EC・D2C事業の事業売却を成功させる方法|M&Aの専門家が教えます!

EC・D2C事業の事業売却を成功させる方法|M&Aの専門家が教えます!

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公開日:2025年2月9日
最終更新日:2025年6月5日

EC・D2C事業の売却を考えていますか?成長市場であるEC・D2C業界において、事業売却は大きなチャンスとなる一方、複雑なプロセスと専門知識が必要です。

この記事では、M&Aの専門家が、EC・D2C事業売却を成功に導くための具体的な方法を解説します。事業価値の最大化、デューデリジェンスへの対応、売却プロセス、注意点、そして成功事例まで、網羅的に解説することで、売却価格の向上やスムーズな売却実現に役立つ情報を提供します。

適切な準備と戦略によって、あなたの事業を最大限に評価してもらい、次のステージへと進むための資金と機会を手に入れましょう。

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編集者の紹介

日下部 興靖

株式会社M&A PMI AGENT
代表取締役 日下部 興靖

上場企業のグループ会社の取締役を4社経験。M&A・PMI業務・経営再建業務などを10年経験し、多くの企業の業績改善を行ったM&A・PMIの専門家。3か月の経営支援にて期首予算比で売上1.8倍、利益5倍などの実績を持つ。




1. EC・D2C事業売却の現状

EC・D2C事業を取り巻く環境は近年大きく変化しており、事業売却という選択肢も現実味を帯びてきています。ここでは、EC・D2C事業売却を取り巻く現状について解説します。

1.1 EC・D2C市場の成長と売却市場の活況

近年のインターネット普及やスマートフォンの普及、そしてコロナ禍による巣ごもり消費の拡大を背景に、EC市場は急成長を遂げています。

特に、D2C(Direct to Consumer)と呼ばれる、メーカーが自社でECサイトを運営し、消費者と直接繋がるビジネスモデルが注目を集めています。この市場の成長に伴い、M&A市場においてもEC・D2C事業への投資が活発化し、事業売却の件数も増加傾向にあります。

市場規模の拡大は、大手企業による新規参入や中小企業の成長を促し、競争も激化しています。この競争環境の中で、資金調達や経営資源の確保、事業拡大のためのM&A、あるいは経営者の高齢化や後継者不足による事業承継としてのM&Aなど、様々な理由で事業売却を選択する企業が増えています。

1.2 事業売却を選択する企業が増加している背景

EC・D2C事業の売却を選択する企業が増加している背景には、市場の成熟化や競争激化といった外部要因だけでなく、企業側の内部要因も影響しています。以下に主な背景をまとめました。

要因 詳細
市場の成熟化と競争激化 市場の成長が鈍化し、競争が激化する中で、更なる成長のための投資負担が大きくなり、売却を選択する企業が増えています。
資金調達 次の事業展開のための資金を確保するために、既存事業を売却するケースが増えています。
経営資源の集中 特定の事業に経営資源を集中させるため、非中核事業を売却するケースが見られます。
事業承継 後継者不足などの理由により、事業を売却することで円滑な事業承継を実現するケースが増えています。
経営者の高齢化 経営者の高齢化に伴い、事業の継続が困難になる前に売却を選択するケースが増えています。
大手企業による買収 大手企業が市場シェア拡大や新たな顧客基盤の獲得を目的として、成長性の高いEC・D2C事業を買収する動きが活発化しています。

これらの要因が複雑に絡み合い、EC・D2C事業の売却市場は活況を呈しています。売却を検討する企業は、市場の動向や自社の状況を正確に把握し、最適な売却戦略を立てることが重要です。

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2. EC・D2C事業を高く売却するために必要な準備
EC・D2C事業売却の準備プロセス 事業価値の最大化 財務 財務状況の把握と改善 ・売上・利益率の向上 ・コスト削減・効率化 顧客 顧客基盤の分析と強化 ・LTV向上施策 ・CRM・ロイヤリティ強化 ブランド ブランド力の向上 ・認知度・ロイヤリティ向上 ・差別化ポイント明確化 デューデリジェンス対応 必要書類の準備 • 定款・登記簿謄本 • 財務諸表(3年分) • 重要契約書一式 • 従業員関連資料 • 知的財産関連書類 想定質問への回答準備 • 財務状況・業績推移の説明 • 事業戦略・将来計画 • 競合分析・差別化要因 • リスク要因と対策 売却価値の最大化 成功のポイント ✓ 早期からの準備開始 ✓ 専門家との連携

