パーソナルトレーニングジム業界のM&A動向を解説!成功事例と失敗事例から学ぶ
パーソナルトレーニングジム業界への参入や経営を考えている方、M&Aに関心のある方は必見です。本記事では、パーソナルトレーニングジム業界のM&A動向を徹底解説します。
市場規模の拡大と競争激化が進む現状、コロナ禍の影響、そしてM&Aの目的や具体的な事例を成功・失敗の両面から分析することで、M&A戦略の成功要因と失敗の落とし穴を明らかにします。
RIZAPグループのような大手企業による買収事例や、カーブスジャパンのフランチャイズ展開など具体的な事例を交え、M&Aを成功に導くためのポイントを理解し、今後の業界動向を予測する一助となるでしょう。
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編集者の紹介
株式会社M&A PMI AGENT
代表取締役 日下部 興靖
上場企業のグループ会社の取締役を4社経験。M&A・PMI業務・経営再建業務などを10年経験し、多くの企業の業績改善を行ったM&A・PMIの専門家。3か月の経営支援にて期首予算比で売上1.8倍、利益5倍などの実績を持つ。
1. パーソナルトレーニングジム業界の現状
パーソナルトレーニングジム業界は、近年、健康志向の高まりやダイエットニーズの増加を背景に市場が拡大してきました。しかし、競争の激化やコロナ禍の影響など、さまざまな課題も抱えています。
1.1 市場規模と成長性フィットネス産業全体は堅調な成長を見せており、パーソナルトレーニングジムはその中でも成長分野とされています。矢野経済研究所の調査によると、2020年度のフィットネスクラブ市場規模は3,275億円と推計されています。
パーソナルトレーニングジムはその一部ですが、近年増加傾向にあり、今後も成長が見込まれています。ただし、正確な市場規模の把握は難しく、統計データも限られているため、今後の動向を注視する必要があります。
市場の拡大に伴い、新規参入が相次ぎ、競争が激化しています。大手フィットネスクラブチェーンや、24時間営業の低価格ジムなどもパーソナルトレーニングサービスを提供し始めており、競争は多様化しています。
差別化戦略として、専門性の高いトレーニングメニューの提供、顧客管理システムの導入、オンラインサービスの展開など、各社が様々な取り組みを行っています。
競争激化の要因として、以下のような点が挙げられます。
- 新規参入の増加
- 大手フィットネスクラブの参入
- オンラインフィットネスサービスの普及
競合タイプ | 特徴 | 対応策 |
---|---|---|
大手フィットネスクラブ | 豊富な設備、多様なプログラム | 専門性を高めたサービス提供、ニッチな顧客層へのアプローチ |
24時間営業ジム | 低価格、利便性 | 顧客との関係構築、コミュニティ形成 |
オンラインフィットネス | 低価格、時間や場所の制約がない | 対面サービスのメリットを強調、ハイブリッド型のサービス提供 |
コロナ禍において、多くのパーソナルトレーニングジムは一時的な休業や営業縮小を余儀なくされました。オンラインサービスへの移行や感染対策の徹底など、対応を迫られています。
一方で、健康意識の高まりから、パーソナルトレーニングへの需要は潜在的に高く、コロナ禍収束後の市場回復が期待されています。ただし、感染症対策や新たな生活様式への対応は、引き続き重要な課題となっています。
コロナ禍における影響と対応は以下の通りです。
- 一時的な休業や営業縮小
- オンラインサービスへの移行
- 感染症対策の徹底(換気、消毒、マスク着用など)
- 非接触型サービスの導入
パーソナルトレーニングジム業界において、M&Aは様々な目的で行われます。規模の拡大やシナジー効果の創出、人材確保、事業承継など、経営戦略上の重要な選択肢となっています。ここでは、主なM&Aの目的について詳しく解説します。
【関連】キックボクシングジムM&Aの最新動向と市場展望を徹底解説!2.1 規模拡大によるメリット
M&Aによって店舗数を増やし、会員数を拡大することで、スケールメリットを活かした収益性の向上が期待できます。例えば、広告宣伝費やシステム投資などの固定費を多くの会員で分担することで、1会員あたりのコストを削減できます。
また、大量仕入れによる仕入れコストの削減も見込めます。さらに、規模が大きくなることで、ブランド力の向上や資金調達力の強化にも繋がります。
M&Aによって、異なる強みを持つ企業同士が統合することで、シナジー効果が期待できます。例えば、トレーニングプログラム開発に強みを持つジムと、顧客管理システムに強みを持つジムが統合することで、より質の高いサービスを提供できるようになります。
また、地域的に補完関係にあるジム同士の統合は、顧客基盤の拡大に繋がります。その他、経営ノウハウの共有や相互送客などもシナジー効果として期待できます。
シナジー効果の種類 | 内容 | 具体例 |
---|---|---|
