会社売却の譲渡価格を自分で計算する3つの方法とよくあるミス

本ページの更新日について
公開日:2024年11月7日最終更新日:2026年7月10日
会社売却を考えたとき、最初に気になるのは「うちの会社はいくらで売れるのか」という点ではないでしょうか。譲渡価格を自分で計算する方法を知っておけば、専門家に相談する前に大まかな相場観を掴めます。この記事では、具体的な計算式や実践的なチェックポイントを交えながら、自社の価値を簡易評価する方法を解説します。
譲渡価格は、会社の収益性や成長性、資産の内容、市場環境など、複数の要素が複雑に絡み合って決まります。自分で計算する前に、まずは価格がどのように決まるのか、その全体像を理解しておくことが大切です。
専門家に依頼する前に自社の価値を自分で把握しておくと、M&Aプロセスを有利に進められます。相場観がないまま交渉に入ると、買い手の提示額を鵜呑みにしてしまったり、逆に非現実的な高値を主張して話がまとまらなかったりするリスクがあります。事前に大まかな価格帯を知っておくことで、冷静な判断ができるようになるのです。
譲渡価格に影響を与える主な要因は、以下の5つです。
・収益力:過去の利益実績と将来の利益見込み
・成長性:市場の拡大可能性や競争優位性
・資産の質:不動産や在庫の含み益、簿外債務の有無
・業界の市場環境:買い手の需要と売り手の供給バランス
・買い手のシナジー効果:買収後のコスト削減や売上増加の見込み
これらの要素を総合的に評価することで、初めて適正な価格帯が見えてきます。
計算に必要なのは、直近3期分の貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書です。3期分を揃える理由は、一時的な変動に惑わされず、会社の安定した収益力を把握するためです。決算書を読む際は、売上高の推移や営業利益率の変化、借入金の金額に注目しましょう。特に営業利益は、会社の本業の稼ぐ力を示す重要な指標です。
ここからは、実際に数字を当てはめて計算する3つの代表的な手法を紹介します。それぞれの特徴を理解し、自社に合った方法を試してみてください。
純資産法は、貸借対照表の純資産をベースに価格を算出する方法です。簿価純資産法と時価純資産法の2種類があります。
簿価純資産法は、帳簿上の純資産額をそのまま使うため計算が簡単です。しかし、土地や建物に含み益があっても反映されないため、実際の価値より低く見積もられる可能性があります。一方、時価純資産法は、資産と負債を時価に評価し直して計算します。例えば、土地の評価額が取得時から上昇している場合、その差額を純資産に加えます。よくある間違いは、簿価と時価を混同してしまうことです。必ず時価ベースで評価し直すようにしましょう。
収益還元法は、会社が将来生み出す利益を現在価値に割り引いて評価する方法です。簡易的な計算としては、年間純利益に一定の倍率をかける「年倍法」がよく使われます。倍率の目安は業種によって異なり、一般的には3年から5年程度とされています。例えば、年間純利益が1,000万円で倍率を5倍とすると、譲渡価格は5,000万円になります。ただし、将来の利益予測は楽観的になりがちです。過去の実績をベースに、保守的な数字を使うことが重要です。
類似会社比較法は、自社と似た業種・規模の会社の株価指標を参考に評価する方法です。具体的には、EBITDA倍率やPER(株価収益率)を使います。例えば、類似会社の平均EBITDA倍率が8倍で、自社のEBITDAが2,000万円の場合、譲渡価格は1億6,000万円と計算できます。類似会社の選び方のコツは、事業内容や売上規模が近い上場企業を探すことです。データの入手先としては、M&Aデータベースや業界団体の統計情報が役立ちます。
計算が終わったら、その結果をどう解釈するかが次のステップです。3つの手法で出た価格が大きく異なる場合、その理由を分析することで、より正確な評価に近づけます。
各手法で結果が異なるのは当然です。純資産法は最低限の価値を示し、収益還元法は将来の成長性を反映し、類似会社比較法は市場の評価を示します。例えば、成長産業に属する会社なら収益還元法の結果を重視し、資産価値の高い不動産会社なら純資産法を参考にするとよいでしょう。自社の特性に合わせて、どの評価額に重きを置くかを判断してください。
