事業再生のためのデューデリジェンス:実践チェックリスト

事業再生のためのデューデリジェンス:実践チェックリスト

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公開日:2024年12月31日
最終更新日:2026年8月11日

事業再生DDの目的は、再生可能性を判定し、再生計画の数値根拠を確立することです。まず90日以内の資金、営業キャッシュフロー、顧客・許認可・簿外債務を確認します。

1. 事業再生に向けたDDの目的と初動判定

事業再生のためのデューデリジェンスは、企業の問題を網羅的に調べる作業ではありません。目的は、事業を継続して再生できるかを判定し、金融機関が検証できる再生計画の数値根拠を作ることです。

財務諸表が赤字でも、営業キャッシュフローを改善できる事業は残せます。一方、帳簿上の利益があっても、90日以内に資金が尽きる企業は、調査より先に資金確保が必要です。

初動では、次の5項目を優先します。

  • 90日以内、特に13週間以内の資金ショート

  • 本業から生じる営業キャッシュフロー

  • 主要顧客の離反、契約解除、受注減少

  • 事業継続に不可欠な許認可の有効性

  • 未払費用、保証債務、訴訟などの簿外債務

この5項目は、企業の健康診断でいえば体温、血圧、呼吸、心電図、既往症に当たります。どれか一つでも重大な異常があれば、通常の調査手順をそのまま進めてはいけません。

1-1. 90日以内の資金ショートを先に検証する

最初に、13週間程度の資金繰り表を作成します。日次または週次の入出金、借入返済、税金、社会保険料、給与、仕入代金を実際の支払予定日で並べます。

売上計上日ではなく、入金日で確認することが重要です。調査完了前に現預金が底をつく場合は、金融機関への説明、支払条件の調整、追加資金の確保を先行させます。

1-2. 危機度を資金・収益・継続性で分岐する

危機度は、資金繰りの逼迫度、営業キャッシュフローの赤字幅、主要顧客や許認可への依存度で分けます。90日以内の資金不足なら緊急対応、資金が確保され正常収益力を回復できるなら再生計画策定へ進みます。

主要顧客の離反や許認可喪失で事業継続が難しい場合は、事業譲渡やスポンサー支援も同時に検討します。赤字額だけで判断すると、収益力のある事業まで誤って切り捨てる可能性があります。

1-3. 経営者が揃える初期資料と調査体制を決める

初期資料は、直近3〜5期の決算書、直近12〜24か月の月次試算表、借入一覧、総勘定元帳、資金繰り表、主要契約書、許認可、人員表です。

経営者は事業の前提と意思決定を説明し、経理は数値と証憑を整理します。弁護士、税理士、公認会計士、再生支援者には、法務、税務、財務、計画策定の責任範囲を明確に依頼します。

【文脈】事業再生DDの初動で 2. 財務・事業DDで再生原資を洗い出す

財務デューデリジェンスと事業デューデリジェンスは、別々ではなく一体で確認します。財務数値から資金流出を探し、事業の収益構造から継続可能な再生原資を特定します。

チェックリストは、確認事項だけで終わらせません。必要資料、確認方法、異常時の対応、再生計画への反映、担当専門家まで一つの行にまとめると、調査結果が実行項目へ変わります。

2-1. 決算書から簿外債務と資金流出を確認する

過年度決算書、月次試算表、総勘定元帳、売掛金・買掛金明細、借入契約、固定資産台帳を確認します。銀行残高と帳簿残高を突合し、帳簿にない保証債務や未払費用も洗い出します。

長期滞留債権は回収可能額へ、陳腐化在庫は評価損へ、未計上の修繕費や退職金は将来支出へ置き換えます。発見した金額は、再生計画の初期資金と月次キャッシュフローに反映します。

確認事項

必要資料

確認方法

異常時の対応

再生計画への反映

担当専門家

簿外債務

元帳・契約書・議事録

帳簿と証憑を突合

金額と原因を追加確認

債務・支払額を追加

公認会計士・弁護士

売掛金・在庫

年齢表・棚卸表

回収実績・実地確認

貸倒・評価損を計上

運転資金を再計算

公認会計士

借入・保証

借入一覧・契約書

残高と返済条件を照合

期限の利益喪失を確認

返済猶予・条件変更

弁護士・金融機関担当者

2-2. 営業利益と運転資金の実態を再計算する

営業利益は、売上高から原価と固定費を引いた会計上の数字だけで評価しません。一時的な売上、未収入金、非継続的な費用、役員関連取引を分け、正常収益力を再計算します。

事業別・顧客別の粗利、固定費、売掛金の回収サイト、買掛金の支払サイト、在庫回転を確認します。営業利益が黒字でも、売掛金や在庫が膨らめば営業キャッシュフローは赤字になります。

