不動産業界のM&Aで再編加速?動向と今後の展望

不動産業界のM&Aで再編加速?動向と今後の展望

不動産業界のM&Aは、市場の再編を加速させています。この現状を理解することは、業界関係者だけでなく、不動産投資家や一般消費者にとっても重要です。この記事では、不動産業界におけるM&Aの現状と、それを促す要因、具体的な事例、メリット・デメリット、そして今後の展望を解説します。

コロナ禍や少子高齢化、デジタル化の遅れ、事業承継問題といった要因がM&Aを後押ししており、大手による中小企業の買収や、地方企業同士の合併、異業種間のM&Aなど、様々な動きが見られます。不動産テック企業の台頭もM&A市場に大きな影響を与えています。

この記事を読むことで、不動産業界のM&Aに関する全体像を把握し、今後の動向を予測する上で役立つ知見を得ることができます。

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編集者の紹介

日下部 興靖

株式会社M&A PMI AGENT
代表取締役 日下部 興靖

上場企業のグループ会社の取締役を4社経験。M&A・PMI業務・経営再建業務などを10年経験し、多くの企業の業績改善を行ったM&A・PMIの専門家。3か月の経営支援にて期首予算比で売上1.8倍、利益5倍などの実績を持つ。




1. 不動産業界におけるM&Aの現状

不動産業界では、近年M&A(合併・買収)が活発化しています。市場の再編や企業の成長戦略において、M&Aは重要な役割を果たしています。ここでは、M&Aの件数推移や規模感といった現状について解説します。

1.1 M&Aの件数推移

不動産業界のM&A件数は、近年増加傾向にあります。特に、中小規模の不動産会社におけるM&Aが目立っています。 不動産流通経営協会の調査などからも、この傾向が読み取れます。ただし、景気動向や法規制の変更などにより、件数は変動する可能性があります。

1.2 M&Aの規模感

M&Aの規模は、数億円規模の比較的小規模な案件から、数十億円、数百億円規模の大型案件まで様々です。近年では、大手不動産会社による中小不動産会社の買収や、地方不動産会社同士の合併など、規模の大小を問わず様々なM&Aが行われています。M&Aの規模は、市場環境や企業の戦略によって変化するため、今後も注視していく必要があります。

2. 不動産業界のM&Aを促す要因
不動産業界の M&A コロナ禍による 市場変化 リモートワークによるオフィス需要減 少子高齢化による 需要変化 空き家問題と高齢者向け住宅需要増 デジタル化の 遅れ PropTech台頭によるデジタル化の波 事業承継問題 後継者不足による事業継続リスク

不動産業界では、様々な要因がM&Aを促しています。ここでは、主な要因を解説します。

2.1 コロナ禍による市場変化

新型コロナウイルス感染症の拡大は、不動産業界にも大きな影響を与えました。リモートワークの普及によるオフィス需要の減少や、観光客減少によるホテル・旅館の経営悪化など、不動産市場は大きく変化しました。これらの変化に対応するため、企業はM&Aを通じて事業ポートフォリオの見直しや経営基盤の強化を図っています。

2.2 少子高齢化による不動産需要の変化

日本の少子高齢化は、不動産需要にも大きな変化をもたらしています。人口減少に伴い、住宅需要は減少傾向にあり、空き家問題も深刻化しています。高齢化の進展は、高齢者向け住宅や介護施設への需要増加につながっています。これらの変化に対応するため、不動産会社はM&Aを通じて事業の再編や新たな市場への参入を図っています。

2.3 デジタル化の遅れ

不動産業界は、他の業界に比べてデジタル化が遅れていると言われています。不動産取引は複雑なプロセスが多く、アナログな業務が依然として残っています。しかし、近年はPropTech(不動産テック)の台頭により、デジタル化の波が押し寄せています。

デジタル化への対応が遅れた企業は、競争力を失う可能性があり、M&Aを通じてデジタル技術やノウハウを獲得しようとする動きが見られます。

例えば、不動産取引プラットフォームの開発・運営を行う企業や、AIを活用した不動産査定サービスを提供する企業などがM&Aの対象となっています。詳しくは経済産業省のPropTechに関するページをご覧ください。

