飲食業界の最新M&A仲介動向と成功事例
飲食業界におけるM&A仲介の現状や今後の動向を理解したいとお考えですか?この記事では、M&A仲介会社の種類、選び方、仲介の流れに加え、コロナ禍を経て変化する飲食業界のM&Aの現状と将来展望を解説します。
大手M&A仲介会社と中小M&A仲介会社のメリット・デメリットを比較検討し、M&Aアドバイザリーの役割についても理解を深めることができます。さらに、ロイヤルホールディングスのような外食チェーンによる地方飲食店の買収や、老舗料亭による事業承継といったM&Aの成功事例も紹介。
M&A増加の背景や飲食M&A特有のメリット・デメリットを理解することで、M&A仲介を活用した飲食業界の未来像を描けるようになるでしょう。
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編集者の紹介
株式会社M&A PMI AGENT
代表取締役 日下部 興靖
上場企業のグループ会社の取締役を4社経験。M&A・PMI業務・経営再建業務などを10年経験し、多くの企業の業績改善を行ったM&A・PMIの専門家。3か月の経営支援にて期首予算比で売上1.8倍、利益5倍などの実績を持つ。
1. 飲食業界におけるM&A仲介の現状
飲食業界は、競争の激化、後継者不足、新型コロナウイルス感染症の影響など、様々な課題に直面しています。これらの課題を解決する手段として、M&Aが注目を集めており、M&A仲介会社の存在はますます重要になっています。
M&A仲介会社は、売却企業と買収企業のマッチング、価格交渉、契約締結まで、M&Aプロセス全体をサポートする役割を担っています。ここでは、飲食業界におけるM&A仲介の現状、種類、選び方、そしてM&Aの流れについて解説します。
M&A仲介会社は、大きく分けて大手、中小、M&Aアドバイザリーに分類されます。それぞれの特徴を理解し、自社のニーズに合った仲介会社を選ぶことが重要です。
1.1.1 大手M&A仲介会社のメリット・デメリット大手M&A仲介会社は、豊富な実績とノウハウ、幅広いネットワークを持つことが強みです。特に上場企業や大企業のM&A案件に強く、複雑な取引にも対応できます。ただし、仲介手数料が高額になる傾向があります。
メリット | デメリット |
---|---|
豊富な実績とノウハウ | 仲介手数料が高額 |
幅広いネットワーク | 小規模案件への対応が手薄な場合も |
複雑な取引への対応力 | 担当者が頻繁に変わる場合も |
中小M&A仲介会社は、大手と比較して手数料が安く、小規模な案件にも柔軟に対応できることがメリットです。地域密着型の企業も多く、地方の飲食店のM&Aに強みを持つ場合もあります。ただし、大手と比べて実績やネットワークが限られる場合もあります。
メリット | デメリット |
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仲介手数料が比較的安価 | 実績やネットワークが大手より限定的 |
小規模案件への対応力 | 専門分野が限られる場合も |
地域密着型で地方に強い場合も |
M&Aアドバイザリーは、財務や法務の専門家としてM&Aをサポートします。デューデリジェンスやバリュエーション、契約交渉など、専門的な知識が必要な業務を代行します。
M&A仲介会社と併用することで、よりスムーズなM&Aを実現できます。例えば、PwCアドバイザリー合同会社やKPMG FASなどは、飲食業界のM&Aアドバイザリーとしても実績があります。
1.2 M&A仲介の流れ
M&A仲介の流れは、大きく分けて以下のようになります。
1.2.1 仲介会社選定から契約締結までまずは、自社のニーズに合ったM&A仲介会社を選定します。複数の仲介会社に相談し、提案内容や手数料などを比較検討することが重要です。
仲介会社選定後、秘密保持契約を締結し、M&Aの目的や条件などを共有します。その後、仲介会社は候補となる買収企業または売却企業を探し、マッチングを行います。
1.2.2 デューデリジェンスとバリュエーション
マッチングが成立したら、デューデリジェンス(買収対象企業の調査)とバリュエーション(企業価値評価)を行います。デューデリジェンスでは、財務状況や法務リスクなどを詳細に調査し、買収後のリスクを把握します。バリュエーションでは、対象企業の価値を算定し、適切な買収価格を決定します。
【関連】M&AにおけるEBITDAとは?企業価値算定を理解する1.2.3 クロージング
デューデリジェンスとバリュエーションが完了したら、最終的な契約交渉を行い、契約を締結します。その後、株式譲渡や事業譲渡などの手続きを行い、M&Aが完了します。クロージング後も、PMI(Post Merger Integration:合併後統合)と呼ばれる統合プロセスが重要になります。