確認事項

必要資料

確認方法

異常時の対応

再生計画への反映

担当専門家

正常収益力

月次損益・取引明細

一過性項目を除外

計画利益を修正

売上・粗利目標を再設定

公認会計士・再生支援者

運転資金

売掛・買掛・在庫明細

サイトと回転率を分析

回収・在庫対策

必要運転資金を反映

公認会計士・経理

2-3. 顧客依存と撤退候補事業を数値で比較する

主要顧客別の売上、粗利、入金条件、契約期間、解約条件、継続可能性を確認します。上位顧客が離反した場合の売上、粗利、営業キャッシュフローへの影響を月次で試算します。

赤字事業は、売上規模だけで残しません。継続、縮小、撤退の3案を作り、撤退費用、固定費削減、取引先への影響を比較します。赤字事業の整理が主力事業の資金を守る場合もあります。

確認事項

必要資料

確認方法

異常時の対応

再生計画への反映

担当専門家

顧客集中

顧客別売上・契約書

上位顧客比率と解約条件を確認

離反シナリオを試算

売上前提と資金繰りを修正

事業再生支援者・弁護士

低採算事業

部門別損益・固定費明細

限界利益と撤退費用を比較

縮小・撤退案を作成

人員・投資を主力へ移管

経営者・中小企業診断士

【文脈】財務DDと事業DDを一体で行い 3. 法務・税務・人事リスクを再生計画へ反映

法務、税務、人事・労務の問題は、見つけただけでは再生につながりません。事業継続を止めるリスクか、金額を見積もって計画に織り込めるリスクかを分けます。

3-1. 契約・許認可・訴訟が事業継続を阻むか確認する

主要取引契約、借入契約、賃貸借契約、業務委託契約、知的財産、定款、株主関係、訴訟・紛争を確認します。期限の利益喪失条項や、支配権変更で解除されるチェンジオブコントロール条項にも注意が必要です。

許認可は有効期限だけでなく、事業譲渡やスポンサー支援後に承継できるかを確認します。承継できない許認可が中核事業に必要なら、再生計画の前提を変更し、事業譲渡の可否を弁護士と検討します。

確認事項

必要資料

確認方法

異常時の対応

再生計画への反映

担当専門家

契約・COC条項

主要契約書

解除・同意条件を確認

相手方へ事前照会

同意取得を条件化

弁護士

許認可

許可証・更新記録

期限・承継要件を確認

更新・再取得を手配

停止期間と費用を反映

弁護士・行政書士

訴訟リスク

訴状・通知・示談書

損失額と発生可能性を評価

引当・和解を検討

支払可能性を反映

弁護士・税理士

3-2. 税務調査と未払税金の返済負担を把握する

法人税、消費税、源泉所得税、地方税、社会保険料の申告・納付状況を確認します。過去3〜5期の申告書、修正申告、税務調査の指摘、納付記録を会計帳簿と突合します。

繰越欠損金の額と適用期限、加算税・延滞税、滞納処分の可能性も確認します。税金や社会保険料は支払優先順位と資金繰りに直結するため、返済条件を独立した前提として再生計画へ記載します。

3-3. 未払残業代と人材流出が再生を妨げるか見る

雇用契約、就業規則、賃金台帳、勤怠記録、36協定、退職金制度、労使紛争を確認します。タイムカードやPCログと賃金台帳を照合し、未払残業代を対象期間別に推計します。

人件費削減は、単純な人数削減ではありません。顧客、技術、許認可、営業情報を担うキーパーソンと、代替可能な業務を区分し、必要人員、引継ぎ期間、採用費用を計画へ反映します。

【文脈】法務・税務・人事リスクを発見し 4. 重大度判定から金融機関説明と再生実行へ

DDの成果物は、リスク一覧ではなく、金融機関が支援可否を判断できる再生計画です。発見事項ごとに、資金影響、発生可能性、発覚時期、是正期間、事業への波及を記録します。

4-1. リスクを重大度と是正可能性でマトリクス化する

重大度は、資金影響が大きいか、発生可能性が高いか、短期間で発覚するか、是正できるかで判定します。許認可喪失、継続不能な契約、巨額の簿外債務は、再生可否を左右する重大リスクです。

即時対応、計画反映、継続監視の3区分に分けると、担当者と期限が明確になります。金額を算定でき、契約や運用で是正できる問題は、取引中止ではなく条件変更やモニタリングへ移します。

区分

判断例

主な対応

期限

重大

資金ショート・許認可喪失・巨額簿外債務

資金確保、是正、再生可否判断

即時

未払残業代・顧客依存・システム老朽化

金額試算、計画反映、担当設定

計画策定時

規程更新遅れ・資料整理不足

内部管理を改善

月次監視

4-2. 私的整理と事業譲渡で確認範囲を切り替える

私的整理では、債権者間の公平性、返済原資、債務調整の妥当性を重視します。営業キャッシュフローからいくら返済できるか、金融機関ごとの条件変更が事業継続を妨げないかを検証します。

