事業承継の2025年問題とは?廃業の危機!その特徴と対策をわかりやすく解説
- この記事では、2025年に日本の中小企業に何が起こるのか、その特徴と原因、そして具体的な対策をわかりやすく解説します。
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- 目次
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1. 事業承継の2025年問題とは?
1.1 2025年問題の背景
1.2 70歳を超える経営者の割合
1.3 後継者不在率の増加
2. 事業承継の2025年問題で廃業が増加する特徴
2.1 後継者不足による廃業ドミノの懸団
2.2 その他のリスク
3. 事業承継の2025年問題への対策
3.1 後継者育成
3.2 M&Aの活用
3.3 事業承継税制の活用
4. まとめ
「事業承継の2025年問題」とは、2025年頃をピークに、日本の中小企業・小規模事業者の経営者の多くが70歳歳(平均引退年齢)を超え、後継者不足によって廃業が急増すると予測されている問題です。
現状のまま放置すると
中小企業・小規模事業者廃業の急増により、2025年までの累計で約650万人の雇用、約22兆円のGDPが失われる可能性があると中小企業庁が警鐘を鳴らしています。
この問題は、単に企業の存続だけでなく、日本の経済や社会全体に大きな影響を与える可能性があることから、近年大きな注目を集めています。
日本は世界でも有数の高齢化社会であり、中小企業・小規模事業者の経営者も例外ではありません。
長年、日本の経済成長を支えてきた中小企業・小規模事業者の多くが、後継者問題という大きな課題に直面しています。
後継者不足によって廃業が相次ぐことは、経済の縮小・雇用機会の喪失・技術やノウハウの断絶など、様々な問題を引き起こす可能性があります。
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1.2 70歳を超える経営者の割合
中小企業庁の調査によると、2025年には中小企業・小規模事業者の経営者の約245万人のうち、約半数の127万人が70歳を超えると予測されています。
70歳を超える経営者のうち約半数の127万(日本企業全体の1/3)が後継者未定の状況です。つまり、多くの企業が後継者問題に直面しており、対策を講じなければ廃業を選択せざるを得ない状況に追い込まれる可能性があります。
項目 | 2015年 | 2020年 | 2025年(予測) |
---|---|---|---|
中小企業・小規模事業者の経営者数 | 264万人 | 253万人 | 245万人 |
うち、70歳以上の経営者数 | 60万人 | 91万人 | 127万人 |
1.3 後継者不在率の増加
後継者不在率は年々増加傾向にあります。東京商工リサーチの調査によると、2022年の後継者不在率は59.9%と過去最高を記録しました。
この背景には、少子高齢化による子供世代の人口減少、若者の起業意識の高まり、長時間労働や経営の難しさから家業を継ぎたくないという若者の増加などが挙げられます。
後継者不在の理由
子供世代の人口減少 | |
若者の起業意識の高まり | |
長時間労働や経営の難しさ | |
家業に対する魅力の低下 |
これらの要因が複合的に作用することで、後継者不在率はさらに上昇する可能性も懸念されています。
2. 事業承継の2025年問題で廃業が増加する特徴
- 事業承継の2025年問題は、単に企業がなくなるだけにとどまらず、日本の経済や社会全体に大きな影響を及ぼす可能性を秘めています。ここでは、廃業増加によって具体的にどのような問題が起こりうるのか、詳しく解説していきます。
2.1 後継者不足による廃業ドミノの懸団
後継者不足は、一つの企業が廃業するだけで終わる問題ではありません。特に中小企業が集中する地域では、その影響は計り知れません。
地域経済への影響
雇用喪失 | 廃業により、従業員は職を失うことになります。特に、高齢者や女性の再就職が難しい地方都市では、深刻な問題となります。 |
---|---|
税収減 | 企業の廃業は、法人税や住民税の減少に直結し、地域の財政を圧迫します。その結果、公共サービスの低下やインフラ整備の遅延など、地域住民の生活にも悪影響が及びます。 |
関連企業への影響 | 中小企業は、互いに取引を行いながら事業を行っています。そのため、ある企業の廃業は、取引先の企業の業績悪化や、連鎖的な廃業を招く可能性があります。これを「廃業ドミノ」と呼びます。 |
技術・ノウハウの断絶
長年培ってきた技術やノウハウを持つ中小企業の廃業は、日本の技術力の低下に繋がりかねません。特に、高度な技術を持つ職人の高齢化が進んでいる現在、後継者不足による廃業はその技術やノウハウが失われることを意味します。
伝統産業への影響
着物や陶磁器など、日本の伝統産業を支えてきたのは、中小企業や職人です。後継者不足による廃業は、これらの伝統産業の衰退に繋がり、日本の文化や魅力を失うことにもなりかねません。
イノベーションの停滞
中小企業は大企業に比べて、新しい技術やアイデアを取り入れやすいという特徴があります。後継者不足による廃業は、このようなイノベーションの芽を摘み取り、日本経済全体の活力を低下させる可能性があります。
2.2 その他のリスク 空き家の増加 廃業した企業の建物や工場が放置され、空き家となるケースが増加しています。これは、景観の悪化や治安の悪化、さらには防災上のリスクにも繋がります。