2. 飲食業界のM&A動向コロナ禍を経て、飲食業界は大きな変革期を迎えています。消費者の行動変化や原材料価格の高騰、人手不足など、経営を取り巻く環境は厳しさを増しており、生き残りをかけて様々な戦略が求められています。
その中で、M&Aは事業拡大や経営基盤強化、事業承継といった課題解決の有効な手段として注目を集めており、近年、飲食業界におけるM&Aは増加傾向にあります。
新型コロナウイルス感染症の流行は、飲食業界に大きな影響を与えました。外出自粛や時短営業要請により、多くの飲食店が経営難に陥り、閉店を余儀なくされるケースも少なくありませんでした。一方で、この危機を乗り越えるため、M&Aを活用する動きも活発化しました。
デリバリーやテイクアウトに強い企業が、経営難に陥った飲食店を買収するケースや、資金力のある企業が事業拡大を目的としたM&Aを行うケースなどが見られました。また、コロナ禍で変化した消費者ニーズに対応するため、新たなビジネスモデルを構築するためにM&Aを活用する動きも出てきています。
飲食業界におけるM&A増加の背景には、以下の要因が挙げられます。
- 後継者不足:少子高齢化による後継者不足は、多くの飲食店が抱える深刻な課題です。M&Aは、事業承継問題の解決策として有効な手段となります。
- 事業拡大:M&Aによって、新たなブランドや店舗網を獲得することで、迅速な事業拡大を実現できます。特に、地方展開や海外進出を目指す企業にとって、M&Aは効果的な戦略となります。
- 経営基盤強化:M&Aにより、経営資源を統合し、スケールメリットを活かすことで、経営基盤の強化を図ることができます。これにより、コスト削減や業務効率化を実現し、競争力を高めることができます。
- 事業ポートフォリオの再構築:市場環境の変化に対応するため、既存事業の売却や新規事業への進出など、事業ポートフォリオの再構築を行う企業が増えています。M&Aは、この戦略を迅速かつ効率的に実行するための手段として活用されています。
メリット | デメリット |
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新たなブランドや店舗網の獲得による迅速な事業拡大 既存顧客基盤の獲得による市場シェアの拡大 優秀な人材の確保 シナジー効果による収益向上 |
買収価格の交渉の難しさ 買収後の統合プロセスにおける課題(企業文化の違いなど) 想定外の負債やリスクの発生 デューデリジェンスの不足による失敗 |
メリット | デメリット |
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後継者不足問題の解決 事業の存続 経営資源の売却による資金調達 従業員の雇用維持 |
売却価格への不満 従業員のモチベーション低下 企業文化の変化への不安 創業者の思い入れのある事業を手放すことへの抵抗感 |
M&Aは飲食業界において、成長戦略や事業承継など、様々な目的で活用されています。ここでは、具体的な成功事例を通して、M&Aのメリットや効果を見ていきましょう。
3.1 事例1:すかいらーくホールディングスによるジョナサン買収 3.1.1 多店舗展開によるスケールメリットの獲得すかいらーくホールディングスは、ファミリーレストラン「ジョナサン」を買収することで、店舗網を拡大し、スケールメリットを活かした仕入れコストの削減や、ブランド力の向上を実現しました。
これにより、市場シェアの拡大と収益性の向上に成功しました。買収後もジョナサンブランドは維持され、すかいらーくグループ傘下として多くの顧客に利用されています。
すかいらーくホールディングスは、ジョナサンの買収によって、既存ブランドとの相乗効果も創出しました。例えば、ジョナサンの店舗網を活用して、他のグループブランドの出店を加速させたり、ジョナサンのメニュー開発ノウハウを他のブランドにも応用したりすることで、グループ全体の成長を促進しました。
3.2 事例2:ロイヤルホールディングスによるてんや買収 3.2.1 専門性を高めたブランドポートフォリオの構築ロイヤルホールディングスは、天丼チェーン「てんや」を買収することで、和食分野における専門性を高め、ブランドポートフォリオを強化しました。これにより、多様な顧客ニーズに対応できるようになり、リスク分散にも繋がりました。てんやはロイヤルホールディングス傘下で独自のブランドを維持しつつ、経営基盤の強化を実現しています。