売上シナジー | 統合による売上増加効果 | 相互送客、クロスセル、新サービス開発 |
コストシナジー | 統合によるコスト削減効果 | 重複部門の統合、共同購買、システム統合 |
財務シナジー | 統合による財務体質の強化 | 資金調達力の向上、信用力の向上 |
2.3 人材確保の手段
優秀なトレーナーや経営人材の確保は、パーソナルトレーニングジムの成長にとって不可欠です。M&Aは、人材獲得の有効な手段となります。
特に、後継者不足に悩む中小ジムにとっては、M&Aによって事業を承継しつつ、優秀な人材を確保できるというメリットがあります。また、M&Aを機に、従業員のモチベーション向上やスキルアップを促進することも期待できます。
2.4 事業承継
後継者不足に悩む経営者にとって、M&Aは円滑な事業承継を実現する手段となります。M&Aによって、長年培ってきた顧客基盤やブランド、ノウハウを継承しつつ、経営の若返りを図ることができます。
また、従業員の雇用を維持することも可能です。M&Aによる事業承継は、経営者の高齢化が進むパーソナルトレーニングジム業界において、ますます重要な選択肢となるでしょう。
パーソナルトレーニングジム業界におけるM&Aは、近年活発化しています。市場の拡大と競争の激化、コロナ禍による影響など、様々な要因が背景にあります。ここでは、M&Aの動向を大手企業による買収、中小ジム同士の統合、異業種からの参入という3つの観点から解説します。
3.1 大手企業による買収大手企業によるパーソナルトレーニングジムの買収は、市場シェアの拡大や新たな顧客層の獲得を目的として行われるケースが多いです。フィットネス業界の大手企業や、ヘルスケア関連企業などが買収主体となる傾向があります。買収される側にとっては、経営基盤の強化やブランド力の向上といったメリットがあります。
買収企業のメリット | 被買収企業のメリット |
---|---|
市場シェアの拡大 | 経営基盤の強化 |
新たな顧客層の獲得 | ブランド力の向上 |
ノウハウの吸収 | 資金調達 |
3.2 中小ジム同士の統合
中小ジム同士の統合は、経営効率の向上や競争力の強化を目的として行われます。単独での経営が困難になったジムや、規模拡大を目指すジムなどが統合の対象となります。
統合により、コスト削減やサービスの拡充などが期待できます。また、地域密着型のジム同士が統合することで、地域におけるシェア拡大を狙うケースも増えています。
統合のメリット |
---|
経営効率の向上 |
競争力の強化 |
コスト削減 |
サービスの拡充 |
地域におけるシェア拡大 |
異業種からの参入も近年増加傾向にあります。例えば、不動産会社や飲食業、IT企業などがパーソナルトレーニングジム業界に参入しています。これらの企業は、自社の既存事業とのシナジー効果を狙ったり、新たな収益源の確保を目的として参入しています。
異業種からの参入は、業界に新たな視点や技術をもたらし、市場の活性化につながることが期待されます。例えば、IT企業が参入することで、オンラインフィットネスサービスとの連携や、トレーニングデータの活用によるパーソナライズ化などが進む可能性があります。
参入企業のメリット | 業界への影響 |
---|---|
既存事業とのシナジー効果 | 新たな視点や技術の導入 |
新たな収益源の確保 | 市場の活性化 |
新規顧客の獲得 | 競争の激化 |
パーソナルトレーニングジム業界におけるM&Aの成功事例を、RIZAPグループとカーブスジャパンを例に挙げ、その戦略と要因を分析します。成功要因を分析することで、M&A戦略を検討する際の有益な示唆が得られます。
4.1 RIZAPグループによる買収事例RIZAPグループは、積極的なM&A戦略によって急成長を遂げた企業です。ボディメイク事業で培ったノウハウを活かし、フィットネス事業以外にも、美容、ヘルスケア、アパレルなど多様な分野に進出しています。以下に、RIZAPグループによる買収事例の一部と成功要因をまとめます。
4.1.1 買収後の経営戦略と成功要因RIZAPグループのM&Aにおける成功要因は、買収後の経営戦略にあります。RIZAPグループは、買収した企業に対して、独自のトレーニングメソッドや経営ノウハウを導入することで、業績の向上を図っています。また、グループ内のシナジー効果を最大限に活用することで、事業の拡大を加速させています。具体的には、以下の点が挙げられます。
- RIZAPメソッドの導入によるサービス品質の向上
- グループ内での顧客基盤の共有による顧客獲得コストの削減
- 経営効率化によるコスト削減
- クロスセルによる売上向上
ただし、RIZAPグループのM&A戦略は、常に成功しているわけではありません。買収後の統合がうまくいかず、業績が悪化するケースも存在します。M&Aの成功には、綿密なデューデリジェンスと、買収後の統合プロセスが不可欠です。
