M&AにおけるEBITDAとは?企業価値算定を理解する

M&AにおけるEBITDAとは?企業価値算定を理解する

本ページの更新日について

公開日:2024年7月12日
最終更新日:2026年8月9日

M&Aで示される企業価値は、営業利益だけでは判断できません。EBITDA、EV、純有利子負債を順に確認すると、売買価格の根拠が見えます。

1. M&Aで見るEBITDAとは何を示す指標か

EBITDAは「Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation and Amortization」の略称です。読み方は「イービットディーエー」や「イービッダー」で、利払前・税引前・償却前利益を意味します。

具体的には、支払利息、法人税、減価償却費、無形固定資産の償却費を考慮する前の利益です。M&Aでは、資金調達方法や会計処理の違いを抑え、本業の収益力を比較するために使われます。

中小企業の初期的な確認では、営業利益に減価償却費を加える計算が一般的です。ただし、EBITDAは現金そのものではなく、正常収益力や将来の設備投資まで自動的に示す指標ではありません。

【文脈】M&Aで使うEBITDAの意味を 1-1. 営業利益に減価償却費を加える計算式

実務上の簡便な計算式は「EBITDA=営業利益+減価償却費」です。営業利益は損益計算書から、減価償却費は販売費及び一般管理費などの内訳から確認します。

より厳密には、当期純利益に法人税等、支払利息、減価償却費などを足し戻す方法もあります。計算方法を混在させず、どの項目を含めたかを明示することが重要です。

1-2. EBITと営業利益で異なる費用の扱い

EBITは利払前・税引前利益を指し、減価償却費を控除した後の利益です。日本企業の通常の損益計算では、営業利益がEBITに近い指標として扱われます。

EBITDAは、EBITまたは営業利益に減価償却費と償却費を加えたものです。したがって、設備投資の時期や償却方法による利益差を抑えたいときに役立ちます。

1-3. フリーキャッシュフローと混同する危険性

EBITDAは減価償却費を足し戻すため、キャッシュフローに近い利益と説明されます。しかし、税金、運転資本の増減、設備投資、借入金返済は反映していません。

フリーキャッシュフローは、税引後営業利益に非現金費用を加え、設備投資と運転資本の増減を調整したものです。EBITDAが高くても、在庫や設備に資金が固定されれば手元資金は増えません。

1-4. M&AでEBITDAが共通指標になる背景

企業ごとに借入金の量、税率、減価償却方法は異なります。純利益だけで比較すると、事業の差ではなく財務構成や会計方針の差を見てしまう可能性があります。

EBITDAは利息や税金、償却費の影響を一定程度切り離します。そのため、類似会社比較法で企業価値を比べる際の共通のものさしになります。

2. EVと株式価値をEBITDA倍率から算定する方法

基本関係は「EV=EBITDA×EV/EBITDA倍率」です。さらに「株式価値=EV−純有利子負債等」と整理すると、企業価値と株主に帰属する価値を分けて考えられます。

EVは、事業を引き継ぐための価値を示す概念です。一方、株式価値は、借入金などを調整した後に株主へ帰属する価値であり、株式譲渡の売買価格に近い位置づけです。

実務では、現預金、有利子負債、リース債務、少数株主持分、非事業用資産なども確認します。契約上の価格調整方法によって、最終的な支払額は試算値と異なることがあります。

【文脈】EBITDA倍率からEVと株式価値へ進む計算の流れを示し 2-1. EVと事業価値と株式価値の関係を整理

事業価値は、事業活動が将来生み出す価値を指します。EVは事業価値に近い概念で、株式価値はEVから純有利子負債などを控除して求めます。

たとえば、EVが2億円でも、純有利子負債が1億円あれば株式価値は1億円です。売り手が「企業価値」と呼ぶ金額が、EVなのか株式価値なのかを確認してください。

2-2. EV/EBITDA倍率を使う企業価値の算式

EV/EBITDA倍率は「EV÷EBITDA」で計算します。類似する上場企業や過去の取引事例から倍率を確認し、対象会社の調整後EBITDAに掛けてEVを推計します。

