M&Aデューデリジェンス必要書類を整理|財務・法務・労務・ITのDD準備

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公開日:2025年9月26日最終更新日:2026年8月10日
M&Aのデューデリジェンスでは、財務・税務・法務・事業・人事労務・ITの資料を、立場と時期に応じて揃える必要があります。準備期間、優先順位、不足時の対応を整理します。
1. デューデリジェンスで備えるM&Aの必要書類デューデリジェンス(DD)は、最終契約前に買い手が対象会社の価値とリスクを確認する調査です。基本合意書の締結後に実施されることが多く、調査結果は譲渡価格、表明保証、補償条項、クロージング条件に反映されます。
準備範囲は、次の3軸で切り分けると整理しやすくなります。売り手か買い手か、DD開始前か開始後か、全案件で求められる必須資料か案件別の追加資料か、という分類です。
軸 | 基本的な考え方 |
|---|---|
立場 | 売り手は開示・説明、買い手は依頼・分析・承認を担当 |
時期 | 開始前は棚卸し、開始後は提出・質問回答・更新 |
範囲 | 必須資料を先行し、業種・スキーム別の資料を追加 |
資料不足は単なる事務上の遅れではありません。実態を確認できない項目が増えるほど、買い手は不確実性を価格調整、追加の表明保証、留保金などで補おうとします。
1-1. M&AのDDで確認される企業価値とリスク
買い手は、決算書の数値が実態を示すか、正常収益力がどの程度かを確認します。加えて、簿外債務、偶発債務、訴訟、契約解除、許認可失効、事業継続性、キーパーソン流出などを調査します。
たとえば未払残業代や退職給付の積立不足は、帳簿に表れない負債です。重要契約のチェンジオブコントロール条項は、株主変更によって契約解除や承諾取得が必要になるリスクを示します。
1-2. 売り手と買い手で異なる必要書類の範囲売り手は、自社の財務・契約・労務・IT資料を集め、内容を説明する立場です。資料がない場合は、代替資料と未確認事項を一覧化し、隠さず開示します。
買い手は、分野別の依頼資料リスト、評価仮説、質問票、専門家の分析資料、取締役会資料、買収資金計画、PMI計画などを準備します。売り手資料を受け取るだけでなく、確認結果を投資判断へつなげます。
1-3. 必須資料と案件別追加資料を切り分ける方法必須資料は、決算書、試算表、税務申告書、登記簿謄本、定款、株主名簿、主要契約書、許認可、人事資料です。まずこの一式を揃え、抜けを確認します。
事業譲渡では資産・契約・従業員の移転資料が増えます。製造業なら品質・設備、建設業なら工事台帳、IT企業ならソースコードやクラウド契約など、事業の価値を左右する資料を追加します。
2. 財務税務DDの必要書類を期間別に整理財務・税務DDでは、過去の推移と直近の変化を同時に確認できる資料が必要です。一般的な目安は、決算書と税務申告書が過去3〜5期、月次試算表が直近12〜24か月です。
資料 | 期間目安 | 確認目的 | 担当 | 優先度 |
|---|---|---|---|---|
決算書 | 3〜5期 | 収益・財政状態の推移 | 経理 | 最優先 |
月次試算表 | 12〜24か月 | 直近業績と季節性 | 経理 | 最優先 |
税務申告書 | 3〜5期 | 申告・追徴リスク | 税理士 | 最優先 |
総勘定元帳 | 依頼範囲による | 仕訳と取引の裏付け | 経理 | 高 |
契約・借入資料 | 現存分すべて | 債務・担保・保証 | 財務・総務 | 高 |
担当部署が資料を保管していない場合は、経理、総務、営業、情報システムの責任者を一人ずつ置きます。資料の存在だけでなく、基準日、対象期間、最新版かどうかも管理対象にします。
2-1. 決算書と試算表で収益の実態を検証する対象資料は、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書、株主資本等変動計算書、勘定科目内訳明細書、総勘定元帳です。月次試算表は直近12〜24か月、資金繰り表は直近の実績と今後の計画を準備します。