2.4 事業承継問題

中小企業が多い不動産業界では、後継者不足による事業承継問題が深刻化しています。後継者が見つからない場合、M&Aによって事業を承継するケースが増えています。

特に、地方の中小不動産会社では、後継者不足が深刻であり、M&Aが事業継続の重要な手段となっています。M&Aによって、経営者の高齢化による事業継続リスクを回避し、従業員の雇用を守ることができます。

3. 不動産業界のM&Aの主な種類と事例

不動産業界におけるM&Aは、様々な形で展開されています。主な種類として、同業種間のM&Aと異業種間のM&Aが挙げられます。それぞれ具体的な事例を交えて見ていきましょう。

3.1 同業種間のM&A

同業種間のM&Aは、経営規模の拡大や地域展開、事業の多角化などを目的として行われます。近年では、大手不動産会社による中小不動産会社の買収や、地方不動産会社同士の合併などが活発化しています。

3.1.1 大手不動産会社による中小不動産会社の買収

大手不動産会社は、中小不動産会社を買収することで、事業エリアの拡大や専門性の高いノウハウの獲得などを目指します。例えば、三井不動産レジデンシャルによるプロパティエージェントの買収(参考)は、中古マンション流通事業の強化を目的とした事例です。

3.1.2 地方不動産会社同士の合併

地方不動産会社同士の合併は、経営資源の共有や事業規模の拡大によるコスト削減などを目的として行われます。地方経済の縮小や人口減少といった課題に対応するために、合併による経営基盤の強化が求められています。

3.2 異業種間のM&A

異業種間のM&Aは、新たな事業領域への進出やシナジー効果の創出などを目的として行われます。不動産会社と建設会社、不動産会社とIT企業など、様々な組み合わせのM&Aが見られます。

3.2.1 不動産会社と建設会社のM&A

不動産会社と建設会社のM&Aは、開発から販売までの一貫体制の構築や、建設コストの削減などを目的として行われます。例えば、大和ハウス工業によるフジタの買収(参考)は、事業シナジーの強化を目的とした事例です。

3.2.2 不動産会社とIT企業のM&A

不動産会社とIT企業のM&Aは、不動産テック領域への進出や、DX推進による業務効率化などを目的として行われます。近年、PropTech(不動産テック)の進化により、この分野でのM&Aは増加傾向にあります。例えば、LIFULLによる様々なIT企業のM&Aは、不動産取引のデジタル化を推進する事例として挙げられます。

4. M&Aによるメリット・デメリット

M&Aにはメリットだけでなくデメリットも存在します。M&Aを検討する際には、両者を慎重に比較検討する必要があります。

4.1 M&Aのメリット 4.1.1 規模の経済によるコスト削減

M&Aにより事業規模が拡大することで、スケールメリットを活かしたコスト削減が可能になります。

4.1.2 事業領域の拡大

M&Aによって新たな事業領域に進出することで、事業ポートフォリオの多様化を実現し、リスク分散を図ることができます。

4.1.3 人材確保

M&Aにより優秀な人材を獲得することで、組織力の強化や競争力の向上に繋がります。

4.2 M&Aのデメリット 4.2.1 企業文化の衝突

異なる企業文化を持つ組織同士の統合は、従業員の摩擦や組織運営の混乱を招く可能性があります。

4.2.2 従業員のモチベーション低下

M&Aに伴う組織変更や人事異動は、従業員のモチベーション低下に繋がる可能性があります。

4.2.3 買収後の統合プロセスにおける課題

M&A後の統合プロセスは複雑で、想定外の課題が発生する可能性があります。綿密な計画と適切な実行が重要です。

5. 不動産業界のM&A 動向と今後の展望

不動産業界のM&Aは、市場環境の変化や企業の戦略によって、今後も活発に推移すると予想されます。特に、不動産テックの進化やDXの進展は、M&Aの動向に大きな影響を与えるでしょう。

5.1 2024年以降のM&A市場予測

2024年以降も、不動産業界の再編を目的としたM&Aは継続すると考えられます。特に、中小規模の不動産会社は、事業承継問題やデジタル化への対応などを背景に、M&Aを選択肢の一つとして検討するケースが増加するでしょう。