倍率は業種、規模、成長性、顧客集中度、収益の安定性などで変わります。中小企業では、上場企業の倍率をそのまま適用せず、企業規模や経営者依存を検討します。

2-3. 営業利益三千万円の数値例で価格を計算

営業利益3,000万円、減価償却費500万円なら、EBITDAは3,500万円です。EV/EBITDA倍率を5倍とすると、EVは3,500万円×5倍で1億7,500万円になります。

純有利子負債が1億円の場合、株式価値は1億7,500万円−1億円で7,500万円です。つまり、EV2億円、株式価値1億円という別の例と同じように、負債の額で両者は大きく変わります。

2-4. 倍率を投資回収年数と単純視しない理由

EV/EBITDA倍率5倍を「5年で投資回収できる」と単純に考えるのは危険です。EBITDAには税金、設備投資、運転資本、借入返済が含まれていないためです。

実際の回収可能額を知るには、フリーキャッシュフローや維持更新投資を確認します。倍率は市場水準との比較や初期スクリーニングに使い、回収計画は別途作成してください。

3. 調整後EBITDAで正常収益力を見極める実務

決算書上のEBITDAをそのまま価格算定に使うと、一時的な損益やオーナー固有の費用で実態を誤ることがあります。そこで、継続的に見込める利益へ組み替えた調整後EBITDAを使います。

