事業売却前に準備しておくべきKPIとは? 買い手が注目するポイントと対策
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公開日:2025年3月4日最終更新日:2025年6月11日
事業売却を検討している経営者の方へ。売却を成功させるためには、財務諸表だけでなく、KPIを活用した「事業の質」の見える化が不可欠です。この記事では、買い手が重視するKPIとは何か、事業売却前に準備すべきKPIとその見せ方、KPI設定・運用による企業価値向上のための具体的な方法、成功・失敗事例まで、分かりやすく解説します。
事業売却を有利に進め、納得のいく取引を実現するために、ぜひお役立てください。この記事を読むことで、KPIを用いた事業の可視化を通じて、企業価値を最大化し、最適な売却を実現するための具体的な方法が理解できます。
事業売却は、会社の未来を左右する重要な経営判断です。特に近年、中小企業を取り巻く環境は厳しさを増しており、事業売却を"撤退"ではなく"戦略"として捉える経営者が増えています。この章では、事業売却を検討すべき背景と、売却によって得られるメリットについて解説します。
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編集者の紹介
株式会社M&A PMI AGENT
代表取締役 日下部 興靖
上場企業のグループ会社の取締役を4社経験。M&A・PMI業務・経営再建業務などを10年経験し、多くの企業の業績改善を行ったM&A・PMIの専門家。3か月の経営支援にて期首予算比で売上1.8倍、利益5倍などの実績を持つ。
1.1 中小企業経営者が直面する現実
多くの日本の企業、特に中小企業は、様々な経営課題に直面しています。これらの課題は、事業の継続性や成長を阻害する要因となり、将来への不安を増大させる可能性があります。主要な課題としては、以下の点が挙げられます。
1.1.1 後継者不在・人材難・業界再編の波少子高齢化による後継者不足は、多くの企業にとって喫緊の課題です。また、人材確保の難しさも深刻化しており、優秀な人材の採用・育成は企業の成長に不可欠です。さらに、業界再編の動きも加速しており、競争激化の中で生き残りをかけた戦略が求められています。これらの外部環境の変化は、事業の持続可能性を脅かす大きなリスク要因となります。
1.1.2 今後5年で事業価値をどう守るか事業を取り巻く環境が変化する中で、5年後、10年後も安定した収益を確保し続けるためには、現状維持ではなく、将来を見据えた戦略的な経営判断が必要です。現在の事業価値を維持・向上させるためには、M&Aも視野に入れた戦略を検討する時期に来ていると言えるでしょう。
1.2 事業売却は"撤退"ではなく"戦略"である事業売却は、経営の継続が困難になった場合の最終手段と捉えられがちですが、必ずしもそうではありません。むしろ、企業の成長や発展のための戦略的な選択肢として、積極的に活用するべきです。
1.2.1 売却は逃げではない事業売却は、経営から逃げることではなく、新たな成長への道を切り開くための手段です。売却によって得た資金を新たな事業展開や投資に活用することで、更なる発展を目指すことができます。また、従業員の雇用を維持・拡大できる可能性も高まります。
1.2.2 「誰に」「いつ」売るかが企業の未来を決める事業売却の成功は、売却先と売却時期の選択にかかっています。自社の事業とシナジー効果が見込める企業や、従業員の雇用を維持してくれる企業を選ぶことが重要です。また、事業価値が最大化されるタイミングを見極めることも、売却を成功させるための重要な要素です。
1.3 買い手が求める企業の条件とは?事業売却を成功させるためには、買い手の視点に立って自社の魅力を理解することが重要です。買い手は、単に財務状況だけでなく、様々な側面から企業を評価します。
1.3.1 魅力的な会社に共通する3つの要素買い手が求める魅力的な会社には、一般的に以下の3つの要素が備わっています。
要素 | 内容 |
---|---|
収益性 | 安定した収益基盤と成長性 |
競争優位性 | 他社にはない独自の強み |
経営の透明性 | 健全な財務状況と明確な事業戦略 |