3.2.2 新たな顧客層の獲得ロイヤルホールディングスは、てんや買収によって、これまでリーチできていなかった顧客層を獲得することに成功しました。てんやは、リーズナブルな価格帯で天丼を提供しており、幅広い年齢層に人気です。ロイヤルホールディングスは、てんやを通じて新たな顧客セグメントにアプローチし、事業の拡大を図りました。
3.3 事例3:ワタミによる介護事業参入を目的としたM&A 3.3.1 異業種への進出による事業多角化居酒屋チェーンとして知られるワタミは、介護事業への進出を目的として、複数の介護事業会社を買収しました。これは、外食産業における競争激化や、高齢化社会の進展といった社会背景を踏まえた戦略的なM&Aでした。買収を通じて介護事業のノウハウや人材を獲得し、新たな収益源を確立することに成功しました。
3.3.2 社会貢献と企業イメージの向上ワタミは、介護事業への参入によって、社会貢献にも積極的に取り組む姿勢を示しました。これは、企業イメージの向上に繋がり、新たな顧客の獲得や従業員のモチベーション向上にも貢献しました。M&Aは、事業拡大だけでなく、企業の社会的責任を果たすためにも有効な手段となります。
4. M&A仲介を活用した飲食業界の未来飲食業界におけるM&Aは、今後も活発化すると予想されます。M&A仲介会社は、売却企業と買収企業のマッチング、価格交渉、契約締結など、M&Aプロセス全体をサポートする重要な役割を担っています。
仲介会社を活用することで、M&Aをスムーズに進め、成功確率を高めることができます。飲食業界の企業は、M&Aを戦略的に活用することで、更なる成長や発展を目指していくことが重要です。
M&A仲介は、飲食業界の未来を大きく左右する重要な要素となるでしょう。人口減少や消費行動の変化、テクノロジーの進化など、飲食業界を取り巻く環境は常に変化しています。M&A仲介を活用することで、これらの変化に柔軟に対応し、持続的な成長を実現できる可能性が高まります。
5.1 今後のM&A市場予測飲食業界のM&A市場は、今後も活発に推移すると予測されています。特に、後継者不足や経営資源の不足といった課題を抱える中小企業にとっては、M&Aが事業承継や経営基盤強化の有効な手段となるでしょう。
また、コロナ禍を経てデリバリーやテイクアウト、オンライン販売といった新たなビジネスモデルが台頭しており、これらの分野でのM&Aも増加が見込まれます。テクノロジーを活用した業務効率化や顧客体験の向上もM&Aの重要なドライバーとなるでしょう。
要因 | 予測 |
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後継者不足 | 中小規模の飲食店のM&A増加 |
デジタル化の進展 | IT企業による飲食店買収、飲食店のDX推進のためのM&A増加 |
外食ニーズの多様化 | 特定のニーズに特化した飲食店のM&A増加 |
海外展開 | 日本食ブームを背景とした海外企業による日本飲食店買収 |
M&A仲介を活用することで、飲食業界はより一層の成長と発展を遂げることが期待されます。M&Aによる規模の拡大や経営資源の最適化は、競争力の強化に繋がり、新たな市場への進出やイノベーションの創出を促進するでしょう。
また、M&Aは、地域経済の活性化にも貢献すると考えられます。地方の優良な飲食企業がM&Aを通じて全国展開を果たすことで、雇用の創出や地域ブランドの確立に繋がる可能性があります。高齢化が進む地方において、M&Aによる事業承継は、地域経済の持続可能性を高める上で重要な役割を果たすでしょう。
今後、M&A仲介会社は、単なる仲介業務だけでなく、M&A後のPMI(Post Merger Integration:合併後統合)支援や経営コンサルティングといったサービス提供を通じて、飲食企業の成長を包括的にサポートしていくことが求められます。AIやデータ分析を活用したM&A戦略の提案なども、今後のM&A仲介の重要な役割となるでしょう。
6. まとめ飲食業界のM&A仲介市場は、コロナ禍の影響や後継者不足などを背景に活況を見せています。本記事では、M&A仲介会社の種類と選び方、M&Aの流れ、飲食業界のM&A動向、成功事例などを解説しました。大手M&A仲介会社は豊富な実績とノウハウを持つ一方、手数料が高額になる傾向があります。
中小M&A仲介会社は手数料が比較的安価ですが、専門分野に特化している場合が多いです。M&Aアドバイザリーは、中立的な立場で専門的なアドバイスを提供します。ロイヤルホールディングスのような外食チェーンによる地方飲食店の買収や、近江牛を提供する老舗料亭の後継者不足問題解決のためのM&Aなど、様々な事例が見られます。
M&Aは、事業拡大や事業承継など、企業の成長戦略において重要な役割を果たしています。今後のM&A市場は、飲食業界の再編や新たなビジネスモデルの創出を促進すると予測されます。