EC・D2C事業の売却を成功させ、最大限の価値を引き出すためには、事前の準備が不可欠です。売却活動が本格化する前に、事業の魅力を高め、買い手にとって魅力的な投資対象となるよう準備を整えましょう。準備を怠ると、売却価格が下がるだけでなく、売却自体が難航する可能性があります。

2.1 事業価値を最大化するポイント

事業価値を最大化するためには、財務状況の改善、顧客基盤の強化、ブランド力の向上が重要です。これらの要素は相互に関連しており、バランスよく強化していく必要があります。

2.1.1 財務状況の把握と改善

財務諸表を整備し、売上高、利益率、キャッシュフローなどの現状を正確に把握しましょう。過去の推移だけでなく、将来の予測も重要です。必要に応じて、コスト削減や売上向上策を講じ、収益性を改善することで、事業価値を高めることができます。具体的には、不要な経費の削減、在庫管理の効率化、販売チャネルの最適化などを検討します。

2.1.2 顧客基盤の分析と強化

顧客基盤の規模、属性、購買行動などを分析し、優良顧客の維持・獲得に注力しましょう。LTV(顧客生涯価値)を高める施策は、事業の持続可能性を示す重要な指標となります。顧客ロイヤルティプログラムの導入、CRMシステムの活用による顧客関係管理の強化、パーソナライズされたマーケティング戦略の実施などを検討しましょう。

2.1.3 ブランド力の向上

ブランドイメージ、認知度、顧客ロイヤリティを高めることで、事業の競争力を強化し、プレミアム価格での売却を実現できる可能性が高まります。ブランドストーリーの構築、効果的なPR活動、ソーシャルメディアマーケティングなどを活用し、ブランド価値を高める施策を実施しましょう。競合他社との差別化ポイントを明確にし、独自の強みをアピールすることも重要です。

2.2 デューデリジェンスへの対応

デューデリジェンスとは、買収候補企業が売却対象企業の事業内容、財務状況、法務状況などを詳細に調査するプロセスです。スムーズなデューデリジェンス対応は、売却プロセスを円滑に進める上で非常に重要です。

2.2.1 必要な書類の準備

デューデリジェンスで要求される書類を事前に準備することで、対応をスムーズに進めることができます。主な書類としては、定款、登記簿謄本、財務諸表、契約書、従業員に関する資料などがあります。これらの書類を整理し、すぐに提示できる状態にしておきましょう。

書類の種類 内容
定款 会社の目的、事業内容、組織に関する基本的な規則が記載されています。
登記簿謄本 会社の正式名称、本店所在地、資本金などの情報が記載されています。
財務諸表 会社の財務状況を示す貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書などが含まれます。
契約書 取引先との契約書、従業員との雇用契約書など、重要な契約書を準備します。
従業員に関する資料 従業員数、平均年齢、勤続年数などの情報が記載された資料です。
2.2.2 想定される質問への回答準備

デューデリジェンスでは、買い手企業から様々な質問が寄せられます。想定される質問と回答を事前に準備しておくことで、的確かつ迅速な対応が可能になります。

財務状況、事業戦略、競合他社に関する質問など、多岐にわたる質問への回答を準備しておきましょう。例えば、売上高の推移、利益率の変動要因、今後の事業展開計画、競合他社との差別化戦略などについて、明確に説明できるように準備することが重要です。