確認するのは、売上の計上時期、粗利率、固定費、役員報酬、一時的な損益、運転資本、設備投資です。決算書と月次試算表に差がある場合は、決算整理仕訳と差異の理由を説明書にまとめます。
2-2. 税務申告書と納税資料で税務リスクを確認法人税、地方法人税、法人事業税、消費税、源泉所得税の申告書一式を、通常は過去3〜5期分準備します。別表、届出書、修正申告書、更正通知書も対象に含めます。
税務調査の通知、指摘事項、是認通知、納税証明書、未納税額の資料も必要です。繰越欠損金、関連会社取引、消費税の課税区分は、スキームによって価値や負担が変わるため、税理士の確認を受けます。
2-3. 借入金や簿外債務を裏付ける資料の集め方借入契約書、残高明細、返済予定表、金利条件、担保設定、保証契約、金融機関との合意書を集めます。役員借入金・貸付金、リース契約、割賦契約、未払費用、保証債務も一覧化します。
資料が見つからない場合は、金融機関の残高証明、通帳、返済予定表の再発行を依頼します。経営者保証、訴訟、製品保証、損害賠償などは、金額が確定していなくても偶発債務として説明します。
2-4. 財務資料が不足した場合の代替説明方法決算書を紛失した場合は、税務署への申告書控え、税理士の保存データ、金融機関提出資料を確認します。売上や費用の裏付けには、通帳、請求書、領収書、販売管理データを組み合わせます。
会計処理が年度ごとに異なる場合は、仕訳一覧と差異説明書を作成します。代替資料であること、確認できない範囲、今後の再調査方法を明記すると、資料の欠落そのものより説明不足を防げます。
3. 法務と事業DDで集める契約許認可資料
法務デューデリジェンスは、会社の権利関係、契約上の義務、許認可、知的財産、訴訟を確認します。ビジネスデューデリジェンスは、顧客構成、競争力、収益モデル、計画の実現可能性を検証します。
株式譲渡では会社が契約主体として残りますが、株主変更を理由に承諾が必要となる契約があります。事業譲渡では、対象資産、契約、従業員、許認可を個別に移転するため、承諾書や新契約が増えます。
スキーム | 主な確認資料 | 注意点 |
|---|---|---|
株式譲渡 | 株主名簿、株式異動履歴、主要契約 | COC条項、株式の権利関係 |
事業譲渡 | 資産一覧、契約承継、転籍同意 | 個別承諾、許認可の再取得 |
登記事項証明書、定款、株主名簿、株主間契約、株式異動履歴、印鑑証明書を準備します。株主総会・取締役会議事録は、重要な借入、役員選任、利益相反、株式発行などの決議を確認するために必要です。
関連会社がある場合は、各社の登記簿謄本、定款、株主構成、取引契約、資金貸借資料も対象です。登記内容と実際の役員・株主が一致しない場合は、原因と是正予定を説明します。
3-2. 取引契約と許認可の承継リスクを確認する主要顧客・仕入先の基本契約、販売代理店契約、業務委託契約、賃貸借契約、リース契約、秘密保持契約を集めます。契約期間、更新、解除、違約金、独占、最低購入量、COC条項を一覧化します。
許認可証、登録証、更新記録、行政への届出、行政処分の有無も確認します。許認可が自動承継されない場合は、申請期間、必要資格、取引完了前後の手続き、承諾取得の担当者を明確にします。
3-3. 顧客構成と事業計画を裏付ける営業資料顧客別・商品別・地域別の売上、受注残、案件一覧、解約率、価格表、販売チャネル、主要仕入先を準備します。顧客名は秘密保持の範囲や段階的開示に応じて匿名化できます。
中期事業計画は、売上、粗利、固定費、採用、設備投資の前提を示します。過去の計画と実績の差を説明し、シナジーは売上増加やコスト削減だけでなく、実現条件と期間まで分解します。
3-4. 製造建設IT業で追加される資料の違い製造業では、設備台帳、品質管理記録、検査記録、製造工程、製品保証、環境関連資料を確認します。建設業では、許可証、工事台帳、受注・完成工事一覧、入札資格、現場別損益、労災資料が重要です。