買い手は、感覚的な説明ではなく、具体的な数字に基づいた客観的な評価を重視します。そのため、KPIなどの指標を用いて、事業の現状や将来性を「見える化」することが、買い手の信頼獲得に不可欠です。
【関連】事業売却の方法・手順を徹底解説!スムーズな売却を実現するためのステップ2. KPIとは何か?──中小企業でも活用できる指標の考え方
事業売却を検討する際、KPI(重要業績評価指標)は会社の価値を客観的に示す重要なツールとなります。財務諸表だけでは読み取れない事業の質や成長性を可視化することで、買い手への信頼構築に役立ちます。この章では、KPIの基本的な考え方から、中小企業における現実的なKPI設定、そして経営管理との連携までを解説します。
2.1 KPI(重要業績評価指標)の基本を理解するKPIとは、企業目標の達成度合いを測るための重要な指標です。売上や利益といった財務指標だけでなく、顧客満足度や従業員定着率など、非財務指標も含めて設定することで、多角的な視点から事業の現状を把握できます。
単に「売上を上げる」といった漠然とした目標ではなく、「新規顧客獲得数を前年比20%増やす」といった具体的なKPIを設定することで、目標達成への道筋が明確になります。
売上や利益は重要な指標ですが、それだけでは企業の全体像を把握するには不十分です。例えば、高い売上を維持していても、顧客獲得コストが高ければ、持続的な成長は難しいでしょう。KPIを設定することで、売上や利益といった結果だけでなく、その背景にある要因を分析し、改善策を立てることができます。
2.1.2 定量化で会社の強み・弱みが見えてくるKPIは数値化できる指標であるため、客観的な評価が可能になります。自社の強み・弱みを明確に把握することで、事業売却に向けた対策を効果的に行うことができます。
例えば、顧客単価が高いことが強みであれば、その要因を分析し、さらに強化するための施策を検討できます。逆に、顧客離脱率が高いことが弱みであれば、その原因を特定し、改善策を実行することで、企業価値の向上に繋げることができます。
大企業とは異なり、中小企業ではリソースが限られているため、現実的なKPI設定が重要です。自社の事業規模や業種、ビジネスモデルに合わせて、適切なKPIを選択する必要があります。
2.2.1 自社の業種・ビジネスモデルから逆算するKPIは、業界の特性や自社のビジネスモデルによって大きく異なります。例えば、製造業であれば、不良率や生産効率などが重要なKPIとなるでしょう。一方、小売業であれば、顧客単価や来店頻度などが重要になります。自社の事業内容を分析し、最も重要な指標を選択することが大切です。
2.2.2 現場で使えるKPIとは?(営業・生産・人材)KPIは、現場で活用できるものでなければ意味がありません。各部門の担当者が理解しやすく、日々の業務に落とし込めるKPIを設定する必要があります。例えば、営業部門であれば、新規顧客獲得数や成約率、生産部門であれば、生産効率や不良率、人材部門であれば、従業員定着率や教育研修参加率などが考えられます。
部門 | KPI例 |
---|---|
営業 | 新規顧客獲得数、成約率、顧客単価、LTV |
生産 | 生産効率、不良率、在庫回転率 |
人材 | 従業員定着率、教育研修参加率、社員満足度 |
KPIは、経営管理においても重要な役割を果たします。KPIを適切に設定し、モニタリングすることで、目標達成に向けた進捗状況を把握し、必要に応じて軌道修正を行うことができます。
2.3.1 KPIを「日々の経営」に落とし込むKPIは、経営会議や部門ミーティングなどで定期的に確認し、進捗状況を共有することが重要です。また、KPIの達成状況に応じて、具体的なアクションプランを策定し、実行することで、PDCAサイクルを回すことができます。従業員一人ひとりがKPIを意識して業務に取り組むことで、企業全体の目標達成に貢献することができます。
2.3.2 経営会議でのKPI活用のコツ経営会議では、KPIの進捗状況だけでなく、その背景にある要因分析を行うことが重要です。なぜ目標が達成できなかったのか、あるいは目標を上回ることができたのかを分析することで、今後の改善策を検討することができます。また、KPIの達成状況に応じて、経営戦略の見直しを行うことも必要です。