4.2 カーブスジャパンのフランチャイズ展開カーブスジャパンは、女性専用の30分健康体操教室をフランチャイズ展開している企業です。短時間で効果的な運動プログラムと、女性に特化したサービスが支持を集め、全国に多くの店舗を展開しています。フランチャイズ展開はM&Aとは異なりますが、事業拡大戦略の一つとして捉えることができます。
4.2.1 フランチャイズシステムのメリットとデメリットフランチャイズシステムは、本部と加盟店がそれぞれ役割分担することで、効率的な事業展開を可能にします。以下に、フランチャイズシステムのメリットとデメリットをまとめます。
メリット | デメリット |
---|---|
ブランド力・ノウハウの活用 |
ロイヤリティの支払い |
経営支援 |
本部の制約 |
比較的低リスクでの開業 |
加盟店間の競争 |
カーブスジャパンの成功は、独自のフランチャイズシステムにあります。女性に特化したサービスと、短時間で効果的な運動プログラムを提供することで、多くの顧客を獲得することに成功しています。
また、徹底した加盟店サポート体制も、成功要因の一つと言えるでしょう。フランチャイズ展開は、M&Aとは異なるものの、事業拡大戦略として有効な手段となります。M&Aとフランチャイズ展開のどちらが適切かは、企業の状況や戦略によって異なります。
パーソナルトレーニングジム業界のM&Aは、成功すれば大きなメリットを得られますが、失敗すれば経営に深刻なダメージを与える可能性があります。失敗事例を分析することで、M&Aにおけるリスクを理解し、成功への道筋を探る重要な手がかりとなります。
5.1 業態の違いによる統合の難しさ例えば、ボディビルディング向けのハードコアなトレーニングジムと、健康維持を目的とした高齢者向けのジムでは、顧客層、トレーニング内容、料金体系、スタッフの専門性などが大きく異なります。
このような業態の異なるジム同士のM&Aは、統合プロセスにおいて様々な課題が生じやすいです。顧客ターゲットの変更、サービス内容の調整、スタッフの再教育など、多大な時間とコストが必要となり、期待したシナジー効果が得られないばかりか、既存顧客の離反を招く可能性も懸念されます。
M&Aにおいては、経営方針のすり合わせが非常に重要です。買収側と被買収側の経営理念やビジョン、成長戦略などが大きく異なる場合、統合後に組織運営がスムーズに進まない可能性があります。例えば、買収側が短期的な利益拡大を重視する一方で、被買収側が顧客満足度を最優先する方針を掲げている場合、従業員のモチベーション低下や顧客離れに繋がる可能性があります。
また、意思決定プロセスや組織文化の違いも、統合後の組織運営に支障をきたす要因となります。事前の綿密なコミュニケーションと相互理解が不可欠です。
M&Aを行う際には、デューデリジェンス(買収監査)によって、被買収企業の財務状況、法務リスク、事業上の課題などを詳細に調査することが重要です。デューデリジェンスが不十分なままM&Aを実行すると、想定外の負債や訴訟リスクが発覚したり、事業計画に狂いが生じたりする可能性があります。
例えば、被買収企業の顧客データ管理に不備があり、個人情報漏洩のリスクが潜んでいる場合、M&A後に多額の損害賠償請求が発生する可能性も考えられます。
また、設備の老朽化や従業員の不正行為など、デューデリジェンスで見落とされた点が後々大きな問題に発展するケースも少なくありません。適切な専門家を活用し、徹底的なデューデリジェンスを行うことが、M&Aを成功させる上で不可欠です。
失敗要因 | 具体的な内容 | 対策 |
---|---|---|
業態の違い | 顧客層、トレーニング内容、価格帯の乖離 | 統合後の事業計画を明確化し、段階的な統合プロセスを設計 |
経営方針の相違 | 経営理念、ビジョン、成長戦略の不一致 | 買収前後の綿密なコミュニケーション、経営陣の統合 |
デューデリジェンス不足 | 財務状況、法務リスク、事業課題の未把握 | 専門家による徹底的なデューデリジェンスの実施 |
これらの失敗事例を教訓として、M&Aを検討する際は、事前の綿密な計画と準備、そして慎重な意思決定が重要です。潜在的なリスクを洗い出し、適切な対策を講じることで、M&Aの成功確率を高めることができます。
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パーソナルトレーニングジム業界は市場の成長とともに競争が激化しており、コロナ禍を経て、M&Aによる事業拡大や再編が活発化しています。大手企業による買収、中小ジム同士の統合、異業種からの参入など、様々な形態が見られます。
RIZAPグループのような成功事例は、経営戦略とシナジー効果の創出が鍵となっています。一方で、業態や経営方針の違い、デューデリジェンスの不足が失敗につながるケースも存在します。M&Aを成功させるには、綿密な市場調査、適切なパートナー選び、そして入念なデューデリジェンスが不可欠です。
今後の業界再編はさらに加速すると予想され、M&Aは生き残りのための重要な戦略となるでしょう。