IT企業では、ソースコードの権利関係、システム構成、クラウド契約、ライセンス、障害履歴を集めます。サービス業では、店舗賃貸借、営業許可、個人情報管理、従業員配置、顧客・会員データの取扱いを確認します。
4. 人事労務とIT資料で見落とす統合課題人事・労務とITは、買収後のPMIに直結する分野です。契約書や給与資料だけでなく、誰が業務を担い、どのシステムに依存し、統合にいくらの投資が必要かまで確認します。
特に重要なのは、未払残業、退職給付、キーパーソン依存、アクセス権限、個人情報、老朽化システムです。DDの資料は、リスク発見だけでなく、クロージング後の100日計画を作る材料になります。
4-1. 従業員と給与を確認する労務資料の範囲従業員名簿、組織図、雇用契約書、賃金台帳、給与・賞与一覧、就業規則、給与規程、退職金規程、36協定を準備します。社会保険・労働保険の加入資料、納付記録、労働協約も確認対象です。
役員報酬、福利厚生、派遣・業務委託、外国人雇用、休職者、長期欠勤者も一覧化します。個人情報は必要最小限の開示とし、閲覧権限を限定します。
4-2. 未払残業と人材流出を示す労務リスク勤怠記録、タイムカード、残業申請、賃金台帳を照合し、実労働時間と支給額の差を確認します。未払残業代は直近の複数年度を対象に、専門家が算定方法と対象者を確認します。
退職者一覧、休職履歴、労使紛争、ハラスメント相談、キーパーソンの継続意向も重要です。依存度が高い業務は、担当者、手順書、引継ぎ期間、代替要員を整理します。
4-3. システム構成と情報管理を確認するIT資料システム構成図、ネットワーク図、IT資産台帳、ソフトウェア一覧、保守契約、クラウド利用一覧、ライセンス契約を準備します。会計、販売、給与、製造、顧客管理など基幹システムの連携も確認します。
アクセス権限、ログ管理、バックアップ、障害履歴、脆弱性対応、個人情報管理規程、事故記録も対象です。統合に必要な追加投資、契約変更、データ移行、停止可能時間を見積もります。
4-4. 売り手買い手専門家の資料担当分担表担当 | 役割 |
|---|---|
売り手経営者 | 重要事項の説明、開示判断、最終承認 |
売り手経理・総務 | 財務、税務、法務、人事資料の収集と更新 |
買い手案件責任者 | 依頼リスト、期限、質問、社内報告の管理 |
会計・税務専門家 | 収益力、税務、簿外債務の分析 |
弁護士・IT専門家 | 契約、許認可、権利、システム、情報管理の確認 |
DD開始30日前を起点に、資料棚卸し、優先収集、初回開示、追加質問、最終更新の順で進めます。最初から完璧を目指すより、重大リスクに直結する資料を先に提出する方が、調査全体を止めません。
5-1. DD開始前から報告書までの収集スケジュール時期 | 作業 | 優先事項 |
|---|---|---|
30日前 | 資料棚卸し・担当決定 | 決算書、税務、登記、主要契約 |
21日前 | 不足資料の再発行・整理 | 借入、許認可、労務 |
14日前 | VDRへ初回開示 | 専門家の事前レビュー |
DD期間 | 面談・質問回答 | 差異説明、追加資料 |
最終段階 | 基準日更新・報告書確認 | 契約条件への反映 |
売り手は経営者インタビューで説明する事項を先に整理します。買い手は、評価仮説と質問票を作り、重要度の高い論点から専門家へ確認を依頼します。
5-2. VDRのフォルダ構成と命名規則を統一するVDRは、財務、税務、法務、事業、人事労務、IT、許認可、不動産、Q&Aのフォルダに分けます。フォルダ番号を固定すると、参加者が変わっても資料の場所がぶれません。
ファイル名は「分類_資料名_対象期間または基準日_版数_機密区分」で統一します。例は「財務_月次試算表_2025年1月〜2026年12月_v2_機密」です。
閲覧、ダウンロード、印刷の権限を役割ごとに設定します。顧客名簿、給与情報、ソースコードなどは、対象者と開示時期を限定し、アクセスログを保存します。