経営者が陥りやすいミスとして、以下の3つが挙げられます。
1. 簿価と時価の混同:土地や建物の評価を簿価のまま使ってしまう。→ 時価に修正する。
2. のれん代の過大評価:自社のブランド価値を過大に見積もる。→ 客観的な指標(類似会社の倍率)を参考にする。
3. 将来予測の楽観的バイアス:売上や利益の成長率を高く見積もりすぎる。→ 過去3年の平均成長率を使う。
これらのミスを避けるだけでも、計算精度は大きく向上します。
売却前に実行可能な施策として、以下の3つが効果的です。
・財務体質の改善:不要な資産を整理し、売掛金を早期に回収する。
・収益構造の明確化:セグメント別の損益を開示できるようにする。
・従業員の引き継ぎ体制の整備:主要な従業員の雇用契約を整理し、引き継ぎがスムーズに行えるようにする。
これらの準備は、買い手にとってのリスクを減らし、結果的に譲渡価格の向上につながります。
自分で計算した価格はあくまで簡易的な目安です。実際の取引価格は、交渉やデューデリジェンスの結果によって変動します。ここでは、自分で計算するだけでは測れない要素と、専門家に相談すべきタイミングを解説します。
自分で計算できない要素として、買い手のシナジー効果や競合入札の有無、売り手の交渉力、経済環境の変化などがあります。例えば、買い手が自社の技術を高く評価していれば、計算上の価格よりも高い金額を提示してくる可能性があります。逆に、業界全体が不況に陥っていれば、価格は下がる傾向にあります。
最近では、AIツールを使って簡易的な企業価値評価を行うサービスも登場しています。AIは大量のデータを高速に処理できる点で有用ですが、データの鮮度や業種特性の反映、非財務情報の扱いには限界があります。AIの結果はあくまで補助的に使い、最終的な判断は人間が行うようにしましょう。
M&Aアドバイザーに初回相談する際は、以下の書類を準備しておくとスムーズです。
1. 直近3期分の決算書(貸借対照表、損益計算書)
2. 最新の試算表
3. 事業計画書(将来の見通し)
4. 固定資産台帳
5. 株主名簿
これらの書類があれば、専門家も迅速に概算評価を行えます。
最後に、読者の方からよく寄せられる質問に答えます。
赤字の会社でも、純資産に価値があれば売却は可能です。例えば、不動産を多く保有している場合や、特許技術・顧客基盤に価値がある場合は、買い手が見つかることがあります。価格の付け方としては、純資産法を主体に評価することが一般的です。
株式譲渡の場合、個人株主の譲渡所得税は約20%(所得税・住民税・復興特別所得税の合計)です。一方、事業譲渡の場合は法人税等が課され、実効税率は30%〜40%程度になります。節税対策としては、役員退職金の活用が有効ですが、詳細は税理士に相談することをおすすめします。
その理由は、デューデリジェンスによるリスク評価や、買い手の戦略的意図、市場の需給バランスなど、自分では見えにくい要素が価格に反映されるためです。自分で計算した価格はあくまで参考値と考え、専門家の意見を聞くことでより現実的な価格帯を把握できます。
会社売却の譲渡価格を自分で計算する方法として、純資産法、収益還元法、類似会社比較法の3つを紹介しました。それぞれの手法には一長一短があり、単一の方法だけに頼るのではなく、複数の手法を組み合わせて評価することが重要です。計算結果はあくまで目安であり、実際の取引価格は交渉やデューデリジェンスを経て決まります。まずはこの記事を参考に自社の価値を大まかに把握し、その後は専門家の力を借りて精度を高めていくことをおすすめします。
手取りを増やす会社売却・M&A仲介サービスは、売却価格だけでなく、仲介手数料や税金を差し引いた「手取り額」を重視する点が特徴です。着手金・中間金無料、最低報酬500万円〜という料金体系で、M&A仲介・ビジネスDD・PMI・企業再生の経験を持つメンバーが支援します。無料オンライン相談では、売却可能性や想定譲渡価格、手取り額の考え方を整理できます。


