かなものにするための最終関門です。

特に、買い手による事業内容の精査である「デューデリジェンス(DD)」と、M&A成立後の統合プロセス「PMI」は、赤字事業の再生において極めて重要な意味を持ちます。ここでは、事業清算の瀬戸際にある経営者が知っておくべき、クロージングと実務の要点を解説します。

4.1 デューデリジェンス(DD)で問われる赤字要因の開示

デューデリジェンス(DD)とは、買い手(譲受企業)が、売り手(譲渡企業)の事業価値やリスクを詳細に調査する「買収監査」のことです。弁護士や公認会計士などの専門家を交えて行われ、財務・法務・ビジネスの各側面から厳しくチェックされます。

赤字のパーソナルジムの場合、このDDにおいて「なぜ赤字に陥ったのか」という要因を誠実に、かつ客観的なデータに基づいて開示することが、買い手との信頼関係を築き、最終契約へと進むための鍵となります。情報を隠蔽したり、不正確な説明をしたりすることは、ディールブレイク(交渉決裂)の最大の原因となるため、細心の注意が必要です。

4.1.1 顧客離反率(チャーンレート)と解約理由の明確化

パーソナルジムの事業価値の源泉は、言うまでもなく「会員基盤」です。そのため、買い手は顧客離反率(チャーンレート)とその原因を最重要項目の一つとして精査します。月々の新規入会者数と退会者数を正確に提示し、チャーンレートを算出しておく必要があります。

なぜ顧客が離れてしまうのか、その理由を「トレーナーとの相性」「料金体系への不満」「競合ジムへの乗り換え」「立地」といった具体的な項目で分析し、可能であれば退会者アンケートなどの客観的資料を添えて説明することが求められます。

赤字の根本原因を正確に把握し、正直に伝える姿勢が、買い手にとって「再生可能」という判断材料を与えるのです。

4.1.2 物件契約(賃貸借)と設備リース契約の適法性チェック

東京都内や神奈川県の駅近など、好立地の店舗はそれ自体が大きな資産価値を持ちます。法務DDでは、店舗の賃貸借契約書が徹底的に確認されます。契約期間、更新条件、賃料、そして特に重要なのが「事業譲渡や株主変更時における貸主の承諾」に関する条項です。

この承諾が得られない場合、M&Aが成立しても店舗の運営が継続できなくなるリスクがあります。また、トレーニングマシンなどの設備リース契約についても、残債務の額、契約の承継条件、所有権の帰属などが精査対象となります。これらの契約関係を整理し、法的に問題がないことを明確に示すことが、スムーズなクロージングに不可欠です。

4.2 M&A後のPMI:スポンサーによる「事業清算」リスクの低減

PMI(Post Merger Integration)とは、M&A成立後に行われる経営統合プロセスのことです。M&Aは契約締結がゴールではなく、買い手の経営資源を投入し、シナジー効果を創出して事業を成長させるPMIの成功こそが真の目的です。事業清算寸前だったパーソナルジムにとって、このPMIは再生への具体的な道のりそのものです。

資金力やノウハウを持つ買い手(スポンサー)の支援を受けることで、自社単独では不可能だった経営改善が実現し、事業清算のリスクは大幅に低減されます。

4.2.1 資金力強化と新たな営業戦略の実行

赤字経営の最大の足枷は、運転資金の枯渇です。M&Aにより、買い手の潤沢な資金力が注入されることで、資金繰りは劇的に改善します。これにより、これまで費用を捻出できずに見送っていた施策の実行が可能になります。

例えば、老朽化したトレーニングマシンの刷新、内装のリニューアルによるブランドイメージの向上、Web広告やSNSマーケティングへの積極的な投資による新規顧客の獲得などが挙げられます。

また、買い手の既存事業と連携した新たな営業戦略(例:不動産会社が買い手の場合、管理物件の入居者向け優待プランを提供するなど)を展開し、新たな収益源を確保することも可能になります。

4.2.2 ITシステムや集客ノウハウの導入による早期の黒字化

大手企業やIT関連企業が買い手となった場合、彼らが持つ先進的なシステムやマーケティングノウハウが導入され、運営体制は大きく変革します。これにより、属人的な経営から脱却し、効率的で安定した収益基盤の構築を目指します。具体的には、以下のような施策が考えられます。

改善領域 具体的な施策例 期待される効果
業務効率化 オンライン予約管理システムや顧客管理(CRM)ツールの導入 予約対応や顧客情報の管理工数を削減し、トレーナーがセッションに集中できる環境を整備。顧客データの分析によるサービス改善。
集客力強化 SEO対策を施したウェブサイトへの刷新、データに基づくWeb広告の運用、SNSアカウントの戦略的活用 「地域名+パーソナルジム」での検索上位表示を実現し、オンラインからの問い合わせを増加。ターゲット層へ効率的にアプローチ。
人材育成 大手基準の研修プログラムの導入、オンラインでの学習コンテンツ提供、明確な評価制度とキャリアパスの整備 トレーナーの指導スキルとモチベーションを向上させ、サービス品質の標準化と従業員の定着率向上に貢献。

これらのPMI施策を通じて、パーソナルジムは新たな強みを獲得し、早期の黒字化と持続的な成長軌道に乗ることが可能となります。これは、事業清算という結末とは全く異なる、希望ある未来への第一歩です。

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5. まとめ

東京都・神奈川県でパーソナルジムを経営し、赤字の継続から事業清算を検討されている経営者様も、諦めるのはまだ早いかもしれません。本記事で解説した通り、事業清算は経営者個人に連帯保証債務などの重い負担を残しますが、M&Aによる事業売却であれば、未来を切り開く新たな選択肢となり得ます。

赤字という事実だけで、事業の価値がゼロになるわけではありません。その理由は、長年築き上げた会員基盤、トレーナーの専門性、そして駅近などの好立地な店舗といった無形の資産にあります。

これらの資産は、事業拡大を目指す同業大手や、フィットネス業界への新規参入を狙う異業種の企業にとって、大きなシナジー効果を生む魅力的な買収対象となるのです。

事業清算では資産を処分しても負債が残ることが多い一方、M&Aが成功すれば事業を現金化し、借入金の整理や連帯保証の解除につながる可能性があります。何より、従業員の雇用とお客様へのサービスを維持できることは、経営者としての社会的責任を果たし、精神的な負担を大きく軽減することにも繋がります。

もしあなたが事業清算の瀬戸際に立たされているのであれば、まずは一度、M&A仲介会社などの専門家に相談することをお勧めします。事業価値がこれ以上毀損する前に適切な一手を打つことが、最良の形で事業を次代へ繋ぎ、ご自身の再起を図るための重要な鍵となります。

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