また、大手不動産会社によるM&Aも、更なる事業拡大や新規事業への進出を目的として、引き続き活発化すると予想されます。加えて、海外投資家による日本の不動産市場への投資も活発化しており、外資系企業によるM&Aも増加する可能性があります。

5.2 不動産テック企業の台頭とM&Aへの影響

不動産テック企業の台頭は、不動産業界のM&Aに大きな影響を与えています。不動産テック企業は、独自の技術やビジネスモデルを武器に、既存の不動産会社との連携やM&Aを通じて、市場シェアの拡大を図っています。

また、既存の不動産会社も、デジタル化の遅れを取り戻すため、不動産テック企業の買収を積極的に行っています。今後、不動産テック領域におけるM&Aは更に活発化すると予想されます。

5.3 M&Aにおけるデューデリジェンスの重要性

M&Aを成功させるためには、デューデリジェンスが不可欠です。デューデリジェンスとは、M&Aの対象企業の財務状況、事業内容、法務リスクなどを詳細に調査するプロセスです。

デューデリジェンスを適切に行うことで、M&Aに伴うリスクを最小限に抑え、円滑な統合プロセスを実現することができます。特に、不動産業界のM&Aにおいては、不動産の価値評価や環境リスクなど、専門的な知識が必要となるため、経験豊富な専門家によるデューデリジェンスの実施が重要です。

【関連】M&Aで失敗しないデューデリジェンス!目的・種類・費用は?【前編】

6. M&Aによるメリット・デメリット

M&Aは企業戦略において強力なツールとなり得ますが、メリットだけでなくデメリットも存在します。M&Aを成功させるためには、メリット・デメリットの双方を理解し、適切な戦略を立てることが重要です。

6.1 M&Aのメリット

M&Aを実施することで、企業は様々なメリットを得ることができます。主なメリットは以下の通りです。

6.1.1 規模の経済によるコスト削減

M&Aによって企業規模が拡大することで、原材料の大量購入による割引や、管理部門の統合による効率化など、規模の経済が働き、コスト削減効果が期待できます。例えば、重複する部門やシステムを統合することで、固定費を削減できます。

6.1.2 事業領域の拡大

M&Aは、既存事業の強化だけでなく、新たな事業領域への進出を可能にします。例えば、不動産会社がリフォーム会社を買収することで、ワンストップで住宅サービスを提供できるようになり、顧客基盤の拡大や収益源の多角化につながります。

6.1.3 人材確保

M&Aによって、優秀な人材を獲得できる可能性があります。特に、高度な専門知識やスキルを持つ人材の確保は、企業の競争力強化に不可欠です。また、経営幹部候補の獲得もM&Aの目的の一つとなる場合があります。

6.2 M&Aのデメリット

M&Aにはメリットだけでなく、様々なデメリットも存在します。これらを事前に理解し、対策を講じる必要があります。

6.2.1 企業文化の衝突

異なる企業文化を持つ組織同士が統合する場合、従業員の価値観や行動規範の違いから衝突が生じる可能性があります。例えば、意思決定プロセスやコミュニケーションスタイルの違いが、業務の効率低下や従業員のモチベーション低下につながる可能性があります。統合後の円滑な組織運営のためには、文化の違いを理解し、相互理解を深めるための取り組みが重要です。

6.2.2 従業員のモチベーション低下

M&Aに伴う組織変更や人事異動は、従業員の不安や不満を引き起こし、モチベーションの低下につながる可能性があります。例えば、部門統合による役割変更や、評価制度の変更などが、従業員のモチベーションに影響を与える可能性があります。従業員の不安を解消し、モチベーションを維持するためには、透明性の高い情報開示や、適切なコミュニケーションが不可欠です。

【関連】事業承継での従業員モチベーション管理|重要性と具体的な対策事例

6.2.3 買収後の統合プロセスにおける課題

M&A後の統合プロセスは、非常に複雑で困難な作業となる場合があります。システム統合、人事制度の統一、事業戦略の調整など、様々な課題が発生する可能性があります。

統合プロセスをスムーズに進めるためには、綿密な計画と、関係部署間の緊密な連携が重要です。統合プロセスにおける課題を解決できなければ、M&Aの目的を達成できない可能性があります。例えば、経済産業省が公表しているM&Aガイドラインなどを参考に、統合プロセスを適切に管理することが重要です。