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3. EC・D2C事業売却のプロセス

EC・D2C事業の売却プロセスは、一般的に以下のステップで進みます。それぞれのステップで綿密な準備と適切な判断が、売却の成否を大きく左右します。

3.1 M&Aアドバイザーの選定

M&Aアドバイザーは、売却プロセス全体をサポートする重要なパートナーです。事業価値の算定、買い手候補の探索、交渉、契約締結まで、専門的な知識と経験に基づいたアドバイスを提供してくれます。適切なアドバイザーを選定することで、売却プロセスをスムーズに進め、より有利な条件で売却を実現できる可能性が高まります。

複数のアドバイザーに相談し、実績や専門性、相性などを考慮して選定しましょう。例えば、野村證券や大和証券SMBCなど、実績豊富な大手証券会社や、EC・D2C業界に特化したブティック型のM&Aアドバイザーなどが挙げられます。

3.2 候補となる買い手企業の選定

M&Aアドバイザーと共に、自社の事業とシナジー効果が見込める、最適な買い手候補を選定します。財務状況や事業戦略、企業文化など、様々な観点から候補企業を評価し、自社にとって最良のパートナーを選び出すことが重要です。

候補企業には、同業他社や異業種の大企業、投資ファンドなどが考えられます。例えば、楽天やAmazonのようなECプラットフォーム企業、あるいは、事業拡大を目指すD2Cブランドなどが候補となるでしょう。

3.3 基本合意、最終契約

買い手候補との交渉を経て、条件が合意に至れば基本合意書(LOI)を締結します。LOIには、売却価格、契約締結日、主要な取引条件などが記載されます。その後、デューデリジェンスを経て、最終的な売買契約を締結します。契約締結後には、クロージングを行い、事業の譲渡が完了します。以下に、基本合意からクロージングまでの一般的な流れをまとめました。

段階 内容 期間の目安
基本合意(LOI) 売買価格、契約締結日、主要な取引条件などを合意 数週間
デューデリジェンス 買い手による詳細な事業調査 数週間~数ヶ月
最終契約 最終的な売買契約の締結 数週間
クロージング 事業の譲渡完了 数日~数週間

これらのプロセスは、事業規模や複雑さによって期間や内容が変動します。M&Aアドバイザーと密に連携を取りながら、各ステップを着実に進めていくことが重要です。

4. 事業売却における注意点

EC・D2C事業の売却は、経営にとって重要な意思決定です。成功させるためには、売却活動開始前から入念な準備と注意深い対応が必要です。売却プロセス全体を通じて考慮すべきポイントを以下にまとめました。

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4.1 事前の準備

売却活動をスムーズに進めるためには、事前の準備が不可欠です。財務状況の把握、顧客データの整理、契約書の確認など、時間をかけて行うべき作業が多くあります。売却を検討し始めた段階から、専門家であるM&Aアドバイザーに相談することで、必要な準備を効率的に進めることができます。焦って準備不足のまま売却活動を開始すると、売却価格の低下や取引の破談につながる可能性があります。

4.2 独占交渉権の付与

独占交渉権とは、特定の買い手候補とのみ交渉を行う権利のことです。売却側にとっては、交渉を一本化することで効率的に売却プロセスを進めることができるメリットがあります。

一方で、他の買い手候補との交渉機会を失うリスクも存在します。独占交渉期間や条件などを慎重に検討し、M&Aアドバイザーと相談しながら決定することが重要です。独占交渉権を付与したにも関わらず、最終的に契約に至らないケースも想定し、事前に対応策を検討しておくべきです。

4.3 従業員への説明

事業売却は、従業員の雇用にも影響を与える可能性があるため、適切なタイミングで丁寧な説明を行うことが重要です。売却の事実だけでなく、今後の事業展開や雇用に関する見通しについても明確に伝えることで、従業員の不安を軽減し、円滑な事業運営を維持することができます。

情報公開のタイミングや内容については、M&Aアドバイザーと慎重に協議することが重要です。風評被害や従業員の離職を防ぐためにも、適切な情報管理が必要です。

4.4 秘密保持契約の重要性

事業売却のプロセスでは、企業の財務情報や顧客データなど、機密性の高い情報が共有されます。これらの情報を適切に保護するためには、秘密保持契約(NDA)の締結が不可欠です。秘密保持契約の内容には、守秘義務の範囲、違反した場合の罰則などが含まれます。買い手候補となる企業と交渉を開始する前に、秘密保持契約を締結することで、情報漏洩のリスクを最小限に抑えることができます。