【関連】M&AのKPI設定で失敗しないための完全ガイド!3. 事業売却に向けたKPIの整備と見せ方
事業売却を検討する際、KPIの整備と効果的な提示は、買い手へのアピール力を高める上で非常に重要です。適切なKPI設定とデータに基づいた説明は、事業の価値を正しく理解してもらい、スムーズな売却プロセスを実現する鍵となります。
3.1 なぜ買い手はKPIを重視するのか?買い手は、財務諸表だけでは見えてこない事業の質や将来性を見極めるためにKPIを重視します。KPIは、事業の現状だけでなく、成長可能性やリスクについても客観的な評価を可能にするからです。
3.1.1 財務諸表では見えない「事業の質」を測る財務諸表は過去の業績を示すものですが、KPIは事業の運営効率や顧客満足度など、財務諸表には表れない「事業の質」を測る指標となります。例えば、顧客維持率や顧客生涯価値(LTV)といったKPIは、将来的な収益性を予測する上で重要な情報を提供します。また、従業員一人当たりの売上高や生産性といったKPIは、事業の効率性や人材の質を評価する指標となります。
3.1.2 持続可能性と収益構造を可視化する力KPIは、事業の持続可能性と収益構造を可視化する力を持っています。例えば、新規顧客獲得コストや顧客転換率といったKPIは、マーケティング戦略の有効性を評価し、将来的な顧客基盤の拡大可能性を判断する材料となります。また、売上原価率や粗利率といったKPIは、収益構造の安定性を評価する上で重要な指標となります。
3.2 事業売却前に見直すべき主要KPI事業売却前に、特に重点的に見直すべきKPIを以下に示します。これらのKPIは、買い手が特に注目するポイントであり、適切なデータを示すことで、事業の魅力を効果的に伝えることができます。
KPIの種類 | 具体的なKPI | 買い手が注目するポイント |
---|---|---|
営業指標 | 顧客生涯価値(LTV)、顧客獲得コスト(CAC)、成約率、解約率 | 顧客基盤の安定性、収益性の持続可能性、営業戦略の有効性 |
生産性・人材 | 売上高/人、従業員定着率、従業員満足度、教育研修費用/人 | 従業員の生産性、人材の質、組織体制の健全性 |
財務指標 | 売上高成長率、営業利益率、自己資本比率、ROA、ROE | 収益性、財務の健全性、成長性 |
LTVは、顧客一人当たりが生涯にわたって企業にもたらす利益の総額を示し、顧客基盤の価値を評価する上で重要な指標です。CACは、新規顧客を獲得するために必要なコストを示し、マーケティング戦略の効率性を評価する指標となります。
成約率は、営業活動の効率性を示す指標であり、高い成約率は営業プロセスの優位性を示唆します。これらの指標は、事業の収益性と成長性を評価する上で重要な情報を提供します。
従業員一人当たりの売上高は、従業員の生産性を示す指標であり、事業の効率性を評価する上で重要な情報となります。従業員定着率は、従業員の定着状況を示す指標であり、高い定着率は良好な労働環境や企業文化を示唆します。これらの指標は、事業の持続可能性や人材の質を評価する上で重要な情報を提供します。
3.3 KPIを買い手にどう提示するか?KPIを買い手に提示する際には、データの正確性と分かりやすさが重要です。信頼できるデータに基づいた客観的な説明は、買い手の信頼獲得に繋がります。
3.3.1 KPIレポートの作り方と資料化のポイントKPIレポートを作成する際には、以下のポイントに留意することが重要です。
- 目的を明確にする:KPIレポートを作成する目的を明確にし、それに沿ったKPIを選定する。
- ターゲットを意識する:買い手のニーズや関心に合わせたKPIを選定し、分かりやすい表現で説明する。
- データの正確性を確保する:信頼できるデータソースを使用し、データの正確性を確保する。
- 視覚的に分かりやすくする:グラフや図表などを活用し、データを視覚的に分かりやすく表現する。
- ストーリーで伝える:KPIデータに基づいて、事業の現状や将来展望をストーリーで伝える。