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7. 不動産業界のM&A 動向と今後の展望

不動産業界のM&Aは、市場環境の変化や企業の戦略によって、今後も活発に推移すると予想されます。ここでは、2024年以降のM&A市場予測、不動産テック企業の台頭とM&Aへの影響、そしてM&Aにおけるデューデリジェンスの重要性について解説します。

7.1 2024年以降のM&A市場予測

2024年以降も、不動産業界のM&Aは継続的に増加すると予測されます。特に、中小規模の不動産会社は、事業承継問題やデジタル化への対応、コロナ禍による業績悪化などを背景に、M&Aを検討するケースが増加していくでしょう。

また、大手不動産会社は、市場シェアの拡大や新たな事業領域への進出を目的としたM&Aを積極的に展開していくと考えられます。さらに、海外投資家による日本の不動産市場への投資も活発化しており、外資系企業によるM&Aも増加する可能性があります。

市場の二極化が進む中で、生き残りをかけてM&Aという選択肢はますます重要性を増していくでしょう。特に、都心部と地方都市の格差拡大、富裕層と低所得者層の二極化といった社会構造の変化は、不動産市場にも大きな影響を与えています。これらの変化に対応するために、M&Aによる事業ポートフォリオの最適化や経営資源の再配分が不可欠となるでしょう。

7.2 不動産テック企業の台頭とM&Aへの影響

近年、不動産テック企業の台頭が目覚ましく、不動産業界のM&Aにも大きな影響を与えています。不動産テック企業は、AIやIoT、ビッグデータなどを活用した革新的なサービスを提供することで、不動産業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進しています。

既存の不動産会社は、これらの技術を取り込むため、不動産テック企業とのM&Aを積極的に展開しています。また、不動産テック企業自身も、事業拡大や資金調達を目的として、M&Aを行うケースが増加しています。例えば、オンライン不動産取引プラットフォームやVR内見サービスを提供する企業などが、M&Aの対象となっています。

不動産テック企業のM&Aは、不動産業界全体の構造変化を加速させる可能性があります。従来の不動産取引プロセスがデジタル化されることで、より効率的で透明性の高い取引が実現すると期待されます。また、新たなビジネスモデルの創出や顧客体験の向上にもつながる可能性があります。

7.3 M&Aにおけるデューデリジェンスの重要性

M&Aを成功させるためには、デューデリジェンスが非常に重要です。デューデリジェンスとは、M&Aの対象となる企業の財務状況、法務状況、事業状況などを詳細に調査するプロセスです。

デューデリジェンスを適切に行うことで、M&Aに伴うリスクを正確に把握し、適切な価格での取引を実現することができます。特に、不動産業界のM&Aにおいては、不動産の価値評価や環境リスク、法規制の遵守などが重要な調査項目となります。

また、近年は、サイバーセキュリティリスクやESG(環境・社会・ガバナンス)に関するデューデリジェンスも重要性を増しています。

M&A後の統合プロセスにおいても、デューデリジェンスの結果を踏まえた適切な対応が必要となります。企業文化の違いやシステム統合の課題などを事前に把握し、スムーズな統合を実現することで、M&Aの成功確率を高めることができます。M&Aに関する詳細な情報は、経済産業省のウェブサイトなどを参照してください。

8. まとめ

不動産業界のM&Aは、コロナ禍、少子高齢化、デジタル化の遅れ、事業承継問題といった要因から、今後も活発化すると予想されます。特に、大手不動産会社による中小不動産会社の買収や、地方不動産会社同士の合併が増加する可能性が高いでしょう。

また、不動産テック企業の台頭もM&A市場に大きな影響を与える可能性があります。M&Aは規模の経済によるコスト削減や事業領域拡大といったメリットがある一方、企業文化の衝突や従業員のモチベーション低下といったデメリットも存在します。

そのため、M&Aを成功させるためには、綿密なデューデリジェンスの実施が不可欠です。今後の不動産業界において、M&Aは企業成長のための重要な戦略の一つであり続けると考えられます。

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