事業承継問題の深刻化 後継者不足による廃業が増加することで、「事業承継は難しい」というイメージが定着し、ますます後継者探しを困難にする可能性があります。これは、将来的な日本経済の縮小に拍車をかける可能性があります。
このように、事業承継の2025年問題は、私たちが想像する以上に深刻な影響を及ぼす可能性があります。廃業を食い止めるためには政府の支援策だけでなく、M&A業界のサービス内容の改善や、地域社会全体で後継者育成や事業承継を支援していく体制作りが重要です。
3. 事業承継の2025年問題への対策
- 事業承継の2025年問題は、日本経済全体にとって大きな課題です。この問題に対して、国や自治体・金融機関などが様々な対策を講じています。
事業承継を成功させるためには、早め早めの対策と適切な専門家との連携が重要となります。
3.1 後継者育成
社内での後継者育成
事業承継の2025年問題に対処するためには、社内での後継者育成が重要です。まず、早期に後継者候補を選定し、個別の育成計画を策定します。この計画には、現場での業務知識の共有や専門的なスキルの習得、リーダーシップ研修が含まれます。
また、経営陣との定期的な対話や評価を通じて、後継者候補が成長できる環境を整えることが求められます。これにより、スムーズな事業承継と企業の持続的な発展が期待できます。
後継者候補の選定
時間をかけて育成するため、できるだけ早い段階で候補者を選定することが重要です。候補者となる人物の経営能力、人望、熱意などを総合的に判断します。
血縁関係にとらわれず、能力や適性を重視することが大切です。
経営ノウハウの伝承
事業計画の立案・財務管理・マーケティング・顧客対応など、経営に必要な知識やノウハウを、実務を通してOJT形式で伝えていきます。
また、メンター制度を導入し、経験豊富なベテラン社員がマンツーマンで指導するのも効果的です。 また、外部の研修機関を活用し、経営に関する専門的な知識を学ばせることも有効です。
事業承継計画の作成
後継者を決定したら、事業承継計画書を作成します。事業承継計画書には、事業の将来展望・後継者の役割と責任・承継スケジュール・株価評価・資金調達方法などを具体的に記載します。
計画書の作成を通して、後継者は経営者としての自覚を高め、経営を引き継ぐ準備を進めることができます。
社外からの後継者招聘
社内に適切な後継者候補がいない場合、社外から人材を招聘するケースも増えています。M&A仲介会社やヘッドハンティング会社を活用し、経験豊富な人材を探します。
3.2 M&Aの活用
M&Aによる事業承継のメリット
M&Aによる事業承継のメリットは、第一に後継者不在の場合でも事業を継続できる点です。企業の存続が保証され、従業員や取引先との関係も維持できます。第二に、資金力やノウハウを持つ企業に引き継ぐことで、事業の成長や競争力が強化される可能性があります。さらに、売却益を経営者が得ることで、個人資産の形成や次の事業展開に活用できる点も魅力です。
M&Aの手法
- 事業承継の選択肢にM&Aを活用する場合には、以下の3つの手法が考えられます。ただし、事業承継の2025年問題に関わる中小企業の経営者にとっては、未知の世界の手法で具体的な進め方がわからないかもしれません。
株式譲渡 | |
事業譲渡 | |
合併 |
M&Aの手続き
準備段階 | アドバイザリー契約・企業価値評価・候補先探索 |
---|---|
交渉段階 | 基本合意・デューデリジェンス・最終契約交渉 |
実行段階 | 最終契約締結・事業統合 |
M&Aは複雑な手続きが必要となるため、専門家であるM&Aアドバイザーや弁護士などに相談しながら進めることが重要です。
3.3 事業承継税制の活用
事業承継税制とは、事業承継を円滑に進めるために設けられた優遇税制です。後継者が納めるべき相続税や贈与税の負担を軽減することで、円滑な事業承継を促進し、雇用や技術の維持・経済の活性化を図ることを目的としています。
適用要件
事業承継税制の適用を受けるには、一定の要件を満たしている必要があります。主な要件は以下の通りです。
非上場会社の株式などを承継すること | |
承継後も一定期間事業を継続すること | |
雇用を維持すること |
事業承継税制の種類
制度名 | 内容 |
---|---|
贈与税の納税猶予制度 | 一定の要件を満たす場合、後継者への贈与税の納税を猶予する制度 |
相続税の納税猶予制度 | 一定の要件を満たす場合、後継者への相続税の納税を猶予する制度 |
事業承継税制は、要件が複雑で、手続きも煩雑なため、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
4. まとめ
事業承継の2025年問題は、多くの企業にとって喫緊の課題です。後継者不足による廃業は、技術やノウハウの断絶・雇用喪失・地域経済の衰退など、深刻な影響を及ぼす可能性があります。
しかし、後継者育成、M&A、事業承継税制活用など、早めに対策を講じることで、事業の継続は可能です。
本記事が、事業承継について考えるきっかけとなり、企業の未来を明るいものにする一助となれば幸いです。
編集者の紹介
株式会社M&A PMI AGENT
代表取締役 日下部 興靖
上場企業のグループ会社の取締役を4社経験。M&A・PMI業務・経営再建業務などを10年経験し、多くの企業の業績改善を行ったPMIのエキスパート。3か月のPMIにて期首予算比で売上1.8倍、利益5倍などの実績を持つ。