KPIデータの信頼性を高めるためには、データの収集方法や計算方法を明確にし、第三者によるチェックを受けることが有効です。公認会計士や税理士などの専門家によるチェックは、データの客観性を担保し、買い手の信頼獲得に繋がります。また、データの根拠となる資料を保管しておくことも重要です。
【関連】PMIでKGI・KPI設定する意味とは?PMIで伸びる会社の作り方4. KPIで伝える「見える経営」──買い手への信頼構築術
事業売却において、KPIを活用した「見える経営」は、買い手からの信頼獲得に不可欠な要素です。感覚的な説明ではなく、客観的なデータに基づいた現状分析と将来展望を示すことで、企業価値を正しく評価してもらい、スムーズな売却プロセスを実現できます。
4.1 「数字で語れる会社」が選ばれる理由現代のM&A市場では、「数字で語れる会社」が圧倒的に有利です。曖昧な表現や感覚的な説明ではなく、具体的なKPIデータに基づいた経営状況の提示は、買い手の信頼獲得に直結します。特に、財務諸表だけでは読み取れない事業の質や成長性を可視化することで、企業の真価を理解してもらいやすくなります。
4.1.1 感覚経営から脱却するタイミング事業売却を検討し始めた時こそ、感覚経営から脱却する絶好の機会です。過去の成功体験や経験則に基づいた経営判断ではなく、データに基づいた客観的な分析と意思決定を行う体制を構築することで、企業の持続可能性を高め、買い手にとって魅力的な投資対象となります。
4.1.2 KPIが示す企業の"体質"と"将来性"適切に設定・運用されたKPIは、企業の体質と将来性を如実に表します。売上や利益といった表面的な数字だけでなく、顧客獲得コスト、顧客生涯価値(LTV)、従業員一人当たりの売上高といったKPIは、事業の効率性や成長性を示す重要な指標となり、買い手はこれらのKPIから企業の潜在能力を見極めようとします。
4.2 経営者が自ら説明できるKPIとは?事業売却の交渉においては、経営者自身がKPIを理解し、説明できることが重要です。外部のコンサルタントに頼るだけでなく、経営者自身が自社の事業をKPIを通じて深く理解することで、買い手との信頼関係を構築し、納得感のある交渉を進めることができます。
4.2.1 自社のKPIを3分で語れるか自社の主要KPIを3分程度で簡潔に説明できるか、試してみてください。もし難しい場合は、KPI設定の見直しや、より深い事業理解が必要かもしれません。簡潔で分かりやすい説明は、買い手への効果的なアピールにつながります。
4.2.2 プレゼンで信頼される資料構成と話し方KPIを用いたプレゼンテーションでは、資料構成と話し方が重要です。グラフや図表を効果的に使用し、視覚的に分かりやすい説明を心がけましょう。また、自信を持って堂々と説明することで、買い手への信頼感も高まります。重要なKPIを絞り込み、それらのKPIが示す意味や今後の展望を明確に伝えることが重要です。
4.3 買い手が懸念するポイントとKPIでの対策買い手は、事業売却において様々なリスクを懸念しています。KPIを活用することで、これらの懸念を払拭し、安心して投資判断をしてもらえるよう努めましょう。以下の表に、買い手が懸念するポイントと、KPIを用いた対策例を示します。
買い手の懸念点 | KPIによる対策 | 具体的なKPIの例 |
---|---|---|
顧客依存 | 特定顧客への依存度を数値化し、対策を提示 | 上位顧客売上比率、顧客一人当たり売上高 |
属人化 | 特定人物への依存度を可視化し、業務プロセス改善の取り組みを示す | キーマン売上比率、従業員一人当たり売上高、業務プロセス完了時間 |
業務の属人性 | 標準化・マニュアル化の進捗状況をKPIで示す | マニュアル化率、標準化された業務プロセス数 |
上記以外にも、業界特有の懸念事項が存在する可能性があります。事前に想定されるリスクを洗い出し、KPIを活用して対策を講じることで、買い手の不安を解消し、円滑な事業売却を実現できるでしょう。
【関連】事業再生の重要なKPI(重要業績評価指標)とは?5. 事業売却を成功させるためのKPI運用と経営改善
事業売却を成功させるためには、KPIを適切に運用し、経営改善に繋げていくことが不可欠です。KPIは単に売却のためだけに設定するのではなく、持続可能な成長を実現するためのツールとして活用することで、企業価値の向上に大きく貢献します。