事業譲渡では、承継する資産、契約、許認可、従業員、知的財産を個別に確認します。スポンサー支援では、資金投入額、投入時期、経営権、追加投資、撤退条件を明確にし、口頭合意を残さないことが重要です。

4-3. 金融機関へ再生根拠と実行管理を提示する

説明資料には、現状分析、正常収益力、13週間資金繰り、再生施策、債務調整案、計画の前提、感応度分析を含めます。売上が計画を下回る場合や粗利率が低下する場合の資金残高も示します。

実行後は、現預金残高、資金繰り差異、売上、粗利、営業キャッシュフロー、回収遅延、主要顧客動向、借入残高を月次で管理します。計画との差異が生じたら、原因、対応策、期限を次回報告に記載します。

DDは一度作って保管する報告書ではありません。計画、実績、差異、対策を毎月更新することで、金融機関との対話が「支援要請」から「実行管理」へ変わります。

【文脈】DDで発見したリスクを重大度判定し 5. よくある質問(FAQ) 5-1. 資金が逼迫している企業は何から始めるべきか

最初に13週間の資金繰り表を作り、入金予定と支払予定を実額で並べます。次に給与、税金、社会保険料、仕入、借入返済などの支払優先順位と、借入契約の期限の利益喪失条項を確認します。

資金ショートの可能性が見えた段階で、金融機関へ早期に説明します。調査が終わるまで待つと選択肢が減るため、暫定資料でも資金見通しと必要支援額を共有します。

5-2. 経営者だけでDDチェックリストを使えるか

決算書、試算表、借入一覧、契約書、人員表の収集は社内で進められます。顧客別粗利や資金繰りの再計算も、前提を明示すれば初期分析として有効です。

簿外債務、訴訟リスク、許認可の承継、税務処理、未払残業代は専門家へ依頼します。経営者だけで判断すると、慣行や口頭合意をリスクとして認識できない場合があります。

5-3. DD後はどの指標を毎月確認すべきか

現預金残高、13週間資金繰りの計画差異、売上、粗利、営業キャッシュフロー、回収遅延、在庫、主要顧客の受注、借入残高を確認します。計画値と実績値を同じ表で比較すると、異常を早く発見できます。

指標には担当者、確認日、警戒ライン、対応策を付けます。例えば売上差異が生じた場合は、数量、単価、顧客構成、納期のどこに原因があるかまで分解します。

6. おすすめ商品: 手取りを重視するならM&A PMI AGENTの特徴と選び方

事業譲渡やスポンサー支援を検討する場合、譲渡価格だけでなく、仲介手数料、税金、実費、引継ぎ条件を差し引いた手取り額で比較する必要があります。手取りを重視するならM&A PMI AGENTは、売り手経営者向けに手取り額を整理する無料オンライン相談を提供しています。

特徴は、初回相談、着手金、中間金が無料で、最低報酬は500万円〜という料金体系です。他社の手数料、最低報酬、成功報酬の計算方法、テール条項を、仲介契約前に比較できます。

会社売却だけでなく、事業譲渡のスキーム、税金、DD対応、専門家費用、引継ぎ条件まで含めて比較できる点が、売却価格だけを見る場合との違いです。買い手候補への打診から条件交渉、DD、最終契約、クロージングまで支援します。

企業再生や経営改善を経てM&Aへ進む場合は、事業の正常収益力と譲渡後の手取りを同じ前提で確認できます。具体的な成功報酬や実費は案件内容で異なるため、契約前に総額を確認してください。

7. まとめ

事業再生DDの目的は、再生可能性の判定と、再生計画の数値根拠の確立です。最初に13週間の資金繰り、営業キャッシュフロー、主要顧客、許認可、簿外債務を確認します。

財務、事業、法務、税務、人事を横断し、異常事項を資金額、返済条件、撤退判断、是正期限へ変換します。チェックリストは、確認事項、資料、方法、対応、計画反映、専門家の6列で管理すると実務に使えます。

次の行動は、初期資料を集め、13週間資金繰りを作り、重大リスクを一覧化することです。資金ショート、許認可喪失、巨額の簿外債務が疑われる場合は、専門家と金融機関への相談を先延ばしにしないでください。

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編集者の紹介

日下部 興靖

株式会社M&A PMI AGENT

代表取締役 日下部 興靖

上場企業のグループ会社の取締役を4社経験。M&A・PMI業務・経営再建業務などを10年経験し、多くの企業の業績改善を行ったM&A・PMIの専門家。3か月の経営支援にて期首予算比で売上1.8倍、利益5倍などの実績を持つ。

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