5-3. 資料提出管理表で未提出と更新漏れを防ぐ管理表には、資料名、分野、対象期間、提出目的、担当者、提出期限、提出状況、版数、更新日、差戻し理由、質問番号を記録します。状態は「未着手」「収集中」「提出済み」「差戻し」「完了」の5段階が扱いやすいです。
提出済みでも、DD基準日後に業績、借入、訴訟、従業員数が変われば更新します。買い手側は、依頼資料と受領資料の対応関係を管理し、未回答の質問を週次で確認します。
5-4. 資料不足と提出遅延が交渉へ及ぼす影響資料の不足や遅延は、追加質問の増加、専門家の再確認、報告書の遅れにつながります。結果として、最終契約の延期、価格調整、追加表明保証、留保金が発生する可能性があります。
重大な契約違反や許認可問題が後から判明すれば、交渉停止や破談も起こり得ます。不足を把握した時点で、代替資料、金額影響、是正時期、責任者を提示することが最も実務的な対応です。
6. M&Aデューデリジェンス必要書類のよくある質問
6-1. 必要書類は何年分を準備すればよいですか
決算書と税務申告書は過去3〜5期、月次試算表は直近12〜24か月が一般的な目安です。契約、許認可、労務、ITは現存する資料を対象とし、買い手の依頼範囲に合わせて追加します。
6-2. 紛失した契約書や議事録はどう補いますか相手方の写し、登記記録、銀行記録、社内台帳、請求書、メール、議事録案を組み合わせます。完全に確認できない場合は、経営者説明書に経緯と未確認事項を明記します。
6-3. 買い手はDD開始前に何を用意しますか依頼資料リスト、評価仮説、質問票、専門家の役割分担、VDR権限、案件スケジュールを準備します。社内稟議には、買収目的、価値評価、資金計画、リスク、PMI方針を整理します。
6-4. 専門家にはいつ資料確認を依頼しますか基本合意前後に予備確認を依頼し、DD開始時に財務・税務・法務・人事・ITの領域別レビューを行います。最終契約前には、報告書の論点が価格や表明保証へ反映されているか確認します。
7. おすすめ商品: 手取りを重視するならM&A PMI AGENTの特徴と選び方売り手は譲渡価格だけでなく、仲介手数料、税金、実費、引継ぎ条件を差し引いた手取り額でM&Aを比較する必要があります。DD対応の範囲や専門家費用も、最終的な手残りに影響します。
手取りを重視するならM&A PMI AGENTは、売却価格ではなく「手取り額」で仲介会社や料金体系を比較できる無料オンライン相談を提供しています。初回相談、着手金、中間金は無料で、最低報酬は500万円〜です。
他社から提案書や見積りを受け取っている場合も、仲介契約前であれば、最低報酬、成功報酬の計算方法、テール条項、買い手探索方針を比較できます。買い手候補への打診から条件交渉、DD、最終契約、クロージングまで支援する点も特徴です。
事業譲渡では、株式譲渡と異なる税金、契約承継、従業員の引継ぎ条件が生じます。M&A PMI AGENTは、ビジネスDD、PMI、企業再生、経営改善まで含めて周辺領域を確認し、手取り額に影響する条件を整理します。
料金は案件内容、譲渡スキーム、契約条件で変わるため、具体的な成功報酬や実費は相談時に確認します。複数社を比べる際は、最低報酬だけでなく、報酬の計算基準とDD・契約支援の範囲を同じ条件で並べることが重要です。
8. まとめM&AのDDでは、決算書・税務申告書を過去3〜5期、月次試算表を12〜24か月分準備するのが基本的な目安です。法務、事業、人事労務、IT資料は、契約、許認可、業種、統合方針に応じて追加します。
最初に資料を棚卸しし、担当者、対象期間、提出期限、版数を管理表へ登録してください。不足資料は隠さず、代替資料と差異説明書を添えて早期に共有することが、価格調整や交渉遅延を抑える方法です。
売り手はセルサイドDD、買い手は専門家による分野別レビューを早めに開始します。必要書類を単なる提出物ではなく、企業価値とM&A後の統合計画を裏付ける証拠として整備することが、成約までの道筋を安定させます。