5.1 今から始めるKPI活用による企業価値向上KPIを活用した経営改善は、今日からでも始めることができます。重要なのは、現状を正確に把握し、具体的な目標を設定することです。そして、KPIに基づいた小さな改善を積み重ね、継続的にPDCAサイクルを回していくことで、着実に企業価値を高めていくことができます。
5.1.1 数字をもとにした小さな改善の積み重ねKPIを設定したら、現状の数値を把握し、目標値とのギャップを分析します。そして、そのギャップを埋めるための具体的な施策を立案し、実行します。効果測定はKPIの数値で行い、目標達成に向けてPDCAサイクルを回すことが重要です。小さな改善でも積み重ねることで、大きな成果に繋がります。
5.1.2 定点観測・PDCAで売却価値を上げるKPIは一度設定したら終わりではなく、定期的に見直し、必要に応じて修正していく必要があります。市場環境の変化や事業の成長段階に合わせてKPIを最適化することで、常に効果的な経営改善を実現し、売却価値を高めることができます。PDCAサイクルを回し続けることが重要です。
5.2 実例に学ぶ:KPIを武器に売却成功した中小企業ここでは、KPIを活用して事業売却を成功させた中小企業の事例と、逆にKPI整備不足で失敗した事例を紹介します。成功事例から学び、自社の事業売却戦略に活かしましょう。
5.2.1 KPI整備で買収額が1.5倍になった例地方の中堅製造業A社は、後継者不在のため事業売却を検討していました。当初、財務状況は良好でしたが、属人的な経営のため、買い手企業からは事業の継続性に不安視されていました。
そこでA社は、コンサルタントの指導のもと、主要KPIを整備し、生産性や顧客満足度などの非財務情報を可視化しました。その結果、事業の持続可能性が明確になり、買い手企業の信頼を獲得。当初の想定よりも1.5倍高い買収額での売却に成功しました。
都市部で飲食店を経営するB社は、多店舗展開を目指していましたが、資金調達のため事業売却を検討していました。しかし、KPIの整備が不十分で、売上や利益以外のデータがほとんどありませんでした。
そのため、将来の成長性やリスクを正確に評価することができず、複数の買い手候補から事業の持続可能性に疑問を呈され、最終的に売却交渉は決裂しました。B社は、KPI整備の重要性を痛感し、改めて経営基盤の強化に取り組むことになりました。
KPIは事業売却において重要な役割を果たしますが、その真価は「売却のため」だけではありません。KPIを活用した経営の見える化は、事業承継や中長期的な成長戦略にも不可欠な要素です。常にKPIを意識することで、持続可能な経営基盤を構築し、企業価値を守り続けることができます。
5.3.1 経営の見える化は事業承継・成長戦略にも通じるKPIを設定し、定期的にモニタリングすることで、経営状況を客観的に把握することができます。これは、後継者へのスムーズな事業承継にも役立ちます。また、KPIに基づいた経営判断は、企業の持続的な成長にも不可欠です。
5.3.2 売れる会社は、いつでも売らなくてもいい会社KPIを適切に活用し、経営の見える化を実現している企業は、常に高い市場価値を維持することができます。つまり、売却を検討していなくても、常に「売れる状態」にあるということです。このような企業は、外部環境の変化にも柔軟に対応でき、持続的な成長を実現できる強靭な経営基盤を備えています。
【関連】経営再建のKPI策定のポイント|倒産寸前からV字回復!6. まとめ
事業売却を成功させるためには、買い手が求める「企業価値」を理解し、それを適切に伝えることが重要です。この記事では、KPIを活用した「見える経営」が、事業売却においていかに重要か解説しました。
財務諸表だけでは見えない事業の質や持続可能性を、KPIを通じて可視化することで、買い手の信頼獲得に繋がります。LTV、顧客獲得コスト、従業員一人あたり売上高などの主要KPIを整備し、経営状況を客観的に示すことが、売却価格の向上に繋がります。
KPIは事業売却だけでなく、事業承継や今後の成長戦略にも役立ちます。日々の経営にKPIを取り入れることで、企業価値を高め、将来の選択肢を広げましょう。