調整後EBITDAは、売り手の希望を膨らませるための数字ではありません。買収後にも続く費用を残し、根拠を示せる項目だけを調整することが基本です。

3-1. 一時損益や役員関連費用を調整する根拠

一時的な訴訟費用、災害損失、特殊な修繕費は、再発しないと確認できれば加算調整の候補になります。反対に、補助金や資産売却益など一時的な収益は減算します。

役員報酬や親族給与、私的な交際費は、事業への貢献と市場水準を確認します。請求書、契約書、議事録、給与台帳、過去数年の月次試算表を根拠資料として整理します。

3-2. 正常収益力を過大評価しない検証手順

最初に過去3期程度の損益推移を並べ、調整項目が毎期発生していないか確認します。毎年発生する修繕費を「一時費用」と扱えば、正常収益力を過大評価します。

次に、買収後にも必要な費用かを検討します。経営者交代後も必要な人件費や外注費なら、調整で消してはいけません。

3-3. 売り手が示す高評価要因と必要な証拠

継続的な受注、顧客分散、利益率の改善は、倍率を支える材料になります。受注残、顧客別売上、契約更新率、月次推移などで裏付けると説明しやすくなります。

たとえば、単月の大型受注だけでは継続性を示せません。複数年度の受注実績と、納品後の粗利率を合わせて提示することが有効です。

3-4. 買い手が確認する減額要因と隠れコスト

主要顧客への依存、経営者個人への営業依存、人材不足、未計上の修繕費は減額要因です。売掛金の回収遅延や過剰在庫も、実質的なキャッシュ創出力を下げます。

買収後に必要な採用費、システム更新費、設備投資も確認します。見えないコストをEBITDAから除かないと、価格と買収後の資金繰りが連動しません。

4. 設備投資と運転資本を含めた価格検証の手順

価格の妥当性は、EBITDAからフリーキャッシュフローへ接続して検証します。基本的には、EBITDAから税金、運転資本の増加、維持更新投資などを差し引きます。

この検証を行うと、利益は大きいのに現金が残らない会社を見分けられます。買い手は返済原資、売り手は買収後の事業継続性を確認できます。

【文脈】EBITDAから実際のキャッシュ創出力を検証する流れを視覚化する図解 4-1. 設備投資負担が大きい製造業の確認事項

減価償却費は過去の投資を期間配分した費用です。将来必要な設備更新費と一致するとは限らないため、EBITDAに足し戻すだけでは製造業の実力を測れません。

設備投資を維持更新投資と成長投資に分けます。現状維持に不可欠な投資を差し引き、成長投資は将来売上との関係を別に評価します。

4-2. 売上成長に伴う運転資本増加の見落とし

売上が伸びると、売掛金や棚卸資産も増えることがあります。買掛金の増加が小さければ、利益が出ても運転資金として現金が流出します。

過去の売掛金回転期間、在庫回転期間、買掛金回転期間を確認してください。成長率が高い会社ほど、利益とキャッシュフローの差が拡大しやすくなります。

4-3. 税金と設備投資を引いたキャッシュ創出力

簡便的には「EBITDA−税金−運転資本増加額−維持更新投資」で、返済原資に近い金額を確認できます。実際には法人税、投資時期、資産売却なども考慮します。

この金額を借入金返済後の資金繰りと照合します。EBITDA倍率が低くても、維持投資が大きければ買収価格を引き下げる根拠になります。

4-4. 業種規模別の倍率を比較するときの注意

製造業は設備負担、ITは成長性や人材依存、サービス業は顧客継続率、建設業は受注残と案件採算が評価を左右します。同じ倍率を業種横断で使うことはできません。

倍率の目安だけでなく、調整後EBITDA、成長率、顧客集中、必要投資を比較します。類似会社は業種だけでなく、規模とビジネスモデルまでそろえることが重要です。

5. よくある質問(FAQ) 5-1. EBITDAが赤字の場合も倍率は使えますか

EBITDAがマイナスの場合、EVを割ることで倍率の意味が不安定になります。将来の成長を重視するならDCF法、資産価値を重視するなら純資産法を併用します。

5-2. 企業価値と株式価値はなぜ異なりますか

企業価値は事業そのものの価値に近い概念です。そこから有利子負債を差し引き、現預金や非事業用資産を調整したものが株式価値です。

5-3. 類似会社比較法とDCF法はどう使い分けますか

類似会社比較法は市場の倍率を使い、短時間で相場観をつかむ方法です。DCF法は将来のフリーキャッシュフローを現在価値に割り引くため、成長計画の検証に向きます。

実務では両者を照合し、乖離の理由を確認します。倍率法だけで価格を決めると、将来投資や成長の前提を見落とす可能性があります。

5-4. 売買価格の交渉でEBITDAをどう使いますか

まず調整後EBITDAの項目と根拠を共有し、次に適用倍率の比較対象を示します。その後、純有利子負債、運転資本、設備投資計画を分けて価格差を説明します。

「倍率が高い、低い」だけでは交渉になりません。どの前提を採用すれば価格がいくら変わるかを表にすると、論点が明確になります。

6. おすすめ商品: 手取りを重視するならM&A PMI AGENTの特徴と選び方

売却価格が決まっても、仲介手数料、税金、実費、引継ぎ条件を差し引かなければ、最終的な手取り額は分かりません。売り手が手取りを重視するなら、手取りを重視するならM&A PMI AGENTが選択肢になります。

特徴は、初回相談・着手金・中間金が無料で、最低報酬は500万円〜と明示されている点です。売却価格ではなく、手数料や税金を含めた「手取り額の整理」を無料オンライン相談で確認できます。

他社から提案書や見積りを受け取っている場合も、仲介契約前なら手数料、最低報酬、成功報酬の計算方法、テール条項などを比較できます。買い手探索から条件交渉、DD、最終契約、クロージングまで支援する点も特徴です。

売却価格5,000万円の比較例では、他社最低報酬2,000万円に対し、最低報酬500万円〜との差額は最大1,500万円です。具体的な条件は案件ごとに異なるため、契約前に総額を確認してください。

7. まとめ

EBITDAは「営業利益+減価償却費」で概算でき、本業の収益力を比較する起点になります。EVはEBITDAに倍率を掛け、株式価値はそこから純有利子負債などを調整して求めます。

ただし、EBITDAはフリーキャッシュフローではありません。調整後EBITDA、設備投資、運転資本、税金、負債を確認し、類似会社比較法とDCF法を照合して価格を判断してください。

次の行動は、過去の決算書3期分、減価償却費の内訳、借入金、現預金、設備投資計画を一覧にすることです。売り手は手取り額まで、買い手は買収後の返済原資まで試算すると、交渉の土台が整います。

ピラティススタジオ専門のM&A仲介サービス

\ いくらで売却できるのか、まずは無料オンライン相談へ /

詳細ページを確認する

編集者の紹介

日下部 興靖

株式会社M&A PMI AGENT

代表取締役 日下部 興靖

上場企業のグループ会社の取締役を4社経験。M&A・PMI業務・経営再建業務などを10年経験し、多くの企業の業績改善を行ったM&A・PMIの専門家。3か月の経営支援にて期首予算比で売上1.8倍、利益5倍などの実績を持つ。

メニュー