注意点 詳細 対策
事前の準備不足 財務状況の不透明さ、デューデリジェンスへの対応不足 M&Aアドバイザーへの早期相談、必要な書類の整理
独占交渉権の付与 他の買い手候補との交渉機会の喪失 独占交渉期間・条件の慎重な検討
従業員への説明不足 従業員の不安、風評被害、離職 適切なタイミングでの情報公開、丁寧な説明
秘密保持契約の不備 情報漏洩リスク 秘密保持契約の締結、情報管理の徹底

これらの注意点に留意し、M&Aアドバイザーと密に連携することで、EC・D2C事業の売却を成功に導くことができます。売却プロセスは複雑で時間のかかる作業ですが、事前の準備と適切な対応によって、事業価値を最大限に高めることが可能です。

5. EC・D2C事業売却の成功事例

EC・D2C事業の売却を検討する企業にとって、成功事例は大きな参考になります。ここでは、異なるタイプのEC・D2C事業の売却事例を2つ紹介します。

5.1 成功事例1:急成長EC事業の高値売却

健康食品を販売するEC事業を展開していたA社は、創業5年で年商10億円を達成する急成長を遂げていました。独自の商品開発力と効果的なマーケティング戦略が強みでしたが、更なる事業拡大には資金と人材が不足していました。そこで、事業売却を検討し、M&Aアドバイザーを通じて大手食品メーカーB社との交渉を開始しました。

A社は、財務状況の透明性と将来の成長性をアピールすることで、B社から高値での買収オファーを獲得することに成功しました。B社はA社の持つ商品開発力と顧客基盤を高く評価し、自社の販売網と組み合わせることで更なるシナジー効果を見込んでいました。A社の創業者は、売却益を元手に新たな事業に挑戦することを決意しました。

項目 内容
売却企業 A社(健康食品EC事業)
買収企業 B社(大手食品メーカー)
売却理由 事業拡大のための資金と人材確保
成功要因 財務状況の透明性、将来の成長性のアピール
5.2 成功事例2:D2Cブランドの戦略的売却

オーガニックコスメをD2Cモデルで販売するC社は、熱狂的なファンを獲得し、SNSを中心に高いブランド力を築いていました。しかし、物流やカスタマーサポートの体制強化が課題となっており、事業成長のボトルネックになっていました。そこで、C社は事業売却を検討し、大手化粧品メーカーD社に事業を売却することを決定しました。

D社は、C社の持つブランド力と顧客基盤を自社の販売網と物流システムに統合することで、更なる事業拡大を目指していました。C社の創業者は、D社傘下でブランドディレクターとして引き続きブランドの成長に携わることになりました。

項目 内容
売却企業 C社(オーガニックコスメD2Cブランド)
買収企業 D社(大手化粧品メーカー)
売却理由 物流・カスタマーサポート体制の強化
成功要因 確立されたブランド力と熱狂的な顧客基盤

これらの事例は、EC・D2C事業の売却が、売却企業と買収企業双方にとってメリットのある戦略的な選択肢となり得ることを示しています。適切な準備と戦略によって、事業の成長を加速させるための資金調達や、新たな事業展開への足掛かりとすることが可能です。

6. まとめ

EC・D2C事業の売却は、市場の拡大と多様化する企業ニーズを背景に、近年増加傾向にあります。事業売却を成功させ、最大限の価値を実現するためには、事前の準備が不可欠です。

財務状況の把握と改善、顧客基盤の分析、ブランド力の向上など、事業価値を高めるための施策を着実に実行することが重要です。また、デューデリジェンスへの対応や、M&Aアドバイザーの選定、買い手企業との交渉など、複雑なプロセスを理解し、適切な戦略を立てる必要があります。

本記事で紹介した成功事例を参考に、自社の状況に合わせた売却戦略を策定し、事業の成長と発展に繋げていきましょう。売却を検討する際は、専門家への相談も有効です。

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